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人質救助最優先

 「お嬢さんだったのか。人質を、黒や生徒会長を拐っていった。魔王軍幹部は」


あの時コーヒーをくれたお姉さん。

俺が見とれてたお姉さん。

初めて会った時に俺が幽霊と間違えたお姉さんである。

そのお姉さんが敵、しかも魔王軍幹部である。

正直、知り合いとは戦いづらい…。


「えっと……。ひっ久しぶりね。何か、ごめんね。

でも、あなたが殺されてくれれば奥の部屋にいる生徒会長は解放してあげるわ」


「黒は?」


俺はお姉さんの交渉に口を出した。

すると、お姉さんは気まずそうに答える。


「あの少女は帰さない。

あいつは今後、私たちの恐ろしい敵になるほど恐ろしい力を持っている。でもいいでしょ? あなたも一人で逝くのは嫌だろうし」


こちらをチラチラと見ながら答えた。

おそらく、お姉さんも戦いづらい気持ちなのだろう。


「そうか。なら戦うしかないな。明山、人質は頼んだぞ」


気まずい雰囲気に包まれた二人。

そんな二人の暗い雰囲気を変えるように、山上は俺に命令をしてきた。

残念だが、彼女は敵なのだ。

これも運命のイタズラなのだ。


「おのれ……運命め。分かった山上。あと、お嬢さん。俺は今からあんたの敵になる。

コーヒーをくれた優しく美しいお姉さんではなく。ただの敵になる」


覚悟を決めて俺はお嬢さんと戦うことにした。

正確に言うと、戦うのではなく敵対するということだ。

できれば、殺すことなく戦いを終わらせたいと考えているのだ。

俺は人質を開放するために、お嬢さんが教えてくれた奥の部屋に向かって走る。


「あっ…待って」


止めようとするお嬢さんだったが、山上に行く手を止められてしまう。




 「まぁいいか。逃がすつもりはないし……。まずは山上君? あなたからお姉ちゃんの餌食になってもらうよ。我が名は『四阿』。魔王軍幹部の八虐の謀大逆よ」


四阿は自己紹介を始めたのだが、


「それは前にも聞いた」


あっさりと止められてしまった。




 「じゃあ、さっさと片付けを始めて、ゆっくりと今日の疲れを取らないとね」


そう言うと四阿は地面に掌を添える。

すると、地面から沢山の付喪神達が出てきた。




 そして、数分後。


「えっ? ちょっと待って。何でなの? 何でそんなに強いの? 付喪連盟の付喪人は王レベルでも雑魚だって聞いたのに……。やっぱりあの悪魔紳士嘘情報を教えてくれたわね。はぁ~」


四阿の目の前で部下たちは山上の紐によって次々と絞め殺されていく。


「──やっぱり、変身させておいた方がいいと思うぞ。お前の付喪神達。弱いし」


はっきりとした事を言われて少し悔しがる四阿。


「そんなこと言われたらお姉ちゃん悲しいな~。分かったわ。変身させれば良いのね。良いのね? いいのよね? ホントに良いのかしら?」


少し不安になりながらも、ニヤケながら山上を見つめる四阿。

その光景に山上は少し戸惑いを隠せていなかった。



 その頃、俺は本当にあった奥の部屋にたどり着いていた。

ここが人質が閉じ込められている部屋。

どうやらドアには鍵はかかっているようだ。

俺はドアを叩き、中に誰かいるか尋ねてみる。


「誰かいるか?」


「はーい!!」


すると、小さな声で二人分の返答が返ってくる。

つまりこの中に人質はいるのだ。

俺は眼鏡をかけて十円を握ると、


「『十円パンチ』」


ドアに向かって拳を喰らわせた。

すると、ドアは壊れて中に黒と生徒会長らしき人物を発見したのだ。


「明ぃぃぃ山ぁぁぁさぁぁぁん!!!!!!!!

うわぁぁぁぁ~~~~ん。あ゛り゛か゛と゛う゛ーーーーー」


黒が珍しく俺に泣きながら抱きつく。


「おい、どうしたんだ? 怖かったのか」


俺は黒を撫でながら何があったか聞くことにした。

すると、黒は涙を拭いながら、


「実は……この大台ケ原とかいう生徒会長が、カッコいいところを私に見せようとして……。

脱走を試みたんだけど……。

その結果が哀れなものばかりで同情してたのよ」


そう言いながら黒が指を指した方向を見ると、そこにはタンコブだらけで気絶している男がいた。


「──うん、とにかくここを出るぞ」


可哀想だがこの男については触れないことにして、俺は一刻も早くこの場を後にしようと考えたのだ。




 俺が男を背負って部屋の外から出ると、目の前にボロボロに変わり果てた山上の姿がそこにはあった。


「逃げろ……明山……」


ボロボロに変わり果てた山上が苦しそうに俺に話しかける。

俺は四阿を睨み付けようとして気づいた。

四阿の他に男がいたのだ。

その男は……紐を操っていた。

そう、山上の偽者である。


「なるほど…自分には自分を…ってか。面白い。あの時の仕返しをさせてもらうぜ。偽山上」


そう言いながら俺はまた、財布から五十円を取り出し、


「『五十円波動光線』」


いきなりの大技を繰り出そうとしたのだが、


「……何でだ。何で技が出ないんだ?」


いつものように技を出すことができなくなっていた。

何度試しても、五十円を変えても技が発動しない。

そう、俺にとって最大のピンチが訪れたのであった。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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