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満月は常闇に出会い

蠍が雄叫びを挙げた。空気が激しく振動して僕の足は止まる。妖獣か……?


確証はないが可能性はある。この廃工場には妖気が渦巻いてたからそれを捕食していたのだろうか? ならば答えは見えた。ここは僕の出番である。


蠍の尾が僕に迫るのを青年がそれを手刀で切り落とした。やっぱりこの人は凄く強い。


「臨!」


札を取りだし宙に放り投げる。


のぞめる


「兵!」


別の札を取りだし、また宙に放り投げる。


ぴょう


「闘!」


同じ動作で投げる。


闘う


「者!」


再三投げる。



「皆!」


蠍の爪が真横を通る。切り落とされた為に標準がズレた。その間に上へ。



「陣!」


苦し紛れの体当たりは火水の魔法により弾かれる。札を再び上に投げる。



「烈!」


蠍が吼える、そうしてまた上へ。


つられて


「前!」


妖術と思しき針の雨が口から放たれる。上へ投げる。


前に


「在!」


火水の魔法の障壁により弾かれる。最後の札を投げる。


在り


「臨める兵、闘う者、皆陣列れて前に在り!」


上空に投げられた札が蠍を囲うように移動する。暴れる蠍であるが抜け出せないでいる。札が神々しく光り始めて白く発光していく。強い妖術だ……一撃で!


「覇ッ!」


発光が強くなりその雷で札が燃え始めると全ては解放される。強力な雷があらゆる方向から落とされる轟音を空間全体に響かせてその反動で周囲の機械を破壊していく。浄火じょうかの雷は蠍を完全なる無へと消去する。


「汝が魂、哀れなり」


雷は静まり、全てを焼き払っていた。先程蠍が居た位置にはくっきりと蠍の痕を残し消し去っていた。すると一際大きな機械の後ろから拍手が響いた。


「流石だよ満月君、そして、君は相変わらずだな……」


そして、闇に隠れた世界で男の笑い声が聞こえた。ゆらりと動く闇より黒い闇。そこで何かが居た事に気がついた……。拍手だけでは人だとは限らないからだ。そもそも何故気配を出さなかったのか? 機械の後ろに隠れて……。


僕は息をする事を忘れていた。距離的に十分あるが殺気が尋常ではない。この目の前の青年よりもヤバいのは理解出来ていた。ケンカでは滅多に負けないこの僕がことごとく実力の差を見せつけられているようなものだ。


「………どういうつもりだい? 僕は忙しいんだ」


ケンカごしに銀髪の青年が言うと黒い闇をもった男が嘲笑うと銀髪の青年が動きだそうとしたが理性で止めたみたいだ。


ふと、後ろを振り返れば火水が顔を真っ白にして震えていた。彼の殺気に充てられた……。ヤバい、少なくとも魔女である彼女は僕よりも強い。だが、彼女がここまで酷いとなると僕はどうなってるんだ?


鏡もないし僕は自分を見る術を持ち合わせていない。ただ自分が動けないのがわかる。震えてるのか?


そう聞かれたら頷く事もできない。それほど固まっている。


「う〜〜ん。満月輝に真実を知ってもらう訳にはいかないんだよ」

「………魔女だろ? 魔女が必要なんじゃないのか?」


考えてる素振りをしながら彼は僕の名前を呼ぶと僕は一層に固まるしかなかった。ヤバいという思考が僕を埋めていった。


青年が間違いを正そうと次は火水の事を上げるが彼は首を横に振る。


「彼女たちのレプリカは完成した。ならば残す課題は“響龍”を守る事が大事になる。そしたら満月は邪魔になる」

「レプリカ…………だと?」


青年はレプリカという言葉に反応する。響龍とか満月とかは無視していた。恐らくしっかりと聞いてもたら少なくとも僕より理解出来たはずだ。


なのに聞こうともせずに過敏に反応してしまった。


生憎、火水は“響龍”に反応し、僕は満月に反応した。三者三様の反応を示す。彼はその光景を見て嘲笑(わら)う。


「技術力では“裏の裏”なんかより高いさ」

「やはり君は殺すべきみたいだな」


彼から凄まじい妖気が流れた。妖気を使うとは陰陽師(どうぎょうしゃ)? だけどこんな力なんて考えられない。常識を逸してる。陰陽師が扱える妖力じゃない……妖怪をどんだけ集めたらこうなる? いや……


「妖魔一体!?」


妖刀などに宿る妖怪付きと一体化してるのか? でも、だとしたらどんな上物を? 気配から言ったら“鬼”なのは間違いない。


鬼でこんなのといったら………、該当するのは少ない。


だが、挙げる自信がない。何故なら全員マスターを確認してるからだ。それにこんな力は……!


やっぱり該当しない


「僕を狙ってどうするんだよ!?」


僕が叫ぶと彼はない表情を崩さず、警戒も怠らない。詠唱に入ろうとするが中断する。詠唱に入れば動けない……。単語詠唱だとしてもヤバいかもしれない。


間に合わない………と思う。


「殺すんだよ君を」

「何故?」


僕がそう問うと彼はしばらく間を開けたもの答えを綴る。いや正確には暗号。それはまるで(うた)みたいに綺麗な暗号.



「光の彼方に闇が産まれました。闇の中央に光が産まれました。神を滅ぼす者は影をつくり、偽りの雨は自身に真の雨を降らせました。閃光は悪戯に舞い、死は冷たい未来を呼ぶ。

神と影。偽と真。表がアナタ裏がアナタ。すべては矛盾から産まれました。白閃の雷神と暗闇の死神は堕天使でありました、大切な者の為に。やどす目は天使だがその心は堕ち貪る

消滅と再生。運命と宿命。黎明の光は登らず。

満月はそれを狼と見る、太陽はそれを隼と見る。満月と太陽が同時に登りし時神は降り立たん。全ては我が運命に…」


さっぱりだ。何を言っているのか?


「なるぼど、まだ“予言譜”に頼る者が居たとはな……残念だが根底は覆した!」


なんでわかるんだよ……。くそ、どうやら意味は火水もわかるみたいだ。何をしたらいいんだ? 何も知らない僕が……?


ブブブ…


? ケータイのバイブ……!


ある、あるじゃないか僕は出来ない。他力本願だが僕に出来ることが……。


ポケットの中に手を突っ込み通話ボタンを押す。そのまま放置する。


「電話だったらありがたかったのにな……ちぇ」


ヤバい芝居がヘタだ。


「まぁ良い……我らが神の復活と!その御使いである魔女!そして満月!全てを寄越してもらおうか!」


ッ!! なんつー力だ! 圧されてる上に風が怯えてる!!


「させるか! 誰にもかかわらずお前らは死んでるのがいいだろぅ!! これ以上の戦いは無意味だ!」

「あの戦いは終わりました、光に消えなさい」


青年の手にはいつの間にか剣が握られ火水は詠唱の体制に入る。


彼の動きは俺には見えなく気がついたら青年の間合いに詰め寄っていた。しかし火水の詠唱の方が早かった単語だけ言い魔法を放つ、放たれたのはガラスのカケラのような光の刃。


光の刃は闇色に溶け込み彼の頬を裂く。あのまま行ったら後頭部を刺せていたが華麗に避けられた。


だが、青年は読んでいた。闇色に染まる中で白銀の刃は踊る。横に薙ぎ腹を裂かんと迫るが彼の体は霞のように闇に溶け込み消えた。


妖気の霞だ……。ならば、奴は……?


妖気を追いながら辺りを見回す。


ガァン!


金属音は上で聞こえた。見上げると(やり)を構える彼に対し鍔迫り合いと言っていいのかわからないがそんな形に上空でなり青年が弾くと彼は華麗に一回転して着地。


そして、鎗を構え貫かんと突く。だがその場所は虚空。だが風の弾丸のような者が迫ってきた感じがする。一定以上の実力者なら出来るだろう。現に彼は強い


「甘い」


その弾は剣に進行をさまたがれ弾ける。その間に火水の魔法は完成していた。天井から火の粉のようなものが舞い落ちてきた。


「ポイニクス!」


火の粉は小さな鳥を産んだ。火の粉はその鳥の周囲に落ちていった。そして鳥は()えた。


ピキィィィイイイ!!!


と、甲高い声を挙げて。燃え盛る周囲の炎が一気に爆発した。しかし、それはただのインパクト。本題のアタックは……その不死鳥の代表格、フェニックス。


しかし、本物ではなく仮初めの喚びでしかない。炎を纏った鳥は彼に体当たりをすると直ぐに消えた。威力は高いだろうが彼は平然とした顔であった。


だが、火水の力はこんなモノではなかった。僕も今の今まで気がつかなかったがいつの間にか囲んでいた蜘蛛のような生物を焼き払いさらには彼の後ろには…。


深紫の狂犬(ケルベロス)が立っていた。3つの頭を持ち幾つもの蛇を纏う深紫色の狂犬は暗闇に隠れていた。第一撃の爪は当たり吹き飛ばされた、そして第二撃を放とうとした瞬間……


ケルベロスはバラバラに裂かれた。


目を見張ると何時の間にか沢山張られたピアノ線。


コイツ……!


「仕方ない……少し本気を出すか」

「さぁ! 来い! 井塔将いとうまさる!」


え……? 井塔将? それって確か……!?


「サポートは任せたよ魔女」

「了承。私も本気を出す」


ちょっと、待て! 僕は大してなんも出来ないんだから超人の戦いには巻き込まないでくれないか!? 僕としてはさっきの蠍が全力だったんだけど!!


「くくく、やろうか!!」


待てというのが聞こえないのか!? 奴は!!



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