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俺たち2人が殺人犯!?(narou)

 ボコッ!!!!!

痛みはない。

あれほどの勢いの拳を喰らったはずなのだが、何も感じない。

まるで嵐の前の静けさのようだ。

英彦は思わず瞑ってしまっていた目を開く。


「あれ……??」


彼の目の前には先ほどまで喧嘩をしていた光景が嘘のように、呆然と立っている2人がいた。

2人とも北の方角に身体を向けたままである。


「「………?」」


「どうしたんですか? 2人共」


英彦の質問に2人は震えた声で答える。


「「……どうしよう。殺っちゃったかも」」


そんな冗談を言っている2人の顔色は真っ青。


「またまた~そんな事言って驚かせようと……ギャ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!」


英彦の目線の先には地面で倒れて全く動かなくなっている1人の少女の姿。




 「おいおいいおいいおいおいおいおおいおいいおい、どどどどどどどどうする~~~?」

「ばばbqばばっばばばばばかやろう、そそんなのきききまってんだろ?」


2人の声は完璧に震えた声になってしまっている。


「よし、タイムトラベルでなかった事にするぞ。行くぞ英彦衛門!! 大冒険の始まりだ。大長編だ。

待ってろ!!!

今、仲間達を呼んでくるから。逃げるわけじゃないからな。逃げてないからな」


そう言いながら明山は、時間旅行ができる乗り物を探しに行こうとしている。

それに対して相手の男は、


「バカ、とにかくアヴァロンだっけ?えっと……とにかく探すんだよ。

それか、こういう時は血を与えて復活させるんだ。それとも改造人として復活させるか?

それとも宇宙人と命を共有するか?」


……などとどちらも混乱して非現実的な事を言っている。

おそらく2人も混乱しているのだろう。


「……?」


しかし、何かが妙だ。

英彦は一応、生きているかの確認をとるために犠牲者に近づいてみることにした。




 英彦が被害者の目の前まで近づくと、彼はしゃがんで声をかけてみる。


「あの~生きてますか?」


「………」


返事はない。

そして、返事がないことにますます焦る後ろの2人。


「「やべー俺たち、刑務所暮らしは嫌だァァァァ」」


英彦は諦めずに再度確認をとってみる。


「……本当は聞こえてますよね?」


すると、とても小さな小さな声で、


「………ハイ」


被害者はやっと返答し、ゆっくりと立ち上がった。




 「──あっ、あんたは!?」


目の前にいたのは、死神さんであった。

だが、前回とは何だか雰囲気が違って見えるのだ。

現代の私服のJKみたいな格好である。

今からでもショッピングに出掛けるような…。

彼女は前はいかにも死神感溢れる服装だったので、今の服装の変化に慣れることができない。


「お久しぶりです明山さん。あの戦い以来ですかね?」


「おう、久しぶり。それより 今回はなにか指令で来たの? それともプライベート?」


「指令ですよ。とある仮面の男の討伐……それが私への上からの指令です。

あっ、あの世の方は他の方に任せているので、当分の間はこちらに」


俺と死神さんの2人で再開を喜んでいる中、英彦は初めて会う女性が誰なのかを必死に推理していた。


「あの明山さん。この美しい女性はいったい? まさか、彼女ですか? いやでも明山さんに恋人なんてできるとは思えないし……。」


今、英彦の口からけっこう失礼な言葉が聞こえたような気がする。俺に彼女が出来ないと?

俺は彼女が出来ないのではなくて作らないんだがね。

だが、その話は置いておいて、英彦に紹介してあげなければならない。


「英彦は始めて会うのか。えっと、この人は俺の友達である……」


本当にこのまま言ってしまってよいのだろうか。

「いきなり死神って名前を言って動揺しないだろうか」と思ってしまった。

びっくりするよな。死神さんなんて名前だもん。ああ、ニックネームくらいもっと可愛らしいのあげればよかったかもしれない。

その代わりに死神さんは自ら自己紹介を始める。


「わっ、私は死神です。“死神ちゃん”でも“死神さん”でもどちらでもどうぞ。えっと、よろしくお願いいたします」


恥ずかしそうに頭を下げて自己紹介をおこなった。

いきなり死神なんて聞いたら動揺してしまうのではないか。

目の前の女性がいきなり死神なんて名乗るんだ。

まるで「私は神です」なんて知らない人に突然言いふらしたりするのと同じ行為である。

もう彼女が変な印象を持たれるのは確定で……。


「死神さんですね。はじめまして僕は英彦です。よろしくお願いします」


そして、お互いに握手をする二人。

パッと死神の顔が明るくなるのに対して俺には正直驚きを隠せない。

何故なら何の疑惑ももたず、普通に接しているのだ。

俺はこっそりと小声で英彦に質問をする。


「なぁ、英彦。お前……彼女の名前に関して何か思う事はなかったか?」


その質問に対して英彦はじっと俺の目を見て、


「何言ってるんですか? 普通の立派な名前じゃないですか」


やはりこの世界ではかっこよさといい、名前といい、俺の元いた世界とは感性が違うのだろうか。




 彼女の自己紹介を終えた俺たちは真っ先に本題に入る。


「「その……拳を当ててしまい申し訳ありませんでした!!!!」」


俺と紐の付喪人からの謝罪。このまま2人とも刑務所暮らしとか冗談じゃすまない。横にいるこいつと刑務所暮らしだと? 死んでもごめんだ。

だが、死神さんはそんなに怒っていない様子だ。


「……そうですね~。では明山さんに今度、付喪カフェの料理でも奢ってもらいましょうかね。

先日に行ったばかりですが、また行きたくなっちゃって……」


いつの間に彼女はあの店に行ったのだろう。金曜日以外とかだろうか。

金曜日に来てくれていたら、あの場で再開できたのだが。


「ああ、罪滅ぼしくらいはさせてもらうぜ」


俺がそう言って返答した後、紐の付喪人も死神さんへの罪滅ぼしを行おうとしている。


「なぁ……俺の罪滅ぼしは?」


「特にないです。知らない方に罪滅ぼしをさせると言うのも図々しいかもしれませんし……。

それでは2人共今から行きましょう」


紐の付喪人にそう言い残しその場から走り出す死神さん。待て、今からだと!?


「ちょっ……今手持ちが~。やめてくれよ~今日以外で頼む」


そして、死神さんを俺は追いかけて走り出す。

しかし、あることに気づいた英彦は、走っていく俺に質問してきた。


「ちょっと、待ってください。明山さん、恨みをはらすのはどうするんですか?」


「それなら、そこの奴に次にあった時は土下座させて慰謝料請求するから楽しみに待ってろって言ってて」


英彦の質問を俺は適当に受け流し、死神さんの後を追う。


「その……そうらしいです。それでは失礼します。」


英彦は紐の付喪人に丁寧にお辞儀をすると、2人の後を追いかけて行ってしまった。




 「──まったく、やれやれだな」


その道に1人残された紐の付喪人。

彼がその場から立ち去ろうと進行方向を変えると。


「おっ、おーい。こっちこいよ!!!

どうした? 何か問題でもあったか?」


「止めといた方がいいですよ。どうせ、頭でもおかしくなってボーッとしてたんですよ。

あっ、でも頭がおかしいのは元からかな?」


道の向こう側から手を振っているのは彼の仲間である。


「ああ、今そっちに行く。それと俺の悪口が聞こえた気がするんだが?」


紐の付喪人はそう言いながら彼らの元に走っていった。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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