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こちら理市廃工場前

 私は幼い頃から父からの愛を知らない。

私は誕生日を祝われたことがない。

私は外の世界を知らない。

私は誕生日会を知らない。

私は恋話を知らない。

私は団結力を知らない。

私は達成感を知らない。

私は喜びを知らない。

私は競争を知らない。

私はなぜ大人が子供よりも純粋さを失っているのかを知らない。


でも、大丈夫。

今の私には沢山の付喪神の部下達がいるから。




 私はお父様にとってただの物。

お父様の知り合いにとってお父様の娘。


「おい」


ただそれだけ。

唯一、私を名前で読んでくれるのはメイドさんだけ。

どうして大人には純粋さが少ないのだろう。

いつも彼らを見ている時に思っていたことだ。

お父様にどうしてペコペコするのだろう。

皆、違った個性があるのに。



でも、大丈夫。

お父様は常人と同じ土に帰ったのだから。





────────────────





 「あの…八剣さん。ここが廃工場ですか?」


こちらは八剣の隊。先ほどまで降っていた雨はすっかり上がっていた。

地面に差す太陽光を水溜まりが反射して美しい。

そして彼らの目の前には巨大な廃工場。




 八剣は辺りを警戒しながら、英彦を巻き込まないようにしようと考えたらしい。


「そう、ここしかないわ。えっとあなた英彦だっけ? ここは私たち王レベルに任せてあなたはそこで観戦してな」


「『ラグナロク』」


その時、巨大な火柱が廃工場を覆った。

激しい風圧が山に広がり、危うく山が火事になるところである。

もはや、廃工場には原型すら留めていない。


「えええええええええ!!!!!????」


皆が崩れた廃工場を見上げて驚きの声を上げる。

そんな中、ただ一人 八剣だけは英彦に怒鳴り付けていた。


「バカなの!? 何で人質がいるかもしれない場所に最終奥義を放つの? 何で、生徒会長と同じくらいアホなの?」


「あっ……そうでした」


英彦は人質の事を本当に忘れていたようだ。

しかし、廃工場の中から数人の人影が現れる。


「おい、てめぇら何してくれてんだ?

俺たちが誰か分かってやってんのか?」


中から出てきた者は、人間ではなかった。


「モンスターだ!?」


生徒会役員の誰かが彼らを指差して叫んだ。

すると、それに反論するように彼らの内の一人は言った。


「アホか。あいつらと一緒にするな。俺達は四阿様の部下の付喪神。残念だったなお前らは騙されてここに来たんだぜ。罠とも知らずにな。ここには四阿様はいないんだぜ。よし、皆殺っちまえぇぇぇぇぇ」


その付喪神が叫ぶと周囲より付喪神が現れた。

数は見ただけでも生徒会役員達の6倍はいるだろうか。


「ぶっ殺す。ウルラララララッッッ」

「ヒャッハぁぁぁ」

「引き裂け。ギャッハハハハ」


一人一人が殺意を持って八剣の隊に一気に襲いかかってくるのだ。


「あんな数勝てるわけない」


その光景に何人かの役員は戦意を喪失して逃げ出そうとするが、彼らに逃げ場はない。


「『インフェルノ ランナウェー』」


すると、英彦の放った技によって正面の付喪神が十体ほど叫びをあげながら焼け焦げていった。

そして、逃げようとしていた役員達に英彦は……。


「皆さん。数が何ですか。あなたたちはそんな事で戦意を喪失するような集団ですか。 それが王レベルの付喪人ですか?

これが一人ならまだ分かります。

しかし、あなたたちはチームで、皆で王レベルになったんですよね。ひとりひとり自覚を持ってください。自分が王レベルの付喪人チームだということを……」


英彦の土壇場の演説によって役員達の戦意が高まることとなった。


「そうだ。俺たちが王レベル」

「──皆の憧れなんだ」

「いつもは戦力が低い俺たちだが……。副会長や書記の影で隠れているが……」

「俺たちもやれるってこと見せつけるんだ」

「いくぞお前ら」

「オオオオオオオオオオ!!!」


付喪神達と生徒会役員の戦いが始まった。




 そんな皆の背中を八剣は嬉しそうに眺めている。

自分に自信を取り戻した彼らの背中を見るのは誇らしいものだった。


「なぁ、英彦。あんたって凄いと思う。私だったら怒鳴り付ける事しか出来ねぇのに。役員達が自分自身で戦意を高めることとなった。

やっぱりあなたは生徒会長に似ているな」


八剣は英彦を少しだけ見直したようだ。


「いえ、そんなに誉められても……。八剣さん行きますよ。ここが違うならきっと明山さん達の所です。早く終わらせて合流しましょう」


少し恥ずかしがりながらも英彦は役員達の後を追って戦いに参戦する事となった。




 皆それぞれの技を使って付喪神と戦っている。

お互いをフォローして助け合いながら少しずつ戦力差を縮めているのだ。


「くそっ。きりがない」


だが、付喪神達はどんどん増えているようにも見える。

そんな頑張っている生徒会役員達から視点を英彦、八剣に向けよう。

二人は今、たくさんの付喪神達に囲まれていた。

おそらく付喪神達も誰が最も危険な存在かを理解していたのだろう。

数で囲んで一気に潰す作戦なのだ。


「ねぇ……英彦。さっきから見てたんだけどこいつらの殺られた後って消えてたよね。でもね前に私が戦ったやつは溶けていたの」


「それがどうしたんですか?」


お互い背中を合わせて飛びかかってくる付喪神を攻撃していく。

八剣の言う通り、英彦の倒した敵は消える。

しかし、八剣の倒した敵は溶けているのだ。


「なるほど……つまり弱点は水ということですね」


「ゲッ」

「ゲゲッ」

「ゲゲゲッゲ!?」

 

その解答に至った時、付喪神たちは焦り出した。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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