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殺人鬼を倒さなきゃ

 「よし逃げるぞ黒!!!」


そう言って黒の腕を掴んだ瞬間。

突然、床下から何かが飛び出してきた。

そう、床下から飛び出してきたのはあの付喪神である。


「「ギャァァァァァァァァ!!!」」


急に目の前に現れた驚きと、床下を壊された驚きの叫びをあげながら、俺たちは家から飛び出した。




 俺たちが家から出ていっても、あの付喪神は俺たちの後を追いかけてくる。

前に会った時もそうだったが奴が走るスピードは速い。


「ねぇ、明山。そんなに腕を引っ張って走ってくれるなんて」


黒は顔を赤面しながら走っている。

二人で駆け出している事で、何を想像しているのか分かる気がする。


「じゃあ、あとは頑張れよ」


「ねぇ…………離すの?」


俺が彼女の腕を離そうとすると、黒は俺の腕を力強く掴み始めた。


「もう自分だけでも走れるだろ?

それにどうせ、狙いは俺だ。

俺があの逆再生をいろんな所に送ったから」


それ以外に理由と言ったら、あの時 殺し損ねたという事だけだろう。


「そうね。じゃあ、頑張ってね」


「なぁ、俺を見捨てるなんてしないよな?」


黒が俺の腕を離そうとすると、俺は黒の腕を力強く掴み始めた。




 「ねぇ、あそこ見て。あの集団ってまさか、数市から派遣された部隊じゃない?」


互いを蹴落とす様な小競り合いをしながら走っていると、俺たちの目の前には偶然、数市から派遣された部隊の姿があった。


「お前らァァァァァァァ!! 犯人を連れてきたぞ」


「ヘルプミー。ヘルプミー。助けてェェェェ!!!」


その謎の二人への反応に困りながらも、部隊の人達は犯人という言葉に反応しているようだ。




 その時、俺の頭の中にはふとあることが思い浮かんだ。

もしも、このままあの集団に助けを求めたら……。

あいつらはあの付喪神の事を知らないから、返り討ちにあって殺されるかもしれない。

そんなことが起こってはいけない。


「なぁ、黒」


「何?」


「あいつらに逃げるように言ってきてくれないか」


「まさか…………分かったわ」


そう言って黒を先に走らせると、俺は振り返って付喪神の足止めをすることにした。


「こいやぁぁぁ付喪神。俺が相手だ」


やっぱり付喪神は俺を狙っていたようだ。

俺が振り返り立ち止まると、付喪神は走るのをやめて立ち止まった。


「…………」


「五百円イン」


俺は手に五百円を握りしめると、全身を金色のオーラが覆い始める。


「黄金! 黄金! 黄金! 煌めけ輝け。

小銭最強の姿。小銭最後の一枚。

始まりと終わり。作り手と買い手。死者と生者。

全ては一つでは物足りぬ。

さぁ、その姿に懺悔し、王の力を味わうのだ。

その名は明山 平死郎。

明山 平死郎 五百円モード!!…って、

いい加減、この長い台詞を言うのも面倒だな」


五百円モードにパワーアップした後、俺は謎の付喪神に向かって拳を放つ。

その拳もどうやら付喪神には効果がなかったようで、ムニッとした弾力に威力が軽減されてしまった。


「やっぱり、このモードでもダメなのか?」


どうやってもこいつに接近戦は効果がないようだ。

剣も効かない体。

水分を奪い干からびさせる吸収力。

そして、この沢山の穴。

こんな物をどこかで見たことがある。

確か……。


「こいつ、やっぱりスポンジだ。

お前はスポンジの付喪神だな」


「………」


やっぱり返事はない。

せめて、当たっているのか外れているのか位は教えてほしいものだが。

早く戦闘を始めたいということだろうか。


「『百円ラッシュ 金』」


付喪神に向かって拳の嵐をくらわせるも、付喪神には効果がなかったようで……。

すべて身体中に浴びながら退くこともなかった。

痛みを感じないのだろうか。

まるで感情を持たないロボットの様である。


「こいつ、本当にダメージを与えられないのか?」


試しに蹴り飛ばしてみても、その衝撃を受け流して何もなかったようにたたずんでいる。

だが、こいつの攻撃方法は把握済みだ。

こいつは相手の体内に入ってスポンジに水分を吸わせスポンジを膨張して破裂。

つまりこいつは何とかして俺の体内に入ろうとするだろう。

それさえ知っておけば、ダメージを与える事はできないが、殺される事もない。




 「でも、どうする?

こいつの動きを止めないと」


ふわふわの腕で殴りかかってくるのを、避けながら、俺は考えていた。

殺害目的は俺に指定されている。

どんなに殴り飛ばしても、蹴り飛ばしてみても、俺に目掛けて襲ってくるのだ。


「俺が二刀流ならハサミみたいにして……いや刃が通らないか」


このまま何も対抗策が出ずに、戦い続けたら……。

日々、体内に入ってこられない様に生きるなんて、まさに地獄である。


「『五十円波動光線 金』」


「『十円パンチ 金』」


「『一円マシンガン 金』」


「『百円キック 金』」


いろいろな技を試してもまったく効果がなかった。




 「痛みを感じない。技も効かない。こいつは…ミハラの時とは違う恐ろしさを感じるぜ」


「………」


とにかくまずは奴の動きを止めないと……。

死なない無敵状態の敵に勝つにはどうすれば……。

そんな事を考えながらも、攻撃の手は止むことはない。

ふわふわの殴る蹴るは別に痛みを感じさせる事はなかったが、正直に言うと邪魔だ。

お互い殴る蹴るを繰り返しても効果がないのは分かっている。

だが、そんな中で相手の隙を伺っているのだ。




 こんな柔らかい敵をどうすれば倒せるのだろう。

柔らかいというのは壊れにくい。

例えば、電子機器や宝石や俺のガラスのハートよりも……。

もしも剣で突き刺す事が出来れば、あとは剣を引き上げるだけで簡単に両断できるのだろうが。

剣を突き刺すなんてできるわけが……。




 突き?

木刀でならやった事はあるが、真剣では試した事はない。

もしも突き刺せることができれば、あいつの体を突き刺して動きを止めれば、後は付喪連盟の王レベル達や、冒険者連盟の奴らが何とかしてくれるかもしれない。


「やるしかない。これ以上殺人鬼をのさばらせておくわけにはいかないんだ」


目の前にはスポンジの付喪神。

大量殺人を起こしてきた殺人鬼。

もうこんな良い場所で戦えるかも分からないのだ。




 「動きを止めるだけで良いんだ」


俺は五円ソードを召喚して構えると更に金を使い始める。

目の前にはスポンジの付喪神。

奴は逃げようとはせずに、こちらに向かって走り始める。

おそらく、俺の体内に入ろうと向かってきているのだろう。


「『一円キック 金』」


この前使ったキックを使って地面を蹴る。

この前とは違い威力は上がったので、その脚力も上がっているのだ。

アスファルトの地面に靴跡ができるほどの脚力。

まるで暗殺者が地面スレスレを蹴って移動している様な走り方。

その勢いで奴に近づく。

そして、地面に足が地面につきそうになると、再び片足で地面を蹴る。


「『一円キック 金』」


奴とはどれ程距離が離れていても良かった。

一歩の距離が遠くまで伸びるからだ。

ただ今のように周囲が住宅などの建物で覆われていなければならない。

そうすれば奴は左右に避けづらいからだ。

あとは威力が足りるかどうか。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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