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カプセルの中の少女の肉体

 突き刺そうとした剣は止まった。

カプセルの中の少女には剣先が届かない。

手を抜いているわけではないし、カプセルが固いわけでもない。

もちろん、必殺技に力を抜いたわけでもない。


「!?」


カプセルに突き刺さる寸前、何者かが剣を掴んで攻撃を止めてしまったのだ。

彼の最高の必殺技が片手で止められてしまったのだ。

素手で剣を掴んでいるのに血すら流れていない。

この部屋には二人以外の気配はなかったはずなのだが。

駒ヶは一度そいつと距離を取るためにその場から離れる。


「お前は何者だ?」


駒ヶはそいつを睨み付けながら質問する。

すると、そいつはカプセルの前に立ちはだかって駒ヶの質問に答えた。


「俺は『金剛こんごう』。

魔王軍幹部八虐であり、そのリーダーだ」


黒いサングラスをして、黒紫色のフードローブを着た大人は感情を見せずにただ駒ヶの目の前に佇んでいた。




 「そうか、八虐ならここで倒させてもらうぜ」


駒ヶはそう言って切りかかろうとしたのだが。


「やめておけ。俺には絶対に勝てない」


自信満々の金剛には何か自信でもあるのだろうか。


「なんだよ。やってみなきゃ分からねぇだろ?」


「何故ならお前は八虐どもを倒した事もない弱者。経験の浅いひよっこ。そんなお前が八虐で一番圧倒的に強い俺に敵うわけがなかろう?」


その発言に駒ヶは少し苛立ちを感じた。

あと少しで世界が救える距離まで来たのに……。

最後の最後でこんな門番が立ちはだかって来ようとは思っていなかったのだ。


「クッ…………行くぞ!!」


駒ヶはそう言うと、金剛に向かって剣を振るい始めた。







 その頃、蔵王の方でも予期せぬ出来事が起こっていた。

金剛が現れて、駒ヶの暗殺が失敗した瞬間、彼はすでに行動を取ろうとしていた。

構えていた銃の引き金をあのカプセルの中にいる少女の心臓に狙いを定めていたのだ。

あとはあの二人が少し移動してくれれば、あの少女を狙撃できるのだが。

彼は二人が戦い出して位置を移動しても銃弾を放たない。


「……………」


身から冷や汗が流れ始める。

すぐ横から今までに感じたことのない様な邪悪なオーラを感じているのだ。

邪悪な邪悪なオーラ。それはまるで死を表現しているかのようだ。

彼にとってはそのオーラは至高の悦喜ではあったが、今はそんな私情を優先する場合ではない事は分かっているはずなのだが。

彼は側にいる男のせいで銃を撃つことが出来ない。




 その男は服装こそどこかの偉そうな王のようではあったが、黒をベースとした服装で、年は少年と呼べるくらいに見える。

その男はじっと蔵王を睨み付けながら、彼に質問する。


「なぁ、貴様はなぜ銃を向けているんだ?」


蔵王はその質問には答えない。


「なぁ、貴様はなぜ銃を向けているんだ?」


蔵王は再びその質問には答えなかった。


ただ無言のまま銃を向け続けている。


「我の妹になぜ貴様は銃を向ける?

どう見ても勇者ではなさそうだが」


蔵王はその“魔王の兄”と名乗る男に遂に口を開いた。


「当たり前だろ。私は勇者などではない。

ただ私の計画に魔王が邪魔になるだけ」


「計画と言うのは話は聞いているぞ。────をするのだろう?」


蔵王は急に驚愕した表情を浮かべ、男の顔を見上げる。

誰にも話したことのない秘密をこの男はなぜ知っているのかと疑問に思ったのだ。

────を知られている事に蔵王は冷や汗をかきはじめた。


「なぜ、そこまで知っている?」


「あの金剛という部下が教えてくれたのだ。

貴様は────の為に強力な魂が欲しいそうだな?

残念だが我もあと一人の魂が必要としている。

悪いがその魂。妹の復活の為に使わせて貰うぞ?」


そう言うと魔王の兄は蔵王の首を中央にして巨大なハサミの刃を開く。


「フッ、これは私の斬首台という所か?

まったく、こんな未来は見ていなかったのだがな」


蔵王はやれやれと呆れ顔になって銃を降ろした。


「しかし双子か? ほぉ、これは面白いものだな。

お前たちが双子……二人で魔王か。しかも魔王の正体がこんなガキか?」


どうやら蔵王は全てを諦めたようだ。

魔王の作った斬首台から逃げようともせずに……。

ただ座禅を組み直して座っている。


「威勢のいいやつだな。まだ我を魔王ではないと疑っておるのか?」


蔵王は魔王の兄からの問いに無言で頷いた。

すると、魔王の兄は少し悲しそうに……。


「そうか。やはり二人で魔王なんて止めておけば良かったか?」


なんて蔵王を無視して悩んでいる。そこがもう子供っぽい。

あの少女といい、こいつといい、どうやら二人とも年齢が同じように見える。

もしかしたら、この二人は双子なのかもしれない。


「まったく、そう嘆くなら神の前で嘆け」


蔵王はそう言うと、魔王の兄に向かって銃を向けた。


「我にこの魔王にその程度の玩具が効くと思うのか?」


そう言うと魔王の兄は、蔵王の首を挟んでいたハサミを手前に戻し構えをとった。

それに対して、蔵王は少し距離をとって再び銃口を向ける。


「圧倒的実力の差を見せてやろう。その程度の玩具でどこまで生きれるかな?」


「それを試すのも面白いとは思わんか?」


そう、今から始まるのは蔵王 対 魔王の兄の戦い。

世界の命運を賭けた殺し合いが今、始まろうとしていたのである。



 蔵王には考えがあった。

銃を一丁だけ持って奴の脳天を撃ち抜く。

どんな生物でも脳を撃ち抜かれれば一溜りもない。

もしも避けられたとしても、奴は必ずあのハサミが届く範囲までは近づいてくる。

そこで2発目を撃ち込めば必ず勝機はあると……。

奴は人の胴体を真っ二つに切断できるくらいの大きさのハサミを片手剣のようにして構えている。

だが、奴の場所からではあのハサミの攻撃は届かない。

長さが足りないのだ。

だから、奴は確実に走って蔵王の首を取りに来る。


「神からの罰を」


蔵王はそう言うと魔王の兄に向かって銃弾を放とうとした。




 その時、

ポタリとなにかが地面に垂れる。

蔵王は何を感じ取ったのか。その落ちた滴を見つめていた。

銃弾は発射されることなく、未だ拳銃の中に眠っている。

蔵王は遂に銃を降ろす。

先程まで殺そうとしていた相手に向けての銃口を降ろしたのだ。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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