1.若人は知らず
俺は大柳シュウ、17歳。
この国では、17歳になると軍から『権能』を与えられる。これは簡単にいえば超能力のようなもので、皆軍に入隊し日々敵と戦っている。
ここでそもそもの疑問に答える必要があるだろう。国と言っても、他の国などなく。敵というのは、神々に派遣された天使のことである。噂では、たまに神々自身が人間を滅ぼそうとやってくることもあるそうだ。
俺たちは唯一人間が住むことを許されているこの国を守るために日々天使たちと戦っている。
_____そんなことを考えながら、俺は指揮官室に入った。
「失礼します」
「17歳の誕生日おめでとう。今日から君もうちの軍人だね」
そんなことを良いながら微笑みかけてくる麗人。この人こそが人類軍の長にして最強の能力者、黒木冥。
前の総統が急死した直後に現れ、すぐに頭角を現してこの地位まで登り詰めた。最初は彼女が前総統を暗殺したのだろうと陰口をたたく連中もいたが、そいつらは天使の間者として粛清されてしまった。俺は彼女の権能を知らないが、救世主としてとても尊敬している。
「さぁ、これが君の権能だよ。この箱を開ければ授かることができる。中身は私も分からないが…きっと君の役に立つだろう」
どうやら俺がぼうっとしている間に出してきたらしい。彼女は権能の入った箱を机の上に置いた。
「すみません、これを受けとる前に少し質問が」
「なんだい?」
「権能について教えてもらえませんか。すごい力だということしか知らなくて」
「よし、良いだろう。権能とは簡単に言ってしまえば『神の祝福』だ」
「神の…?であればこれは敵から授かることになるのですか?」
「昔は人と神は対立しておらず、共に生きてきたんだ。これはその時のものだよ」
知らなかった。神と人が手を取り合う時代があったなんて。でも、それだとおかしくはないだろうか。
「じゃあ、なんでそんな昔の物が今もこうやって新しいものとして受け継がれているんですか?」
昔ならまだしも、敵対するようになった今では神からもらったものなど使う気にはならないはずだ。
「そこは人間さ。欲張りなんだよ、私たちは。神々は気にくわないが、権能は使えるからもらっておく、そんなものだよ。…まぁ、その傲慢で自滅しなければいいが…。そんなことより、もう質問にも答えたし、君の権能を見せてくれないか」
今の話を聞いて少し受けとるのが嫌になったが、憧れの総統の頼みだ。俺は箱の鍵を外し、ふたを開けた。とたんにあたりは光に包まれる。
「ーーーッ!」
光が収まったのを感じて目を開くと、箱の中には紙切れが一つ。
『あなたの権能は境目を作る能力です。あなたに幸あらんことを。』
「境目を作る…?一体なんのことだ?」
俺が首をかしげる中、総統は俯き何かを呟いた。
「これは使えるな…。」
「?どうかされましたか?」
「あぁいや、なんでもない。無事授かって良かったよ。さ、明日は入隊式だ、早く帰って休みなさい」
「…?はい」
どうしたんだろう、総統…
そんなことを考えながら俺は帰路についた。
もうじき戦況を変える大波乱が起きるとも知らずに。
ひとまず序盤開始です。
学生なんで投稿おそくなったりすると思うんですが、広い心で見てくださると嬉しいです。
では、おやすみなさい。