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ほんとにロリコンではない。ただ護衛がしたいだけ

 「…というわけで今週のバイトは休みます」

「おう、そうか分かった」


今日の朝に黒は俺に休みの連絡を電話で伝えてきた。

急なご指名の依頼が入ったようだ。

まぁ、急な用事なら仕方がないのだろう。

一応、店長にも伝えておこうと、俺が彼女との電話を切ろうとした瞬間…。


「えっ? 気にならないの? 依頼内容。

私に直接来た依頼よ。お偉いさんの護衛なんだって!

すごいでしょ。私、魔王軍の幹部の一人を倒したから特別に……って来た依頼よ。どうよ」


黒は誉めて欲しいオーラを出している。


「そうかー良かったなー」


なので、棒読みで祝ってやった。




 そりゃー、こいつが本当に自分の力で討伐していたら誉めてやったのだが、こいつは手柄の横取りで討伐した事になっているのだ。

乗り気じゃないのも当然な事である。


「棒読みじゃないの! いいわよ。

そうやって言って高額の報酬を貰っても分けてあげないからね」


「じゃあ俺も付喪連盟に真実を訴えようかな~。討伐したのは俺ですって。

そしたらお前に来てた討伐報酬も今回の依頼もすべて俺が引き継げるからな」


「まってよ…嘘よね。そんなことするような明山じゃないよね? 何か言ってよ黙りこんでないで!分かったわよ。連れていくから…。

護衛の依頼に連れていってあげるからー。

そんなことはしないよね? 真実を伝えたりしないわよね?」


この脅しはしばらく使えそうだな。

俺は黒の焦っている顔を見ながらそう思った。

これで報酬は山分け、すべては金のためである。

なんて事を黙って考えていると……。


「ねぇ~。なんで黙ってるの?

ちょっと待ってて今そっちに向かうから」


「…………」


「………ねぇ、なんか大勢の人の話し声と呆れ声が聞こえるんですけど?」


そりゃそうだ。

俺が今いるのは付喪カフェ。

今までの会話はすべてバイト仲間に聞かれている。

妙義も水曜日のバイトちゃんも店長も鈴木さんも……。

しかし、彼女の頭の中では別の事を考えてしまったようだ。


「ねぇ~みんななんで?

あっ、もしかして妬んでる?」


妬んでいるのではない。

真実を知って呆れているのだ。





 そして、黒が付喪カフェに着いた時。

俺から話を聞いた妙義が俺たちに不満そうな表情で話しかけてきた。


「…そんな性格の悪いお前らが護衛の依頼を受けれるのか?」


「「……………」」


返す言葉がない。

そういえば、最近、この店でよく見る妙義だが、彼女は暇なのだろうか。

そんな妙義からの言葉に黒は汗をかきながら慌てて、弁解してもらおうとしている。


「性格が悪いのは明山さんだけよ。私は悪くないわ」


黒だけには言われたくないと思う。

そんな黒に更に呆れながらも、妙義は頭を抱える。


「それに店はどうするんだ?

金曜日担当のバイトリーダーがいなくなったらどうするんだ?」


俺達がすっかり忘れていた問題をその一言で思い出してしまった。

俺たちはお互いの顔を見て、静かに頷くと、


「それは…代役として。その…妙義に…なんて考えてました」


二人の回答に呆れた妙義は不機嫌そうにムッとした表情になると、


「私をそんな何でも許可する甘い女だと思っていたのか!!

残念だが私にもその日には予定があるんだ。諦めてくれ」


俺は冷たい一言を発せられてしまった。

まぁ、後から考えたら当たり前の事なのだが。




 「お偉いさん…。護衛…。仕事…。金…」


その後、俺はすっかり希望を失ってしまっていた。

しかし、そんな無様な姿の俺に一筋の希望が……。


「行ってきていいよ。最近は客足も乏しいからね。

つい先日、鈴木君とヨーマ君とマオ君が今週の金曜に働いてくれると言ってくれていたんだ。

君たちには王族の護衛という任務があるんだろう?

なら、そっちを優先した方がいい」


店長…あなたは救世主でしょうか。


「店長、ありがたき幸せです。」


俺は席から立ち上がり、店長に向かって深く頭を下げた。




 「ねぇ…もしかして妙義。さっき店長が言ってた王族の護衛って……。あなたもなの?」


「それは…その…」


黒にジッと睨まれ、妙義は冷や汗をかいている。

すると、黒は妙義の服を掴むと泣きながら、


「なんで魔王軍の幹部を討伐した私以外にも何もしていないあなたが選ばれるのよ~」


そう言われている妙義は完璧に無罪なのだが。


「まさか、黒への依頼が私と同じだったなんて」


妙義…お前は何も悪くない。

落ち込んだ表情をするべきではないのだ。

不機嫌にムスッとした表情で机に伏せている黒はそっとしておこう。




 俺達は彼女とは違う位置の席に座り、妙義は頭を抱えて机に伏せている。


「なぁ…その…すまんな」


「いや、気にしちゃ駄目だ。それよりも聞きたいことがあるんだけど……。王族ってどんな人たちなんだ?」


そのような疑問を聞いてみたのだが、


「「……!?」」


その瞬間、妙義と黒は驚いて席から立ち上がった。

おっと、二人とも表情が固まっているんですが?

そして黒、お前は不機嫌でも話を聞いてたのかよ。


「明山。あなたは来ちゃだめよ。絶対何かやらかすわ。もしかしたら死刑……。最悪、末代まで犯罪者に……」


「そうだな黒の言う通りだ。お前は来ちゃ駄目だ。下手したら馴れ馴れしく王族の方に話しかけて無礼をかけるかもしれない」


二人は必死に俺が護衛に行くのを拒否してくる。

さっきまで黒と一方的に争っていたのが嘘のようだ。


「しょうがないだろ。俺は記憶喪失なんだから。(設定)」


そう言うと、その事を思い出した妙義は反省した様子になった。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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