霧島さん家の自慢の息子・白魔
「しかし、驚きましたよ」
メイドさん達と別れ、俺達は二階へと続く階段を上っていた。
「ああ、さっきのメイド達か。
彼女達の中にはモンスターもいるんですよ。彼女達は私が雇ったんです。あっ、心配しなくてもいいですよ。彼女達は人を襲ったりしません」
「いえ、ただモンスターも働くなんて大変なんですね彼女達も」
「ええ、そうですね。あっ、この角は右です」
階段を上りきり、俺達は右側に曲がる。
「いいですか?
この鍵はあなた方の部屋の鍵です。本当は二部屋用意したかったのですが…………………すみません」
そう言って霧島は俺達に部屋の鍵を渡してくれた。
「いえいえ、こんな事までしていただきすみません。
依頼は任せてください。完璧にこなして見せます」
ここまで待遇されたら本気でしないと、何か後味が悪く感じそうである。
「では、よろしくお願いいたします」
「お任せください」
俺と霧島は軽い握手交わした。
すると、一階から誰か近づいてくる。
そいつは俺らより少し年上の青年だった。
「おお失礼。こいつは私の息子です」
「白魔です」
礼儀正しいおとなしそうな男性。
白魔の自己紹介を終えて、俺たちも挨拶を行おうとしたのだが………。
霧島は急にソワソワしだして、
「じゃあ、行こうか白魔」
霧島は息子さんと急いで奥の方の部屋へ入っていった。
俺たちが鍵を渡された部屋に入ると、そこは眺めのいい広々とした部屋。
「見て見て明山。スッゴイわ。景色がとても美しいわ」
黒は目の前の景色にはしゃいでいる。
「確かに、こりゃすごいな」
荷物を机の上に置き、俺は一息つく。
最近、色々と大変だったし、疲れは取りたいものだ。
よし俺は夜まで寝よう。
そう思ってベットに横になる。
フカフカのベットでゆったりとしていると………。
英彦が何やら考え込んでいるようだった。
「どうしたんだよ。英彦」
少し気になったので俺は声をかけてみる。
すると、英彦は少し不安そうな表情をして……。
「明山さん。何か変じゃないですか?」
「何が変なんだよ」
「だって、こんなにもお金持ちなら付喪連盟も協力的になるのでは?
それに先ほどのあの態度ですよ。彼の息子が来たとたんに少し急いで部屋に戻ったんですよ。何か怪しくないですか?」
これはあれだ。英彦は考えすぎなのだろう。
「そこまで神経質になるなよ。俺達に依頼した理由もさっき言ってたじゃないか。」
「そうですよね? きっと……」
「とにかく夜まで待とうぜ」
英彦の疑問は気にせずに、俺達は夜になるのを待つことに決めた。
そして夜。
いや、早くないか?
まるで一行で夜になった感じがする。
ん? いやこっちの話だ。
……なんて思うほど早く夜になった。
本当に怪物なんて出るのだろうか。どうせ寝ぼけた人が風の音を聞き間違えたのさ………とか言うオチだろう。
しかし、俺はうずくまり、ベッドの横で武者震いをしていた。
「怖くない。怖くない。俺は怖がっていない」
「明山さんもしかして怖がっていないですか?」
そういう英彦も少し震えているのは何故だろう。
「お前の方が怖がってんじゃないのか?」
どちらも怖がっているのを認めたくなかったということだ。
俺達は部屋の明かりをつけて、怪物が出るまでじっと待機をすることにした。
「いや二人とも何やってるのよ。明かりは消さないと…………」
黒が明かりを消す。
電気をつけていたら、不審がられて怪物に逃げられてしまう………と思っているのだろう。
「バババババババババババババババババババカッ、何やってんだよ」
しかし、黒には俺達の今の感情が分かっていなかった。
「待つなら明かりを消さないと現れないじゃないの」
「確かにそうだけどさ」
正論を言われて何も言い返せない。
その時だった。ドアが静かに開いて何者かが部屋に入ってきたのだ。
「「「ギャァァァァアアアァァァアアア!!!!」」」
不審者。侵入者。もしくはお化けである。
お化け、それだけはゴメンだ。
俺達がそいつの動きを観察して警戒していたのだが、そいつはどうやら俺を狙っているらしい。
「ウオオオオオォォォォォオオオオオ!!!!」
そいつはまっすぐに俺の方へと飛びかかってくる。
負けじと俺は後ろへと逃げて外へ………。
狭い場所では戦いにくいからだ。
だが、俺は忘れていた。
ここが2階であることを………。
そして、俺はそのまま飛び降りることに………。
だが、外に出たことで月明かりに照らされた侵入者。
「あっ、お前は!?」
そいつは霧島の息子だった。
ここは館の地下室。奥の方にうっすらと明かりが付いている。
「羊よ。俺の息子は今どうなっている?」
その場所には沢山の機材と霧島。
そして老人が一人。
「霧島様。羊ではありません。執事ですよ。
えっと今、白魔様は暴れております。やはり霧島様が怪物と言っていたのは白魔様の事だったんですか?」
すると、霧島はうっすらと笑みを浮かべて、
「ああ。だが勘違いしないでくれよ。
怪物位の強さって意味だ。あいつは自慢の息子だからな」
その部屋には外からのドローンの映像を映し出すテレビがあった。それを見ながら二人は話している。
「しかし、何故このようなことを?」
「フハハハ。聞きたいか。いいだろう。いいか………」




