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プロローグ

 英雄に成れると、思っていた。

 強く、どんな巨悪にも負けない最強の英雄。

 この力があれば、そんな英雄も夢物語じゃ無いと思っていた。

 無限に等しいだけの魔力と、その魔力に等しいだけの術式適正。

 そんなものを持って産まれた自分なら世界すら救えると思っていた。



 分かっていた。

 都合のいい思い込みだ。

 ただ自分の理想を出来ると思い込み、分不相応な夢を見る子供と同じだった。



 結局自分にそんな力は無くて。

 愛を育んでくれた両親も、一緒に産まれ、一緒に育って来た自分の半身とも言える相手も。

 全部が全部、たった1夜にして奪われた。



 力は確かにあった。

 力は確かに振るえたはずだ。

 ちゃんと使ったはずだ、守れる……はずだった。

 守れなかった。



 どんな英雄をも凌駕する最強の力があっても、それを制御しきる最高の術式適正があったとしても。

 ただ単純に技術が足りなかった。

 使い方が分からなかった。



 自分はただの子供だ。

 何も知らなくて、

 誰かの手を借りないと何も成せず、

 一人ぼっちでぐずぐずと泣いているだけの子供だった。



 だから……だからこそこのままじゃダメだと思った。

 自分にこの力を振るう資格も、技術も無いなら……もう自分は必要無い。

 どんな事でも成せるだけの力があるなら、

 どんな事でも成せるはずの才能があるなら、

 それは……それはきっと、自分にあるべき力じゃ無くて……



「我が全てを以て庶幾う」



 これは自分が力をちゃんと使えるようになるまでの誓約だ。

 自分の全てをこの1つの術式に込めて願う。

 自分の力はいつかの願いを叶える為に。

 自分の才能はあの約束を果す為に。



(まぼろし)(まこと)に、夢を(うつつ)に」



 あと少しだけ、ほんの少しだけ。

 分不相応な術式なのはわかっている。

 こんなものはもはや魔術ですら無いことも分かっている。

 それでも僅かな可能性があるのならば、それを信じて力を振るうだけだ。



「天上の(ことわり)よ、今ここに反転せよ!」



 無駄かもしれない。

 成せないかもしれない。

 そんな事はそもそもとして魔術の領域外なのかもしれない。

 でもきっと、きっとできると信じて。



 ________ただひたすらに(そら)に祈った。

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