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犯人を捜索しよう

 「ちょっと、これは今晩の夕食じゃないか?」

「うるさいわね。つまみ食いくらいしても良いでしょ? ケチィィ!!」

「いやいやいや、一品消し去ってんじゃん。何がつまみ食いだよ」


夕飯時、明山宅ではまたもや簀巻と黒が争っているらしい。

外まで聞こえる口喧嘩。

今日は1日さんざんな目にあって疲れているというのに……。

家に帰っても疲れる羽目になるのだろうか。


「ただいま…………」


ドアを開けて中に入っても二人は俺に気づかないのか、良い争いを続けていた。


「また、別の一品作らないといけなくなっただろうが!!」

「つまみ食いは犯罪なの? 万死に値するの?

あの時はつまみ食いを許してくれたじゃない。

なのに何で怒るのよ!!」

「なんだ? じゃあ、黒帝家ではつまみ食いを完食として教わっていたのか?」

「食べちゃったものは仕方がないでしょ。だって、お腹減ってたんだもん。トイレ掃除、洗濯疲れたし……。つまみ食いくらいしたくなるでしょ?

それに料理が美味しすぎるのが悪いのよ」


褒めているのか、言い争っているのか、こいつらはいつも争っている。

はたして、仲が良いのか悪いのか。

だが、俺はそんな光景をカフェで見慣れてしまっているのだ。


「なぁ、お前が料理担当か? 簀巻。

ならついでにもう1人分作ってやってくれないかな?」


「お客さんですか?」


英彦が椅子に座りながら、俺が帰ってきた事に気づいたようだ。

そして、それにつられて黒も簀巻も俺の帰宅に気がついたようだ。


「今夜だけな……」


そう言って俺はドアを全開する。

すると、そこにいたのは、長い金髪の女性。


「すまんな。本当にいいのか?」


「妙義じゃない!!」


黒は喜んで妙義の元へと向かい、腕を掴んで彼女を室内へとあげた。

こいつは本当に妙義が好きだな。

無理を言って彼女を連れてきて良かったかもしれない。

おそらくあの親父は「本当に付き合っていたのか」なんて勘違いするだろうな。

説明が面倒だ。

なんて、考えていると机には既に夕食が並び始めた。


「ごめんよ。妙義さん。

もう少ししたら一人分作れるからさ」


「いえいえ、気にしないで。私を待っていたらせっかくの簀巻の夕食が冷めてしまう。みんなは先に食べていて。

あっ、簀巻、私にも手伝うことはあるか?」


そう言って二人は台所へと行ってしまった。




 そして、みんなが夕食を食べ終わった後、


「なぁ、簀巻~。ちょっと気になることがあってさ。

お前の能力の力を借りたいんだけど?」


俺が簀巻にそう話しかけると、妙義は何かを察したような表情をしてきた。


「ははぁ、私の親父のことだな?

大丈夫だ。私がちゃんと女友達の所に泊まると言っておいたからな。」


確かにそっちも気になってはいたが、簀巻に頼みたいのはそっちではない。


「ちげぇよ。あの餡蜜屋の店主を襲った付喪神についてだ」


すると、二人の若者が餡蜜の部分に首を突っ込んできた。


「えっ!?

明山、餡蜜食べたの?

いいなーいいなー」


「あっ、簀巻さん。デザートあります?

明山さんの話を聞いてたら小腹が空いちゃって……」


どうしよう外野がうるさい。

その二人を黙らせる為に簀巻はデザートを差し出した。

二人はそれをまるで子供のように食べ始める。

それほど、そのデザートが美味しいのだろうか。

後で、貰っておこう。

そんな事を考えていると、簀巻はニヤニヤとした表情を浮かべて俺に囁いてきた。


「そうだな。気になる奴の何もかもを知りたいってのは、流石になぁ」


「おい、今から表に出ろや簀巻」


簀巻に殴りかかろうとするのをデザートを完食した英彦が、必死に止めてくる。

なぜだ。なぜ英彦は俺の邪魔をするんだろう。

俺にはその理由が分からない。

すると、その3人の様子をデザートを完食し終わって、長々と見ていた黒が急に口を開いた。


「ねぇ、ちょっと興味が湧いてきたから、早く見せてよ簀巻。茶番はもういいからさ」


その発言により、喧嘩は一時的に中断してしまった。

黒の発言によって話がもとに戻されたのだ。


「まっ、待って。なぁ明山。

まずはお前の記憶の中から」


すると、簀巻は机の上にひとつの大きな水晶玉を置いた。

その後、彼はまるで占い師の様に水晶玉を擦り始める。

どう見ても胡散臭い占い師にしか見えないのだが、俺は黙ってその行動を見ている事にした。


「あっ、何か映り始めたわ」


黒が興味深そうに、水晶玉を指差してはしゃいでいる。

水晶玉の中では靄のようなモノが現れ始めた。

そして、その靄の間に出来た隙間を覗いてみると……。


「あっ、俺と妙義が映ってる」


そこには付喪神と戦っている俺と妙義の姿が映されていた。


「こいつが付喪神ですか?

人にしか見えないですけど」


英彦の言う通りだ。

確かにこの水晶玉の角度から見れば、服を着たただの人間に見える。


「なぁ、簀巻。これ角度の変更とか出来ないのか?」


「悪い。今の僕にはこのくらいしか出来ないんだ」


ちゃんと角度を直して欲しかったが、本人の力不足では仕方がない。


「いいか? 今からこいつの正体を逆再生するよ」


簀巻がそう言うと、水晶玉に再び靄がかかりはじめた。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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