神を引きずり下ろす者
たまに疑問に思っていた。
付喪神は何故この世界にいるのか。
何故 人と共存しているのか。何故 人と争うのか。
まぁ、彼らも生きていると言ってはおかしいだろうが、きっと性格や感情を持っているのだろう。
しかし、それは彼らの本能なのかもしれない。
人と時に反発し、共存する。
それが付喪神かもしれない。
現に今、希望の人間と崩壊の付喪神との戦いが再び始まるのである。
─────────
「いくぜ!!!」
俺は五百円モードの状態で再び五円ソードを作り出した。
そして、お互いの剣がぶつかり合う。
何度も何度も攻防を繰り返しながら剣を振るい続ける。
しかし、あと数センチの所で剣は当たらない。
奴の体を傷つけるには奴の剣が固すぎる。
奴のヴォーパールの剣を壊さなければいけない。
何よりも先に敵の攻撃手段を潰して潰して潰しまくる。
それ以外に奴との戦力差を埋める方法を俺は思い付かなかった。
「やはり、 剣を狙うか?
そうやって戦力差を埋める等と考えているのだろうが。
このヴォーパールの剣を壊せるなどと思っているな?」
「壊せるじゃない。壊すんだよ。せっかく神様が相手なんだ。俺は邪神として神を玉座から引きずり下ろす。例え、その剣が壊れなくても」
「壊す?
貴様らはいつもそうだ。
その行為が我を最も憤激させてくれる」
剣を剣で壊せる物なのだろうか。
その答えは分からないが俺は剣を振るい続ける。
それに答えるかのようにミハラも剣で防御を取っている。
お互いに引けない状況だ。剣と剣とがぶつかり合う。
もしかしたら、五百円モードになって少しは力も強くなっており、ミハラと互角に戦えているかもしれない。
「このヴォーパールの剣は至高の品物。
人類の欲望の象徴を寄せ集めて作りし、なまくらとは違うのだ。
そんな物で挑むなど自害に等しいと事だ」
「違う、確かに、昔よりも衰えて使えない物になることだってある。だが、なまくらでも鍛え続ければ立派な聖剣になることだってあるんだ」
「甘い幻想だな。貴様の運命は変わらない。
運命とは神によって決められた未来だ。
貴様がどれ程の努力をして、剣がどれ程研がれたとしても……。
神に挑んだお前には勝利と言う“運命”はやってこない。
お前にやって来るのは死だ。
我の正義に歯向かった悪には死亡という未来だけが訪れるのだ」
そう言って一向に力を抜くことはない二人。
彼らの意見が分かり合えることはない。
二人の考える正義の行いは全く等しいものではないのだ。
「運命は……未来は神が決めることじゃない。俺が自分の手で切り開く。神一人なんぞに決められてたまるかぁぁぁ!!
五円イン!!」
俺が腕に着いている装置に五円玉をいれると、五円ソードはまばゆく輝き始めた。
そして、一歩足を引く。
この行動にミハラは何かを感じ取ったのだろう。
彼は俺の側から数メートルほど離れて警戒していた。
五百五円モードの状態で俺は剣を構える。
「うおぉぉぉぉぉ!!
『五円斬 金』」
その後、ミハラを斬るために走った。
地面を一歩ずつ蹴ってミハラとの距離を縮める。
風が背中を押してくれた。
人々の想いが俺に力をくれた。
自称神を討つために、この状況を変えたいというモノの思いが俺に力をくれた。
近づいて行く切り捨てるべき存在。
しかし、奴は逃げも隠れもしない。
自分が勝てると理解しているからだ。
人間に神が負けるなどあり得ることはない。
彼はヴォーパールの剣を構える。
まるで次の瞬間、俺の敗北を予言している…そんな事を考えているのだろうか。
今度こそ俺を切り捨てるために……。彼は叛逆への罰を与えるつもりなのだ。
お互いの体が近づいた瞬間。二つの剣撃は放たれた。それぞれ1発だけ。
彼らはその後、追撃をしようとは考えなかった。
ただ、一撃にすべてをかけたのかもしれない。
そして、俺は奴を通りすぎる。
それはお互い、背を向けて立つことになるのだ。
「フッ、貴様の勝ちだ。
我がヴォーパールの剣を折るとはなぁ」
胴を真っ二つに斬られたミハラはその場に倒れ落ちる。
そして、じわじわと意識が薄れていき、眼も虚ろになっていく。
もう奴は息もしていない。
指一つ動かしていない。
自称神は死亡したのだ。




