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塩見刃、生徒会率いる西軍

 魔王城西。

この魔王城を囲むように分けられた仕切りで、魔王城を中心に4方向に延びたあらゆる魔法を無効化する壁。“魔王壁”に分けられた西側。

この場に呼ばれた連盟同盟は300人。

その中にいる王レベルは『塩見刃しおみやいば』と生徒会のチームである。


───────────────────


 この300人が鏡の中に飛び込んでたどり着いた先は、エンタシス形状の柱が何柱もそびえ立っている異様な場所。

まるで柱の森のようだ。

その柱は魔王城の前までそびえ立っていた。


「なんだ? この柱達は?」


大台ケ原や連盟同盟の数人は不思議そうに柱をペタペタと触っている。彼らの周りにある切れたり折れたりしている柱は木製で赤く染められていた。

その赤色が赤黒い空と重なり、なんだか不気味な光景を生み出している。


「なんか、気味が悪いですね」


「そうだな。こんな何もない場所に柱しかないのは不気味だぜ」


八剣と山上も柱の周りを一周したりして、調査を行ってみるが、何の変哲もないただの木の柱だ。


「チッ、お前ら警戒くらいしてから触れよ」


みんなが柱に注目している中、塩見だけは柱から離れて周囲を警戒している。彼は周囲をチラチラと見ながら、怪しい気配がないかを観察しているようだ。

でも、怪しい気配は感じない。

鏡の出口は敵陣だと思っていたが、柱しかない場所になぜ送り込まれたのか? 何故だ?

塩見にはさっぱり訳がわからず、首をかしげるしかなかった。





 シュ………。

その時、柱に触っていた大台ケ原の耳に小さな小さな風がなびくような音が聞こえた。


「………?」


少し驚いて彼は柱に触るのをやめてから、周囲を見渡してみる。

だが、誰もその音には気づいていないようで、


「なんか、緊張して損したな~」

「ほんとだよ~。戦地に行くと思ったらまさかの変な場所だとはな~」


みんな、緊張感がほぐれて、ユッタリとした状態で会話を楽しんでいる。

聞き間違いだったのだろうか?

そう思って大台ケ原が再び柱の周りを一周しようとした時。

彼の目に遠くにある柱の影に水滴のような物が光で反射しているのを見つけた。

チラチラと柱の1部分が光を反射している。

どうやら、太陽の光を反射して、柱についた水滴が光っているように見えたのだ。


「あれは………? 雨でも降ったのか?」


少しその水滴について気になった大台ケ原は、その水滴のついた柱に向かおうとしたのだが、あることに気がついた。

遠くにある柱に水滴がついているのに、大台ケ原の側にある柱はまったく水滴などがついていないのだ。

雨が降って乾いたということなら、この地面も多少は湿っている場所があるはずである。

それなのに水滴がついているのはあの柱の周辺だけ……。

規則性があるとすれば奥の方からまっすぐに水滴のついた柱が一直線になっているということ。


「しまった!!!」


そう言って柱の側で観察していた2人に向かって大台ケ原は走り出す。

その声を聞いて何事かと大台ケ原の方を向いた2人。

2人はなにか遠くで起こったのかと、柱の影に体を隠し身を潜める。

しかし、そういうことではない。柱が敵の攻撃から身を守ってくれるというわけではない。柱こそが危険なのだ。

でも、2人は敵からの攻撃に身を潜めようと柱の影に隠れている。

敵からの攻撃に対応できない場合、まずは準備のために物に隠れる。自分の身を守るために物に隠れる。

それはほとんどの人間ならそうするだろう。

だが、この攻撃はその心理を利用しているのだ。敵将からの同盟連盟への攻撃はすでに始まっていたのだ!!!


「山上、八剣危ない!!!」


彼は走りながら、山上達を柱の影から突き飛ばした。




 山上と八剣は大台ケ原に柱の側から突き飛ばされる。


「「…………ッ!?」」


柱の影から突き飛ばされた山上と八剣は、敵に攻撃されると思って驚いている。安全なはずの物影から突き飛ばされたのだ。

味方であり大将である大台ケ原によって突き飛ばされたのだ。

何がなんだかさっぱりなのは当たり前のことである。

だが、大台ケ原の行動の理由はすぐに明らかとなった。

山上と八剣の隠れていた柱の側面を水のような液体が移動している。

こちら側へと側面を移動してきた水滴は1つに集まり、柱から飛び出した。そして、それは水のカッターのように集まり、大台ケ原の左腕にぶつかる。


「「会長ぉぉぉ!!!」」


山上と八剣の目に写った光景。

それは血を流し、左腕を切り飛ばされた大台ケ原の姿であった。




 一方、その頃。

他の柱でも同じようなことが起こっていた。

柱から柱へと水滴が飛び出し、水のカッターのように柱の側にいる者を切断していく。

水の斬撃を衝撃波のように飛ばしてきたのだ。


「うわぁぁぁぁ、お前、半身が切れてるぞ!?」

「柱に近づくな!!」

「ヒィィイィ、首がぁぁ~」


もう連盟同盟は大混乱。生きている者達は柱から離れて塩見のもとへと集まってきた。

まだ動ける者は生きている者に肩を貸しながら歩き、死んでしまった者はそのまま放置。

もちろん、生徒会の山上と八剣も大台ケ原の腕を肩にまわして歩く。

みんな、ここが戦場だと言うことを改めてその身で知ることとなったのだ。

次の攻撃がいつ来るかも分からない不安に襲われているのだ。


「どうするんですか王レベルさん? 全体の3分の1の数が殺られてしまいました」

「塩見さん攻めましょうよ」

「こんなにも犠牲を出してなにもしないなんてあんまりですよ」


このままでは殺られてしまうのを待つだけだと、みんなは塩見に助けを求めるのだが……。

彼は今虫の居所が悪いらしく。


「うるせぇ!! 黙ってろ!!」


……と大声で怒鳴られてしまった。




 連盟同盟の戦士達を怒鳴った塩見はただまっすぐ一方向を見続けていた。その目線の先には柱しかない。

同盟連盟も生徒会も塩見があの方向を見ている理由は分からなかったが、彼と同じようにその方向を見ていた。

すると、ゴゴゴッと彼の見ていた方向にある1柱が大きな音を立てて斜めに崩れ落ちていく。


そうして、その柱の影から姿を見せたのは1人の男。

黒い髪を縛り、赤と黒の着物に体を通した和服の男。

左目には深い傷により閉じており、右目は紺藍こんあい色である。

また、その男の右手にはおどろおどろしい気配を放つ妖刀を持っている。


「我が名は『大江おおえ御笠みかさ』!!

魔王軍全盛期の幹部十悪時代の生き残り、内乱ないらんの称号を手にし者。西を任された侍である」


柱の側から連盟同盟達を見るその姿は歴戦の武士のように、落ち着いた表情を浮かべて、敵に対して礼儀を重んじているようだった。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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