白帝家への復讐
激しい炎が村を襲う。
たびたび起こる激しい爆音。そして、止まない悲鳴。
建物は次々と崩壊し、近隣の森は焼き果てて生物は燃えていった。
付喪神もモンスターも人も炎に襲われる。
もはや消火も間に合わず、次々と炎は移り行く。
その村を覆う黒い煙は一向に消えず、聞こえるのは悲鳴と笑い声。
「何故だ。なぜこの村を襲ってきたのさ」
一人の女性が道を塞ぎ、高笑いしていた二人組に問う。
すると、二人組のうちの中年男性がその質問にこう答えた。
「我々はお前達の村長と話をしに来たのだ。我々はあなたのような美しいレディに傷を負わせたくないのだよ。だから村長を我々の前に連れてきてくれないかい?」
「何が、美しいレディを傷つけたくないよ。私たちの村を襲って、それで村長に会わせろですって?
冗談じゃないわ。早くここから出ていって!!!」
すると、その中年男性はひどく落ち込んでしまったようだ。
「ファゥェん。そんな………………」
すると、変な声を出した中年男性にもう一人の方の若い男が注意を始める。
「おい、父さん変な声が出てるぞ」
「………ふっー。おまっ、白魔。
お前…実の父親になんて事言うんだ。オレはちゃんと喋れて………」
「もう諦めろ父さん。父さんが女に優しくしてもむしろ嫌がられるだけだと今までの事で分かっただろ?
あと、フラれたと感じたら変な声が出る癖どうにかならないのか?」
「確かに諦めるべきか。しかし、ホントに変な声が出てるのか?」
自分の隠れた癖に悲しむ中年男性。
ふと、二人が目線を戻すと女性の姿はなかった。
どうやら、二人がバカな会話をしている間にさっきの女性は避難したようだ。
女性は村外れにたどり着くと、この村の村長に今までに起こった事を話している。
「しかし、私を指名とはいったい何故だろうか?
私はあいつらと会ったこともないのだが?」
「それはさすがに私にも分からないです」
「とっ、とにかくこの村はもうだめだ。今は逃げる事が大事だ。
あの二人は後日、付喪連盟に頼んで追い出してもらおう」
村長達がその村を捨てようとした時だった。
「逃げる気か? 俺達はちょうど貴方に用があるのに………」
背後から若い男の声が……………。
煙に覆われ姿が見えない状態だが、男がこちらに近づいてくる足音がしたのだ。
村長達はその場から動けなかった。恐怖で足が前に進まなかった。だが、村長は恐る恐る男に話しかける。
「何故だ。お前はなぜ私を狙ってるんだ。理由を聞かせてくれ。この村に来た理由を……………」
男との距離はどんどん近づいている。
煙は男から離れ、そいつの全身がはっきりと見えて…………。
現れたのは長くボサボサな髪の若者だった。
「お前じゃない。俺の名は白魔だ!!!!」
「分かった白魔。なぜこの村を襲ってきたんだ」
「……………………それは俺が説明しよう」
白魔の後ろからもう一人。先ほどの中年男性が現れた。
「なぜェ…俺達がハァァ…ここにハァァ…来たのかというとハァァ…人をゼェ…探しハァァ…に来たんだゼェ…」
彼は自身の息子に追い付くために全速力で走ったのか。息をきらしていた。
「俺達は探しているんだゼェ…。白帝家のやつを…。あいつを殺したやつをだ。お前も白帝家だろ?
村長さん。話を聞かせてくれよ」
「いや私は村上家ですよ?
白帝村長は隣の村にいますが?」
明らかにまずい状況だった。
中年男性は額に大量の汗を流し、焦っている様に見える。
「隣の村? ここじゃないの?
そう…違ったのか…。いやあのその…なんか…よし帰るぞ。白魔」
「待ってくれよ。父さん」
二人組は大急ぎで去って行った。
二人組が見えなくなった頃。
「しかし、やりましたね。うまく騙せましたよ。白帝村長」
「あいつらが何者かは知らんが、とっさの思い付きでうまくいってよかった。後は付喪連盟にあいつらの討伐を依頼すればいい」
女性はバックから電話を取り出した。
「早速電話を…………それにしても隣の村の村長の名前を借りるとは流石です」
「あの村の連中は私の村を狙っているからな。
向こうが私の土地を狙っているんだこちらも仕掛けないといけないだろ?
それに白帝家に復讐するなんて言うんだ。危険な奴に決まっているだろ?」
村長の笑い声が響く。なんという悪。彼の本心には隣村に申し訳ないという感情がない。自らが助かるために隣村を犠牲にしてしまうのだ。
「土地は増え、あの村も潰せる。一石二鳥ですか?
村長もワルですねぇ」
「ハハハだが、村を建て直さないといけなくなったな」
「そこは付喪連盟の奴らに立て替えて貰いましょう。「あんた達の警備が不注意のせいで付喪神が襲ってきたんだ」とか言って。
おっと、電話が繋がりました。静かにしててください」
場面は先ほどの二人組に移り、彼らは走っていた。
隣の村に向けて全速力で走っていた。
何故なら、あの村から隣の村に避難指示でも出されたら付喪連盟どもが来て返り討ちにあうかもしれないからである。
いや、もしかしたら避難指示が出されているかもしれない。
「父さん地図くらい出発前に見ててくれよ」
「すまん。それにしてもどうする白魔。
既に俺達の存在がバレてしまった。俺の計画が終っちまった」
すると、霧島は立ち止まり、白魔を見つめてこう言った。
「仕方がない。殺れ白魔」
「えっ? でも、向こうの村にはまだ人がいるかも………」
「いいから殺れ。これはお前のためだ」
彼は親父には逆らえない。本心ではないが、悔やみながらも白魔は両手のひらを村に向ける。
すると、両手から爆弾が出てきた。
白魔はそれを勢いよく発射させる。
その両方の爆弾は村の方向に飛び去り、激しい轟音と共に黒い煙が空を隠した。
瓦礫は吹き飛ばされて、生き残れるものなどいるはずもない。
そうして、二つの村は火に覆い尽くされたのであった。




