墓場の死神さん
その日は、久しぶりに雨が降った日である。
1日じゅう雨が降り続けており、未だに止むことはない。
「──なんだよ。本当に最後はみんなに別れの挨拶をせずにいきやがって」
墓地にはたくさんの花が供えられている。
そして、それを囲むようにたくさんの傘を差した人々が涙を堪えていた。
みんな、目の前の光景が今も信じられていないようだ。
今の彼らは声も出すことすら出来ない状態である。
「私たちが先に行かなければ……」
「…………」
黒と英彦も、心に傷ができたように悲しみの表情を浮かべていた。
妙義は、もう彼女の墓すら見れないほど悲しんでいる。
駒ヶや鈴木は、何も言わずに傘を持ってあげていた。
ヨーマやマオは、何も言わず信じられず涙を浮かべていた。
そう、みんなが彼女の死を悼んでいたのだ。
「俺の力不足なのかもしれない。死体を見ても分かった。あれは一瞬で起きた出来事だ。
死神さんでも……。まさか、こんなことが……」
店長は、悲しみを堪えるために下唇を噛んでいる。
「──行こう。これ以上ここにいたら、風邪をひいてしまう」
鈴木さんは、みんなの事を心配して、全員に声をかける。
すると、みんながその場から離れていこうと背を向けたのだが、一人だけその場から動かない者がいた。
「もう少し居させて。彼女が寂しがっちゃうじゃない」
「おい、黒行くぞ。もしも死神さんを襲った奴がまだ俺たちを狙っていたらどうするんだ!!」
泣きながら答えた黒に向かって、俺は怒りをあらわにして言い放つ。
もちろん、黒に本気で怒ったわけではない。
自分の力不足に苛立ちを覚えて、ついカッとなってしまったのだ。
その迫力に怯えて黒の目からは、涙も出なくなった。
「だって…だって…」
それでも、
「ほら、もう行くぞ。安心しろ黒、死神さんの仇は俺が取ってやるからな」
そう言い聞かせて、俺は黒を引き連れてみんなの元に戻っていく。
空ではもう雨は上がっていた。
墓地の空の上を大きな虹が覆っている。
それはもう、美しい虹であった。
場所は変わり、ここは都会の一角。
ビル街が雨に打たれながら、雲に覆われている。
その1つの屋上で、1人の者が雨に打たれながら携帯で全員にメールをしていた。
『全てのエルタ様親衛隊に告ぐ。エルタ様からの指令だ。
その1 あの女を確保。
その2 王レベルなどの敵戦力を減す。
その3 鍵の獲得候補者の殺害。
1つでもこなせなかったらそれは失敗を意味する』
1人の者はメールを一斉送信すると自分自身も行動するために町に降り立つのであった。




