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新しい付喪神と契約したい

 「着いたぞ。英彦君。ここだ」


場所は元に移り英彦たちに戻る。


「ここだって、何でこんな廃ビル何ですか?」


それは見るからに崩れかけた廃ビルであった。

人の気配もないただの廃ビル。

やはり、この男と一緒にいると不安しかないものだ。だが、それでも彼は僕を呼んでいる。

行くしかない。


「おい、こっちだ」


そう言いながら、廃ビルの中へと入っていく駒々さん。

こんな所に置き去りにされるのも嫌なので、僕は疑いながらも彼についていくことにした。




 廃ビルの中は壁は壊れて、床も不安定で穴が空いている場所もあった。

人がいなくなって随分と長い月日が経っているようである。


「こんな所に何があるんですか?」


駒々さんは質問には答えてはくれなかった。

彼は床下を踏み抜かないように集中していた。

彼もまた不安になりながら、落ちないように安全な足場を踏んで進んでいたのだ。




 しばらく歩くと駒々さんはある場所で立ち止まった。

彼の目の前には下の階へと続く階段が。


「英彦君、着いたぞ。この先だ」


駒々さんは何のためらいもなくその階段を下りていく。

見るからにこんな所に用もないはずだが、僕は駒々さんを信じて階段を下りた。

すると、


「いらっしゃい。オオー、駒々じゃないか。どうした? 久しぶりだな」


階段を下りた先は広々とした空間だった。

だが、何もないわけではない。

そこは店だったのだ。沢山の座席があり、棚が並び、そこには何か良く分からない商品が売られていた。


「おう、久しぶりだな。実は今日はこいつがな」


彼は常連客なのだろうか。

駒々さんは経緯を店員の人に話始めた。




 「──なるほどな。そういうことなら協力するぜ。えっと、どこにあったっけな」


そう言うと店員は店の奥へと入っていく。

僕は未だに状況が理解できていなかったので駒々さんに聞いてみることにした。


「駒々さん、ここはいったいなんなんですか? 何で廃ビルの地下にこんな場所が?」


その質問に駒々さんは少し間を開けて答えた。


「──ここは、付喪神の販売店だ。ここでお前の新しい相棒と契約するんだ」


「付喪神の販売店って、それは……連盟が黙っちゃいないですよ」


駒々さんはそれは分かっているとでも言うように頷くと、


「いや、あいつらもこういう店のことは暗黙の了解という事で見逃しているんだよ」


おそらく、表向きでは禁止はしているものの、裏では許可をしているという所だろうか。

きっと、あれほどの組織が動くには沢山の金が必要なのだろう。

だから、こういう店からも金を取っているのだ。


「これなんてどうだ? 」


僕らが話をしていると、店の奥から店員はトレーの上に色々なものを乗せて運んできた。


「ほら、ガスバーナーに、火炎放射器もあるよ。これならもう壊れることもない。おすすめだよ」


確かにガスバーナーや火炎放射器等と契約を結べばより強力な力が手に入るだろう。

ラグナロクを放てる資格くらいは獲得できるかもしれない。

しかし……僕はやっぱり。すると駒々さんは、


「なぁ、こいつにそんな大きいものは無理だ。

こいつ貧弱だから、こいつには小さい物がちょうどいいぜ。」


「なっ!?」


この人は……この人という人は……。


「う~んじゃあ、ライターとかそういう物の方がいいかな?」


店員が僕の顔を覗き込んでくる。


「はい」


店員はもう一度、店の奥へと商品を探しに出掛けた。




 「ごめんね。在庫は無かったよ」


「じゃあ、店員さん。あそこのショーケースは何があるんですか?」


僕は先程から気になっていた店の端にひっそりと置かれているショーケースを指差して質問する。

すると、その質問に驚いたのは店員ではなく駒々さんであった。


「バっバカ。あっあれは高級品どもだ。お前あんなもん買う金があるのか?」


駒々さんは少し焦っていた様子だ。


「アハハハハ。駒々ありゃ高級品じゃないよ。確かに高級品レベルだけどあれは駄目な奴らだ。どうした? 焦ってるけど」


茶化された駒々は少し不機嫌なご様子であった。

そんな駒々の事には振れず、店員は説明を続ける。


「奴らは確かに強いけど曲者どもでな。売っても契約を勝手に解除されたって返却されたプライドの高い奴らだ。

本当は一度契約を結べば滅多な事では契約は解除されないんだけどな…。奴ら自由に契約を解除できるんだ」


僕はそのショーケースに近づいてみることにした。

中を覗くと、そこには数品もの品物がある。

どれも駄目な奴扱いされてきた物達だ。


「店員さん、これを試してもいいですか?」


僕は店員さんを呼び、ある物を手に取った。


「あれ?これって……。いや、いいよ。試すのはタダだ」


店員さんはそのライターについて何か思うことがあるようだけれど。

僕は再びライターを取った。






 その瞬間、全身を風が駆け巡るような感触を感じて、思わず目を瞑ってしまう。

そして、再び目を開くと……。


「──はっ! 」


目の前に写し出されていた光景は店内ではない。

どこかの空間だろうか。それとも僕の頭の中だろうか。

この中には二人しかいない。

僕と霊である。


「あなたがこのライターの付喪神ですか?」


「ああ、だが少し違うよ。私はターボライターの付喪神の霊だ。貴方は?」


「はい、僕は英彦と言います」


英彦の前に現れたのは人の見た目の付喪神の霊であった。

恐らく付喪神になる前の魂の姿なのだろう。

青色のまっすぐな目をした、剣士のような人物である。


「あの……一つ聞いてもよろしいですか?」


「どうしました?」


僕はそいつについての一番気になっていた質問をした。


「貴方は性別はどっちですか?」


そいつは中性的な見た目であったため僕には分からなかったのだ。


「─────はぁ、男だよ」


「あっ、分かりました」

「くそ、男だったか」と僕は心の中で悔しがったが、世の中しょうがないこともある。


「で……今回は君が私と契約をするんだね。あの店員から話は聞いているのか?」


「はい、確か貴方は契約を自由に解除できるとか。プライドの高い駄目な奴らだとか言ってましたし」


さすがに店員も本心で言ったのではなく冗談で言ったと思うのだが、彼は本気にしたらしい。


「あの店員言いやがったな。まったく、舐めやがって。すまない。少しイラッとしてしまった」


少しではないように見えるのは僕だけでしょうか。


「あの……ちょっと良いですか? そろそろ僕と契約を結んでくれませんかね」


話を戻そうと話しかけたのだが、


「ああ、だが私との契約は一時的にだ。そしてその一時的契約にも条件がある。心配することではない。条件と言っても貴方の力を試す試験みたいなものだ」


そう言うと彼はファイティングポーズを取りこちらを睨んでくる。


「ちょっと待ってください。僕はただの何の能力もない一般……いえ、何でもないです」


そうである。

これはあいつからの試験である。

基本試験で分からない問題を監視者に反論しないように、試験を受け入れるしかないのだ。


「ほぉ……。では、行くぞ!!!」


二人の拳が交じり合う。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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