【2話】満月は魔女に出逢う
遅くなりました。飛焔の駄目だしなどにより大分変わりました。
今回の話しにはあの人がちょいと参上。
鳥栖深県青雲市。新都市として25年ほど前に作られた海上都市だ。日本から孤立するように海の上にあり、昔は橋が東京と繋がっていたそうなんだが、数年前に大壊され今では、海中トンネルで繋がっている。
鳥栖深は単純な市の分け方で5つに分けられてる。中央に位置する総部葎市。東には青雲市。北は、玄島市。西は白狛市。南には朱鳥市。と、なっている。
俺、満月輝は青雲市にある生徒数僅か200人の中学に通う中学生だ。生徒数が少ないのには理由がある。
一つは、総部律市にある聖涼中等学校である。制服やらカリキュラム等が人気を博し今では全国に名を連ねる中学になってる。しかも高校と大学と一緒な為に総数ではウチの6倍近くの生徒が居る。昔は高校と大学だったんだが、なんらかの事情で中学校と合併したらしい。
2つは、青雲は単に馬鹿なのだ、5つの市でも学力は滅法低くて、就職に集中して学問が著しいほどなってないのだ。当然、馬鹿校に行くくらいなら隣街の聖涼等を目指すものが多い。
ま、理由で多いのはこの2つだ。
青雲市は昔は技術が盛ってたそうだ、今では禁忌にされてる【神遺】だ。『神徒計画』という物に使われた技術である。
ま、その名残なのか……。
『火炎弾』『水月』
火炎の弾は水の三日月により消される。しかし、異変が起きるのは次だ。次の瞬間に水は貫かれ弾が男の頬を掠める。
理屈は簡単だ、炎は消火出来ても、弾の勢いは防げない。
弾……と、言ってもパチンコ玉なんだがな。
そう、神徒計画の名残……つまり、能力者が校内中に居るという事だ。このぐらいの喧嘩はしょっちゅうだ。
「お〜い、満月は居るかぁ?」
そう言い、入ってきたのはボサボサ頭で四角いメガネを掛けた白衣の暴君……じゃない、我が3年C組の担任である、寿司先生だ。
「ん? すし?」
「雷獣【猪】」
タバコを、くわえながら呟くと、すし……じゃない、寿司先生の前に雷を纏めたような感じの猪が立つ。
流石の俺も危険を察知する。これは危険だ。
先生の能力は雷獣造り。上級能力者であらせる。
「結界符」
賺さず結界を張るが意図もたやすく破れ。只今、感電中……。
くっ……! 青雲最強の名は伊達じゃないか……。
「満月よぉ、たかが札の結界で俺の雷獣が防げるわきゃねぇだろ」
「いでぇ…!」
あ〜。お花畑が見えてきたよ。
「それよか、満月よぉ? どーいうこった?」
「あれ? ひいじいちゃんだ? どうして来るなって言うの? 昔みたいにいい子いい子してよ?」
「……雷獣【燕】」
「うぎゃぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!!!!」
「………」
「………………………………………………………………………………」
「やりすぎたか」
In【teacher'sroom】
………? コーヒーの香り? いい香りだ、豆から作ったんだ、インスタントじゃ、この香りは出ない。豆を粗挽きにしてからやったんだ。
飲めば豆の種類を当てる自信がある。
「お、起きたか? 満月」
「寿先生……?」
あれ? なんで俺はソファーで横になってたんだ? 頭痛が酷い……アスファルトに思いっきりぶつけたみたいだ。ズキズキする。
一体何が……? 思い出せない……なんか、ビリビリが……?
ビリビリ? なんだよ一体?
「屋上でイキナリ倒れてたから心配したんだぞ?」
「屋上で?」
「どこかの阿呆の喧嘩に巻き込まれたんだな」
「…………? よく、わかりません」
なんか悪の根元みたいな顔が出て来たんだが生徒にこんな奴、居たか?
「お目覚めの所に悪いんだが……。今夜に君の父……頭領に謁見したい。急用だ」
今夜……? 今夜はルナが来る。
…………………………………………………………
この人に聞かれたらいびられる。絶対に。
しかし、先生が父さんに急用? なにかの不祥事か? ルナには悪いが今夜は父さんが忙しくなりそうだ。
事情の説明は無理かな?
「響龍と言えば聞き入ってくれる筈だ」
「シャンロン?」
「お前は知らなくて良いことだ」
………仕事の事だよな。なら、父さんの仕事は僕には関係ないか。
「ま、本題に入るぞ」
「はぁ!?」
ずっこけた。
「どうした? 椅子から落ちて?」
「ほ、本題って……?」
シャンロンとやらが本題じゃねぇのかよ。あ、あの先公笑ってやがる、端っからその気なんじゃねぇのかよ!!
「あぁ、実はな……」
「寿先生、浅深火水入ります」
入って来たのはウチの制服を着込んだ小学生くらいの幼女だ。ネクタイの色が赤という事は同じ3年生という事か? それよりも……。
な、なんだ? 名前から感じる違和感は?
可笑しい。おかしすぎる? なんか相反してるじゃないか?
それよりなんだ? このなんとも言えない気配は? 対極だ……対極が合わさっている。陰と陽に人間の能力はわかれてるという。
生まれながらにして人間には対極というシステムがあるらしい。それは、己の力の使い方。
例えば、サッカーが得意な人。それは少なからず注目を浴びて目立つ存在になる。それに反して、得点に繋がるサポートが上手い者。それは目立つ者を支えるだけの存在でしかない。
陽の当たる存在と、それを支える陰の存在。
例え、目立っているとしても得点で目立つのは入れた者だ。
だが彼女は……どちらでもない。さながら迷子の子猫でもない。
まるで……カレーのルーとハヤシのルーの間みたいな……なんとも言えない。
「不味そうだな」
「ブツブツ言って……気持ち悪い」
「声に出てたのか!?」
頷かれても困る。
「ところで、お前に頼みたい事つーたら」
後ろ髪を掻きながら俺の方を真剣な目つきで見てアイコンタクトで伝える。
…………………………………………………。
「わかるかぁ!!」
「駄目駄目だな」
「そうですね」
なんで駄目だしされんだよ? おかしいのはアイツ等じゃないかよ、アンタとは絶対にアイコンタクトは成立しないからな。
「狼使い満月輝よ、我は汝に依頼す。今日の8時までに、魔女、浅深火水を総武葎市にある弾馬廃工場へと付き合ってくれたし」
……依頼? つーか、世界に2人しか居ない魔女かよ……。なんつー事だ……。こんな幼女が?
<魔女>5年前に起きた創世戦で活躍した2人の強力な力を持った闇と光が交わりその力を分けてこの地に落としたとされてる存在。魔女の成長は早く2歳で既に大人並の知能があり、小学校低学年くらいの大きさになる。5歳になればだいたい、今みたいな小学校の中学年くらいの大きさになる。もう1人の魔女が創世戦の後に捉えられ研究された結果。成長は高校生辺りに急に止まり200年は生きるとされている。
飛び級……確か、鳥栖深は日本で例外な飛び級の制度が導入されてる。
普通ならば小学校に通っているのに、2歳の頃から中学校に居るというのか……。なんとも言えないな。
「全く、寿先生の依頼なら受けますよ」
「…………」
「頼んだぞ。彼女を連れ言ったら後は彼女がなんとかする」
……魔女が廃工場に何を? 弾馬っつたら……何かしらいろいろ造ってた工場だろ? 確か、如月なんとかって奴に潰された……。
嫌な予感がする。
怨念や怨霊の匂いがプンプンするぜ。
月の光が照らす闇の中で僕は何を捜してるのたろうか?
もう、昔には戻れない。大切な人は全部失ってしまったのだから……。みんな……全部。
闇に染まる世界に消えてしまった。
……一番、深刻なのは彼だった、大切な物を失い、大切な者まで何人も失って行った。
今の平和には数々の屍がある。
だから、今日も僕は何かが起きようとする世界の中で忘れない為に……此処に来る。
あの優しき過去を振り返るには此処が一番良い……彼と僕の出会いの地。
……僕はいったい何が出来るのだろうか?
今日、彼女に会えば解る。砕ける前の世界が。
僕は……何をしたら良いのだろうか?
教えてくれないか? もう1人の魔女。
次回<満月と魔女の標>乞うご期待