神の秘密
「なんなんだろう?」
この世界の仇はとったはずなのだが、何故こんなにも胸騒ぎがするのだろうか。
雲はまだ晴れていない。
奴を倒しても元の世界に戻ってきてもいない。
その時、時間切れだったのか。
五百円モードは解除されてしまった。
これでまたしばらくは戦いが不利になってしまうのだろう。
だが、戦いは終わったのだ。
後はこの平行世界からの脱出だけなのだ。
「おい、ミハラ、お前は本当に死んだんだろ?」
俺は目の前に転がっている死体に話しかけてみる。
もちろん、死体だからしゃべることはない。
だが、あまりにも呆気なさ過ぎるのだ。
奴は剣を使うだけで何も特殊な攻撃はしてこなかった。
それに弱体化している五百円モードと互角の力しか持っていない者がなぜ世界をここまで……。
「お前って鏡を平行世界に繋げるってだけの能力だったのか?
なら、なんで世界はここまで壊されてしまったんだ?」
もう一度、死体に声をかけるのだが返事は帰ってこない。
平行世界と繋げるだけで世界を、ここまで破壊できるなんておかしい話である。
これにはまだ裏があるのだろうか。
ガサガサッ!!!!
その時、瓦礫の中から音が聞こえてきた。
しかし、山口ではない。
彼は遠くで隠れているのだ。
この場所には俺一人のはずなのだ。
「誰だ?」
俺はその音がした方向を睨み付けながら警戒をしている。
やはり、誰かがいるのだ。
舞っている土煙の中で複数の人の影が映っている。
「まったく、能力も使わずに剣術で挑むなど……」
「あいつ敵をなめてかかりすぎではないか?」
「それも傲慢が故の行為だ。人間ごときに本気を出す奴がいるか?」
「落ち着くのだ。自虐はよせ。それも我の感情に沿って行動したため」
土煙の中で4人が会話をしているようだ。
こちらにまったく目もくれていない。
しかし、なぜだろうか。
全員の声が似たように聞こえるのだ。
「──なぁ、あんたらも敵なのか?」
俺は勇気を振り絞って4人に話しかけてみる。
すると、こちらに人がいることに気づいたらしい。
4人はこちらに向かって歩いてくるのだ。
「敵かと聞いたな? 人間。ならば貴様のその低能に免じて我が一つ教えてやろう。我は人類の敵といってもよいだろうな」
土煙は晴れていき、その4人の姿がくっきりと見始める。
その姿は人間のようにも見えたが、紫色でボサボサの髪、眼球の色が両目とも違い、異世界より異世界っぽい服を着てい……。
「なッ!? なんでお前が?」
その姿を見たときに声を出せないほど心の中では驚いていた。
あわてて後ろを振り返るが、もちろんそこには死体がある。
しかし、目の前にいるのは同じ顔が4人。
いまだに状況がつかめていない俺に向かって、彼らは言った。
「そうだな。簡単に言えば貴様はただの剣術相手にその衰えた力で戦っていただけだ」
「鏡が平行世界と繋げる事ができるのは、そこに鏡があるからだ」
「このように我を映して増やすこともできる」
「ここから鏡の能力を満喫するがよい。貴様を極上の劇でもてなそう」
まったく顔の同じ4人。
あれほどまで苦労して1人を倒したのに、それが4人いるのだ。




