山上と八剣の共闘戦闘
山上には姿の見えない敵、どうやら八剣の幻覚では無いようだ。
山上もようやく事の重大さを理解したのだ。
「生徒会長待ってろ。今、止めてやる」
山上は付喪神の能力で紐を操り、大台ケ原の出血している部分を縫っている。
それはまるで裁縫をしているようだったが。
「山上、痛い痛い。こういうのはちゃんと医者か治療魔法でやるのが普通だろ……痛い痛い」
「我慢しろ。死にたいのか?」
結局、何とか出血は抑えることが出来たが、敵はまたいつ襲ってくるか分からない。
「八剣、分かってるよな」
「はい、珍しく気が合いそうですね」
そう普段喧嘩ばかりしている二人が生徒会長を守るという目的に向かって協力するのだ。
彼らは生徒会長を守るために大台ケ原の前に立ち、二人は声を合わせて言った。
「2分で終わらせ…」
「ぶっ殺してや…」
こんな時でも二人の息は合わないのであった。
生徒会長を守るために2人は戦いを始めようとしたのだが。
「八剣、お前は敵の位置を教えろ。そこを俺が叩く」
「いいえ副会長。ここは私が殺るわ。貴方は生徒会長を守って……」
意見の違いから互いに睨み会う二人。
「こんな時まで喧嘩するな。それよりも敵は本気だぞ。用心してかかれよ」
大台ケ原が二人の喧嘩が始まろうとしているのを止める。
すると、押し負けたのか。八剣が手を引いたようだ。
「はぁ、しょうがないですね。ここは副会長に譲りますよ。ほら、今そこに立って私たちを嘲笑っています」
結局、八剣が退くこととなり、山上に指で敵の位置を教えた。
「よし分かった」
山上は言われた辺りを攻撃するが手応えはなかった。
「おい、八剣。本当にここなんだろうな」
山上は八剣の方を見て言った。
「ええ、今もその辺りにいる。でも攻撃が効いていない。ピンピンしてるわ」
八剣も流水を操り、敵にぶつけたが敵は吹き飛ばされる事もなく、その場に立っていた。
「私の流水を耐えるなんて、納得がいかない。溺死しろ!!!!」
八剣と山上は能力を使って怒涛のラッシュを喰らわせるが、
廊下の一部が砕けただけであった。
「おい、八剣。敵はどうなってる?」
「これほど攻撃してもまだ元気な状態だ。まだそこにいる。でも今、副会長の方へ襲ってきている」
山上はため息をついて、三人の周りにたくさんの紐を張り巡らせた。
「この紐に触れた瞬間、俺のセンサーが反応する。これで奴の位置も分かるはずだ」
スパイ映画とかでよく見るあの通路に張り巡らせた線のようなものを山上も利用したのだ。
張り巡らされた紐に奴の体が触れれば、その瞬間位置が分かるというものである。
「どうだ、八剣。俺の行動は間に合っているか?」
「ええ、はっ! いや間に合っていない。副会長の後ろにいる。今、刃物を突き立てて刺して来ようとしている」
「なっに!?」
山上の作戦は失敗したようだ。
山上も感じた。
内部から暖かいものが吹き出てくる感触。
生暖かい、赤く染まった液体が体の中から勢いよく吹き出したのだ。
山上は紐を解除しその場に倒れ落ちる。
山上には出血多量で意識を失いそうになりながらも考えていることがあった。
全く、油断していた。
敵は紐のセンサーにも引っ掛からずに俺を倒しに来た。
そうすると幽霊でもなければ不可能である。
しかし、八剣だけにしか見えない敵。
何故、彼女にしか見えないのだろう。
俺が刺されても姿は見えなかった。
八剣だけにしか見えない敵。
八剣だけ…八剣だけ…見える…?
「おい……八剣」
山上は素早く紐を使って傷口を縫い付けて止血をするが、そもそも血が足りておらず足元がふらつく。
彼の視界もぼやけて見えずらいはずだ。
そんな状態でも立ち上がる山上に二人は驚きを隠せていなかった。
「副会長。それ以上動いたら本当に貧血で倒れるぞ。無理はするんじゃない」
大台ケ原は必死に山上が動くことを止めようと言ってみたが、彼は聞く耳を持たない。
「おい八剣。生徒会長を見るな。俺を見てろ。俺だけを見てろ。どうした? 何かあったか?」
その台詞に八剣は顔を赤く染めた。
その台詞に大台ケ原は衝撃を受けた。
「おっ、お前、副会長……。おまっまっまさか?」
「副会長……こんな最期にまさか……。駄目だろ。
まってください。殺し…………ますよ」
山上は八剣の顔に手を当てて山上の顔を強制的に見させるようにしている。
そうして山上は八剣の目をじっと見つめている。
何も知らない周りから見ればもう青春である。
「溺溺溺……死しやがれぇぇ」
顔を真っ赤にして耐えられなくなった八剣は大量の流水を山上に喰らわせようとする。
「ワリィ、よく聞こえないんだ。だが、これで分かった。理解したぜ…お前だ。やっぱりお前だ。お前なんだ。あの…こんな事初めてだからうまくいかないかもしれない。駄目だったら今のうちに謝っておく」
山上の衝撃的な発言に、八剣の頭の中は急いで攻撃を止めて状況を整理している。
「なっ……まさか私の事をそんな風に思ってたなんて……」
「いいか。動くなよ?」
八剣はもう何も考えない事にした。




