(番外編)元旦2020・明けましておめでとうございます。
本編とは関係ない、2020年の新年記念の話
「「明けましておめでとうございます。」」
本編とは関係ない場所で始まったこの物語。
これは、期間限定小説があったっていいじゃないか?
…という謎の考えから生まれた話だ。
「はい、明けましておめでとうございます。初夢は物語のネタバレになるので言えない黒で~す。」
「明けましておめでとう。
早いかもしれませんが、お年玉貰えましたか?
貰えた人もあげる人も無事に年越しできましたようだな…。
新年ガチャの課金は計画的に…!!!
剣士の妙義だ。」
司会は黒と妙義の二人が行うようだ。
二人は和風な部屋で着物を着て座布団に座っている。
「そう言えば、今日は他のメンバーは来ないのかしら?」
「ああー、みんななら今日は外出らしい。
どうせ、初詣や海水浴、または数市で有名なバトル映画でも観てるんじゃないか?」
主人公やサブキャラ達は正月らしく外に行っているようだ。
家でのんびりなのはこの2人だけ…。
「さて、除夜の鐘鳴らしたり、福袋買いに行ったりしたいものですね~。初詣にも行かないと~。」
「除夜の鐘…? 福袋…?」
平行世界の事は妙義にはよく分かっていない。
そんな世間知らずの妙義に向かって、黒の怒りの拳が炸裂する。
「年越し饂飩パーンチ!!!」
「それは昨日し蕎麦だ。バカモノ~!!」
大晦日バージョンのパンチなので、妙義には効かず、簡単に受け止められてしまった。
さて、脱線してしまったので話を戻そう…。
心を静めた黒は、除夜の鐘や福袋について妙義に説明する。
「除夜の鐘や福袋っていうのは、まぁ…とにかく楽しい事よ!!」
「…なるほど、そのような物があるのだな!!」
さすが、金持ち企業のお嬢様。
黒からの適当な説明も簡単に信じてしまう。
「さてっと、挨拶はこの辺にして…。」
黒は座布団から立ち上がると、和室を抜け出しどこかへと行ってしまった。
「おい、黒~。どこにいくんだよ?」
妙義がただ1人で和室に座っている。
「…………。」
しかし、黒からの返事は帰ってこない。
場面は代わり、別の部屋。
そこには先程の部屋とは違い、特に何もなく。
こたつとテレビのみの部屋だ。
「あ~もう正月はゴロゴロ祭りだわ~。
もう疲れた~。「笑うな魔法学校2020」でも観なきゃね~。」
そのこたつの中に黒が入っており、温もりながらテレビのリモコンを操作している。
「何してるんだ? 1人にするなよ…。」
先程の部屋に1人置き去りというのは、寂しかったのだろうか。
妙義は部屋に入ってきた。
「お~こっちこっち~!!」
黒が妙義をこたつの中へと誘う。
「なんだ? この机と布団がマッチしている道具は?」
「明山さんの国の暖房器具よ~。」
ホワホワとしながら、テレビを観て笑っている黒。
そんな黒を見ていると何だか気持ち良さそうだ。
「少しだけ…ちょっとだけなら入っても…。」
こたつの魔力に誘われるように妙義はその布団の下に足を入れてしまう。
「「ハァ~。」」
暖かい。暖かい。暖かい。
こたつとは何と気持ちがよいものか。
この快楽は忘れようにも忘れられなくなりそうになる。
「あっ、黒。その机の上のみかん取って~。」
「いいよ~。」
黒は机の上のみかんを取りだし、妙義に手渡す。
そして、2人はテレビを観ながらみかんの皮を剥いて食べながら…。
「「ワハハハハハハ…!!」」
テレビを観て笑っている。
その様子を遠くから覗いている者がいた。
その女性は気にくわない表情を浮かべて、2人を見ている。
「ねぇ~?
お姉ちゃんの実家で何をしてるのかな~?
確かにお姉ちゃんは皆のお姉ちゃんだけど…。
連絡もなしに来られるのはちょっと…。」
彼女は魔王軍幹部八虐の1人、謀大逆の四阿。
ここは彼女の家なのだが、居間に行くと2人の女性がいることに驚きを隠せないでいるのだ。
「「ワハハハハハハ…!!」」
しかし、四阿の声は聞こえないのか…2人は気にすることもなくテレビに夢中になっている。
「ねぇ~付喪カフェにこたつがあるのに何でうちに来るのさ?」
…と言ってはみたものの。
そう言えば、前に付喪カフェのこたつは炎と共に燃え尽きてしまったのだ。
「はぁ…もういいわ。譲ってあげる。だって私は皆のお姉ちゃんなのだから~!!!」
四阿が仕方がなく、彼女らに居間を譲り、自分の部屋へ戻ろうとしたその時…。
ピーンポーン
…と呼び鈴がなった。
こんな正月の朝にいったい誰が来たのだろう。
郵便屋さんが年賀状でも届けに来てくれたのだろうか。
いや、彼女に年賀状を出す人なんて、同じ幹部のフィツロイちゃんかリーダーか魔王様くらいしかいない。
しかも、どうやら大勢の人の声が聞こえるから、郵便屋さんでもない。
「はぁ…なんで、うちに来るのかしら。今回は私が主役ってわけでもあるまいし…。」
四阿がそんな独り言を呟きながら、玄関に向かっていく。
「「お年玉…!!」」
「「お年玉…!!」」
「「お年玉…!!」」
「新年あけましておめでとうございま…これ合わせた方がいいのでしょうか?」
「「お年玉…!!」」
「「お年玉…!!」」
「「お年玉…!!」」
外からは何十人という程の声でお年玉コールが行われている。
「ハイハイ、どうせ親戚の子供が来たのね。それとも部下達かしら? 少しくらいはお年玉目当てで来ないで欲しいんだけどな~。」
四阿は少し悲しそうにため息をつき、玄関のドアの鍵を開けると……。
流れ込む人々。
まるで、どこぞのイベントのように開園と同時に入ってくる人々のようだ。
彼女はその波に呑まれて、苦しそうに叫び声をあげる四阿。
「キャアアアアアア!!!
明山君に、フィツロイちゃん、付喪カフェの連中に、王レベルの付喪人達、冒険者連盟の奴らに、勇者連盟のエリート共、そして角砂糖野郎…。八虐の幹部達に、魔王様。そして、まだ出てきてないキャラクター達、未来の別のシリーズの奴らまで~~~~??????」
誰も彼女の事は気にせずに居間に向かって走っていく。
「Happy new year I want to do my best next year.
…ガクリッ」
沢山の人々に圧され圧され、ボロボロになった四阿は玄関の前で倒れこんでしまった。
「ギャァァァァァァァ!!!
目の前で私が死んでる…!!!!!!」
しかし、四阿だけは目の前にある自分の死体を見て恐怖の表情を浮かべていた。
それほど、大勢の人々が入ってきたのだ。
もちろん、居間も大変な事になっている。
「ぐぬぬぬ~テレビの続きが~。」
「なんだ? なんでこんなに人々が~。」
居間は既に、おしくらまんじゅう。
満員の電車内のようにギューギューになっている。
圧され圧されて予想せぬ方向へ。
「…おい、黒~?」
黒に助けを求めても、人の声が邪魔して聞こえていないのだろう。
人と人の間に挟まり、息が苦しくなってくる。
このままでは、妙義は圧迫死してしまう。
「おっ、おっ…………。」
彼女は最後の力を振り絞って声を出そうとする…。
「おぞうに……………」
そうして、彼女の目の前が真っ暗になってしまった。
「………ハッ。」
目を開けると、外はまだ太陽が上っていない。
初日の出にもなっていない時間だ。
妙義は冷や汗を流しながら、辺りを見渡してみる。
「夢か…?」
周囲は寝る前と変わらない。
妙義は安心すると、再び眠りについた。
「むにゃむにゃ……今年もよろしくお願いいたします。」
寝言でそんな事を言いながらも彼女は新年を楽しみに待っているのだ。




