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人攫い妙高と大楠巳汝(narou)

 その時、トイレから出てきた女性が1人。

薄紫のツインテールに紅の瞳を眼帯で隠した女性。

その黒いコートに身を包んだ大人の女性は、目の前で繰り広げられている光景に驚きを隠せずにいた。

目の前でこんなにも大胆に誘拐が行われようとしているのだ。

大人としては助けるべきなのだろう。

しかし、彼女の筋力では相討ちが目に見えている。

それに相手が武器を持っていたらアウト。

敗けは確実なものとなってしまう。

でも、それでも困っている人を見捨てるわけにはいかない。


「助けなきゃ……」


女性は決心し、目の前の2人に声をかけることにしたようだ。




 「あらら、なにしてるんですか? 嫌がってますよ?」


女性は目の前にいた人攫い犯に優しく注意を行う。

キツく言えば逆上されて襲われる可能性があるからである。

だが、残念なことにどちらを選んでも逆上される定めのようだ。


「何か御用ですかね? この子は私の娘よ!!! 駄々をこねるから困ってるだけ!!

人の家庭に口出さないでちょうだい!!!

さぁ、誤解されてるでしょ。私の天使ちゃん」


白い髪の女性はそう言って、無理やり少女の手を引っ張っている。

しかし、少女の方は抵抗して必死にその場から動こうとしない。

ツインテールの女性は困った表情を浮かべて、今度は少女の方に質問してみる。


「──じゃあ、お嬢ちゃん。どうして反抗してるの? 母親の言うことを聞かなきゃ」


今度は悩まずに優しい言葉遣いで少女に話しかける。

すると、少女は助けを求める顔で泣きそうになりながら、


「妾はこんな人の娘ではありません。人攫いにあってるんです。本当の事です」


……と救助を求めてきた。

その目は真剣で嘘を言っているようには見えない。

これで決定である。

この人は人攫いで、この子は無関係な少女。

ツインテールの女性はホッと一安心すると、


「いいでしょう。お嬢ちゃん。貴女を信じます」


優しく声をかけて、安心させるために笑顔を見せる。

しかし、次の瞬間。

彼女は人攫いの頭に向かっておもいっきり蹴りを加える。

普通の人が気絶するほどの威力。

さすがの白い髪の女性も油断していたのか、少女の手を離してしまう。

それでも白い髪の女性は一瞬、ふらついたがしっかりと地面に足をつけて耐える。

これには自分の蹴りに自信があったツインテールの女性も驚いただろう。

だが、ツインテールの女性は蹴りだけでは収まらないようで、自身のポケットから小さなハサミを取り出して、人攫いの腕に傷をつけた。


「痛ッ!?」


かすり傷程度だが、人攫いの腕には小さな傷が出来てしまった。




 その隙にツインテールの女性は少女に語りかける。


「安心して私は王レベルの付喪人。名前は大楠巳汝。あなたを助ける者よ。

さぁ、早くやりたかった事をしに行きなさい。

もうこの女性はあなたの前に現れないから。

今日を楽しんで!!」


その大楠と名のる女性は少女の頭を撫でてあげる。

すると、安心したのだろうか。

少女はその場から走り去っていった。




 トイレへ行く通路に取り残された2人。


「大楠とか言いましたね? 私の娘となる天使ちゃんに何て事を……!!!」


白い髪の女性は顔を真っ赤に染め上げて、怒りを露にしている。

その顔は般若には及ばないが、一目で怒り狂っていることが明らかなほど。

しかし、大楠には彼女の怒りに興味もないらしく。


「大楠ですか? 残念です。私の名前は大楠巳汝。覚えておきなさい。私は貴女のご主人様なんだからねコブタちゃん」


……と挑発じみた事を呟いた。

その後、もちろん妙高が更に顔を真っ赤にするのは明らかである。


「ご゛主゛人゛様゛ァァァァ!゛?゛!゛?゛

ふざけないで!!!

許さない許さない許さない許さない許さない。

私の天使ちゃんを奪ったあんたを許さない。

殺してやる私がカウンセラーから貰った付喪神の力でね!!!」


妙高はそう叫ぶと、自分自身の力を解放させようとしていた。




 妙高が力を解放させようとしているこの時も、大楠に彼女に対しては興味はなかった。

こんなコブタちゃんなどに興味はない。

いつでも捕まえられるし、殺せるし、自分より力が下なのは見ても明らか。

ただ、ショッピングモールの方々への迷惑とカウンセラーという単語には興味があるらしい。


「カウンセラーですか……。まさか……?」


大楠は力を解放させようとしている妙高に尋ねようとするのだが…。

突然、妙高は宙へと飛び上がった。


「フハハ、私はホッピングの付喪人。あなたはこの私の早い動きに追い付けるか??

私はこの速さで浮気女を殺したのよ。

天使ちゃんを引き離したあんたも同じように殺してあげる」


その速さまるで忍者のように速い。

ピョンピョン跳ねていた妙高はどうやら浮気女を殺した時の技を大楠にもあじあわせるつもりのようだ。

彼女はピョンピョン跳ねながら、足を揃えると…。


「死ね。『(妙高 スーパー ハイパー エクストラ ドリーム サイキョー エターナル レクイエム ストライク エンペラー ディメンション エクストリーム スピン ジョーカー スピード グランド クリティカル キング フィニッシュ ライフ ブレーク マジェスティ バースト インパクト フィーバー メビウス スパーク ユートピア シルバー ゴールド ラスト ファイナル オーバー 終焉 アビス ジャスティス アサシン カタストロフィ セイクリッド ウルトラ カオス クロニクル エデン スタート ヘル エニグマ ビックバン デビル ギャラクシー ウサギ サイクロン グングニル オルターエゴ ホロコースト ラビリンス カルマ クリムゾン メメント ミラージュ 辺獄 メシア モナーク ナイトメア ニルヴァーナ オデッセイ ハイブリッド エマージェンシー パラドックス パンデミック ペルソナ サクリファイス ルシファー クラスター クリスタル ヴィラン トリガー サタン)


付喪人キック』ゥゥゥゥ!!!」


とても長い名前のキックを食らわせようとする妙高。

少しずつ区切って言わないとフルネームを言うことが出来ないほどの長い名前である。

一瞬、ウサギという単語が聞こえた気がするが、大楠にはどうでもいいこと。

それにそんなキック、大楠の前では意味がないのである。


「跪きなさいコブタ」


大楠は紅の瞳を輝かせながら、妙高の動きを観察していた。




 大楠巳汝は重りの付喪人。

数メートルの範囲に彼女が傷をつけた相手がいた場合、相手の重力を何十倍とあげてしまう。

下手をすれば死人が出るし、建物が壊れる可能性もあるが、今回はちゃんと調節して行うようだ。

この能力は彼女のご主人様特性にピッタリの能力である。




 そう範囲も傷も既に準備は整っていた。

先ほどまで得意気にピョンピョン跳ねていた妙高であったが、今ではその面影はない。

つぶれたカエルのように地面に這いつくばって動けないのである。


「……ッ!?」


妙高は指一つ動かせずにその場で跪いている。


「自我はあるけど、暴走はしてないのね。じゃあ私達の探している付喪神ではないわ。

私達が探しているのは暴走して自我のある付喪神…。カウンセラーが何者かは知らないけれど、狙いではないわね」


大楠はまるで商品でも見定めるような目付きで妙高を見ながら語りかけた。

まるで蛇に睨まれたカエル。

だが、そんな状態でも彼女には意志があったようだ。


「私………の……………天使……ちゃ…ん…………。」


何十倍となっている重力の中でヨーマが走り去っていった方向に手を伸ばす妙高。

恐るべき執念。

これには大楠も驚かされる。

しかし、そんな妙高も人間であった。

先ほどの台詞を遺言のようにして、妙高はその場で気絶してしまった。


「──残念です。ここは数市。警察がいるから貴女は引き渡されるわ。

膨れる欲望を抑えきれずに、罪を犯した貴女の自業自得よ。

死んだ貴女の娘に顔向けも出来ないわね」


大楠は気絶している妙高に語りかけると、彼女の身柄を確保して、その場から連れていくのであった。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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