表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/295

初めてのお忍び

 さて、王女様は無事に病院内へとたどり着いたのだが。


「──そういえば、あの人はどこの病室なの?」


どうやら王女様は患者の誰かに用があってわざわざ訪れたようだ。

だが、事前に調べることを忘れていたらしい。

病院の職員に聞くと言う事も可能なのだが、それではお忍びで来たことがバレてしまうのだ。


「どうしよう。お医者さん達に聞いたらお父様にバレちゃうかも。でも、分からないし」


王女は廊下の中央で頭を抱えて悩んでいた。

そもそも、この格好を誰かに見られでもしたら、それこそ王女だとバレてしまうのだ。

王女にとっては生まれてはじめての無断行動なのだ。


「こんな事なら、お父様に許可を得るべきだったかしら。

いや、ダメよ。そんなことしたら怒られる。

はぁ、誰か王室に連絡しないような。

連絡する暇もなく忙しくて、する方法も持たないような貧乏で、世間から離れている。無関係そうな人はいないかしら」


王女様は壁にもたれ掛かりながら、ため息をついている。

王女様はもう連絡されてしまうのも覚悟で受付へと歩き出す。

その時、王女様に声をかけてきた男がいた。


「おっ、あの時のお嬢さんじゃないですか。お久しぶりです」


彼はそう言って驚くこともなく王女様に近づいてきた。

どうも、王女様のことを王女様と理解していない様子だ。

明らかに世間から離れて生きている男である。

いつもならこんな無礼な男は側近が追い払ってしまうのだが。

今はいない。

王女様の邪魔をする者は誰もいないのだ。


「あの時の簀巻さん!!!

ちょうど良いタイミングです。

あのお願いがあるのですが」


もうこの男に頼るしかない。王女様はそう思って男に話しかけるのであった。




 とりあえず、廊下に置いてあった椅子に座り、王女様はこの場に来た目的を一通りその男に話した。


「なるほどな。お見舞い。それで、そいつの名前とか分かります?」


「それが、一瞬顔を見ただけの人だったので」


情報量が少ない事を申し訳なく思いながら王女様は俯きになった。


「──うーん。じゃあ特徴とか分かるかい?」


「あっ、特徴なら分かりますよ。えっと、目が死んでるような欲望を求めているような目で……。頭がちゃらんぽらんしてそうなのを表すような黒髪。それといってカッコいい訳でもなく普通の顔の立派な男性です」


王女様の言った特徴は明らかに悪口に近いものなのだが。

話を聞いていた男には、思い当たる人がいるらしく。


「思い当たる人が一人いるんだけど……。行ってみる?」


「はい、もちろんです!!」


これで合ってたらそいつに悪いな…なんて思いながら、簀巻は王女様を連れて元来た道を戻っていった。




 そして、簀巻は王女様を思い当たる男のいる場所まで案内する。


「──そうか。うん。分かった。それで俺の所に来たんだな。よし、表に出ろ簀巻!!」


「待ってくれ、お前だってさっき、俺の印象最悪だったじゃん。それに違うって可能性もあるだろ?

落ち着けって……。それに廊下にはそのお嬢さんがいるんだ。喧嘩は見せられない」


そう、やって来たのは明山の入院している病室。

つまり、俺の病室である。

彼の思い当たる節が俺だったというのは悲しいことだ。

俺が退院した時が楽しみだよ……。

だが、まだ俺がお嬢さんの探し人と決まった訳ではない。

まだ俺の印象が悪いと決まった訳ではないのだ。


「まぁ、会うだけなら良いぞ。そのお嬢さんも人探してるだけだし。俺じゃない可能性が高いわけだからな」


「そうだよ。お前じゃない可能性が高い。じゃあ、呼んでくるよ」


そう言うと簀巻は、ドアを開いた。




 ドアの先にいたのは金髪でロングヘアの美しい少女。

お姫様の様なドレスを着て……………。

いや、これはさっき…。とにかく、少女がいた。

少女は俺の顔を見たとたん、その紅の瞳を輝かせて内心喜んでいるように見える。


「会いたかったです。本当にここにいるなんて」


そう言って少女はゆっくりと病室に入ってくる。

だが、会いたかったと言われても俺には会った記憶がないのだが。

いや、この少女をどこかで見たことがある気がする。

たしか、護衛の時?

いや、そんなことは後回しで構わない。

問題は俺の印象が悪いという真実だ。

はぁ、何で明山平死郎の体に入っちゃったかな。

俺は久しぶりにこの世界に来たことを後悔した。


「じゃあ、僕は失礼するよ。あとは二人で……」


こんな残念な再会を見て、この場から逃げようとする簀巻を止めようとは思ったが、少女と二人っきりで部屋で話をするのも良いかもしれない。簀巻はちょうど少女と入れ替わるように病室を立ち去っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ