リミッター解除スイッチは押させるな
「なんだと!?」
「ねぇ、貴方不思議がってるわね。そりゃそうよね。
消えたんだから…。でも貴方が悪いのよ。私はあらゆるものを出したり入れたり出来るのよ。
どんな物、どんな現象、どんな生物でも何でも私が許可した物なら全て」
白魔は黒の説明で気付いた。
だが、その時には既に遅かったのだ。
彼は黒に当たりそうになっていた爆弾が自分の足元にある事には気付かなかったのだ。
「嘘だろ?」
「これが私の一つ目の才能。引き出しの付喪人よ」
その瞬間、白魔の足元で起こる沢山の爆発。
「白魔ぁぁぁぁぁぁ!!!!」
霧島の叫びも虚しく、白魔は逃げられなかった。
「すごいよすごいよ黒さん。チートだよ」
館の二階から嬉しそうに英彦が降りてくる。
「どうよ。私にかかればこんなもんよ」
「おのれ白帝家。そしてレディ」
二人が振り向くと、そこには霧島がいた。
「霧島貴方の目的はいったい何なの?
私たちを騙して何がしたかったの?」
「俺達の目的は白帝家への復讐だ。一族の滅亡だ。
ところでレディ。君はとても素晴らしい才能を持っている。その才能、我が息子のために踏み台の素材として使わせて貰うよ」
正直、黒には霧島が何を言っているのか分からなかった。
「何を言っているのよ?
もしかして負け惜しみ?」
「白魔もうそろそろいいだろう。リミッターを解除してやるぞ。解除スイッチを押すぞ」
「いいわよ。早く押しなさいよ」
「えっ……!?」
霧島は押せ………と言われるとは思わなかったので困ってしまっている。
「いい? 英彦こういうのは大抵は私たちを騙して、押してほしく無かったら言うことを聞け…だの言ってくるパターンだって、前に明山が言ってたわ」
黒はこんなことには騙されない。彼女は学んだのだ。
日頃の失敗と今回の付喪人としての戦いによって彼女の心は成長していたのだ。
ポチッ…!!!
「「あっ!?」」
霧島はスイッチを押した。
彼がスイッチを押したということは………。
黒の読みが外れたということだ。
「ウォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」
爆風によって飛ばされたのか、白魔は遥か遠くに立っている。彼は叫んだ。それはいきなり自分の力の制御が解除されたことによって、体に負担がかからないように反射的に起こした行動だった。
「黒さん何かヤバイんじゃ………って黒さん!? 」
黒は地面に倒れていた。
まるで、この前試験の説明をしてくれた女性が倒れた時のような格好で倒れている。
「あの黒さん? 何してるんですか?」
英彦が心配しながら黒に質問すると、黒は地面に倒れながら答えた。
「あのね。私があの能力を使いたくなかったのはね。その理由はね。使った後に凄くお腹が空いちゃうからよ」
その証拠に黒の腹の虫が鳴っている。しかも、大きな音で鳴りやむことなく。やはり、世の中メリットがあればデメリットもある。英彦は改めて常識を理解する事となった。
「分かりました黒さん。僕が戦います。
その間にここから逃げれるくらいまで体力を回復しておいてくださいよ」
英彦は一歩前へ出る。
彼の体は武者震いだろうか、恐怖だろうか…彼は震えているのだ。
「無理よ。だって、英彦は勝てないわ。
それに食べ物は部屋で英彦が隠れて食べるために持ってきていた高級お菓子しかないわ」
「ちょっと、何で知ってるんですか!?
分かりましたいいですよ。それ食べててください」
英彦はまんまと黒の作戦にかかった事に気付かなかった。
ついに、黒は英彦の高級お菓子を食べれるのだ。
「分かったわ。英彦頑張ってね」
黒は立ち上がり腹を鳴らしながら急いで部屋に戻っていく。
「ヒャッホーーーーーイ!!!」
途中で喜びの叫び声が聞こえた気がしたが気のせいだろう。
黒が部屋に戻るのを見届けた後、霧島を一度睨み付けてから英彦は覚悟を決めた。
「よし、行くか」
英彦はそういうと更に強くなった白魔と戦うために前に進むのであった。




