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狂人信仰者・センテネル(narou)

 「うっ…………う~ん~」


頭が痛い。

今は何時でここは何処なのだろうか。

センテネルは意識を取り戻したようだ。

彼はゆっくりと目を見開いてみる。


「──ここは、資料室?」


周りの棚にたくさんの本や書類がおかれている。

そして、彼は椅子に縛られて身動きをとることが出来ない。


「ヨォ、目は覚めたか?」


すると、入り口のドアから4人の修道士達が入ってきた。


「なぜ?」


「なぜって頼まれたからだよ。神父様が子供たちとの別れにお前を参加させるなってな」


もうそんなに時間がたったのか。

だが、彼は止めなければならない。

子供たちを行かせてはいけないのだ。


「なぁ…ほどいてくれよ。子供たちの移転先ってのはな……」


「あ? 知ってるよ。全員パルバット一族の6世の所だろ?」


センテネルは衝撃を受ける。

なぜ彼らはそれを知っていて止めなかったのだろう。


「まぁ……少し落ち着けって、夜になったら会いに来てやるから。楽しみにな」


1人の男はそう言い残すと、センテネルを椅子に縛り付けたまま、その部屋を出ていった。




 さて、一方その頃。

町の病院の病室では…………。


「あの~あなたがエトナくんですか?」


先程の少女がひょっこりと少年の目の前に現れたのだ。


「そうですけど、あなたは?」


「妾は───と言います。あなたをスカウトしに来ましたと言っても怪我が治るまで待たなきゃだけどね」


少女は少年の側にやって来ると、彼のベッドの上に座った。


「ねぇ……君はどうして僕をスカウトしに来たの?」


「妾達は部下や同士を探しているんです。

君には素質があるの。私たちの部下である幹部…八虐に入らない?

バックに巨大な組織が着くから命令さへ守れば、何でもOKなんです」


「───もしも入ることができたら世界征服も出来るかな?」


「そりゃ…………きっと出来るよ!! 妾は応援するよ?」


「じゃあ、あっ、ちょっと待って。最後にお別れを言わなきゃ…」


「修道士さんにかな? 大丈夫、まだお別れを言う時じゃないから。妾を信じて?」


「……分かりました。じゃあもう1ついいですか?」


「なに?」


「僕は虫が好きなんです。だから、魂を虫に移動するとか出来ますか?」


「えっ????

その体を捨てるの? なんで!?」


彼は少女のために服を脱いでその体を見せた。

少女はその体を見て、悲しく切ない気持ちになってしまう。

彼の両親は何を思って彼を孤児にしたのだろう。

こんなに酷い病気……感染症だろうか?


「この体は世界の支配者としては醜いです。だから、支配者になるならもっと強くならなきゃいけないんです」


「ありゃ…………確かに虫籠の能力なら蟲を操っていろいろと出来るけど。身体はどうするの?」


少女からの問いに少年は少し考えて、「それは、死体の皮でも被ったりとかどうです?」と以外と恐ろしい事を考えていた。


「君……なかなか恐ろしいね~。でも死体ってのは優しいねぇ。だけどね、魂を移した後のあなたが今の性格かは分からないよ?

ショックで性格が変わって全てを喰らい尽くすかも」


「その時は……僕を殺してください。出来ますよね? あなたほどの力があれば……」


「押し付けかぁ~。でも良いよ。私も頑張ってみるから」


少女は少年を見て悲しそうに呟く。

少年は本当に人間をやめてしまうのだ。

簡単に人間を投げ出せるほど、楽なものではない。

それなのにこの少年は、世界征服のために……。

少女はその事にとても感動して感情が高ぶっていく。


「それじゃあよろし…ゴハッ………!!」


思わず、吐血してしまう少女。


「大丈夫ですか?」


「うん、妾ね。ちょっと昔やらかしちゃって、人の魂を喰ってないとすぐに体調が悪くなるの。でも最近ますます回復が酷くなるのよね~」


「それはお気の毒に……」


「さ~妾の事は気にしなーい。それより覚悟はいいんだね」


「はい」


「君には虫籠の付喪神をプレゼントしまーす」


そう言うと少女は虫籠の付喪神を少年と契約させる。

そして、少女はベッドの上から立ち上がると、少年の手を取る。


「──それじゃあさようならエトナくん」


少女は彼の両手を握ると呪文のようなものを唱え始める。


「個は変動せよ。姓は夢と共に。肉は別物とかせ。主よ許したまえ。授かりし血肉は再構築せよ。『魂の移動ソール・ムーブメント』………………」




 少女の目の前から少年の姿が消える。

どうやら無事に魂の移動は成功したようだ。

少女はひと安心し、彼のいたベッドの上に座る。


「それじゃあ、こんにちは魔王軍幹部のエトナくん。いやエトナさんかな~?

どっちでもいいや。強いなら~!!」


少女は無邪気に笑うと、病室を出ていった。




 「………………………。

……………………………………ッ」


目が覚める。

なんだか、身体の動かし方が変だ。

そして、今より前の記憶が思い出せない。

俺は誰だ?

羽を震わせ、足を動かし空へ。

なにか体の代わりを見つけなければ…と考えるはずのない脳が本能的に教えてくる。

このままでは鳥に食べられて死んでしまうのだ。

仕方がない。あそこで寝ている少女の体でも使わせていただこう。

不思議と罪悪感は湧かない。

寝ている間にまず苦しまないように脳を喰う。

そして、完全に殺した後、内臓を食べつくし皮だけにすればよいのだ。

羽音をできるだけ出さずに近づく。

なぜこんなことをしているのかって?

俺には野望があるからさ。世界征服をするために魔王軍の幹部になったのさ。

それ以外はうっすらとも思い出せない。

だが、かまわない。みんな俺に力を貸せ…と言えば蟲たちは命令通りに動く。

一匹一匹が自分の細胞のように自由自在。

叫び声など興味もない。

喰らう喰らう喰らう喰らう喰らう喰らう喰らう喰らう喰らう喰らう喰らう喰らう喰らう喰らう……………。




 時刻は夜になった。

教会の資料室に閉じ込められていたセンテネル。

そんな彼の前に再び修道士達が現れたのもその頃である。


「………」


「どうした? 長時間座らせられてぐだっちまったか?」


「「ハハハハハハハ!!!」」


また、やつらは私を笑い者にする。


「あっ、そういえばお前の大切な仮面を見つけたぞ。ほら、被せてやるよ」


1人の修道士があの仮面をセンテネルに被せる。

少しの視界しか見れない。


「なぁ? 見えるか? ほら、見えないだろ?っと!!!」


体におもいっきり蹴りを喰らった。

仮面のせいで周りが暗くよく見れない中、数人の修道士によって、あらゆる方向から蹴りを入れられる。


「ほらよっ!!」「くたばれ!!」「ほら、もう一発だ!!」「ほらやり返せよ。ほらやり返せよ」


蹴り殴り蹴り殴り……。

私の手は縛られていて反撃もすることが出来ない。

どうせ、何をいっても止められることはない。

毎日のことだ。今回は手を縛られていているだけだが…。


……………。

苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い。


ブチッ








 殴られる中、何者かが廊下を走っている音が聞こえる。

その音の主はこの部屋へと大急ぎで入ってきたようだ。


「大変だ。神父が礼拝所で惨殺せれていたぞ」


「「「…………!?」」」


その目撃した修道士によると、神父の首は遠くの壁にもぎ飛ばされ、右手は真上を向き吊らされ、左手はなくなっており、足はグルグル捻れていた…………そうだ。


「おいおいおい、いったい何があったんだよ」


「化け物にでも襲われたのギャッ……………」


 その瞬間、修道士の1人が頭から天井に突き刺さる。


「「「……………」」」


その光景を見た瞬間に他の修道士達はその場から一目散に逃げ出した。

目の前にいた1人が殺されたのだ。

彼らはパニックになり大声をあげながら教会の中を走り回っていた。


「「「逃げろォォォォ!!!!

センテネルからみんな逃げろォォォォ!!!」」」




 椅子は引っ張られる力に耐えきれずに四方八方へと散らばった。


「ハハハハハハハッ、愉楽 愉悦 満悦 快感 快楽 享楽 悦楽 快適 恍惚 忘我 法悦

逃がすわけがないのです。もしもあなた方が神に愛されているというのなら、助かるかもしれませんね」


センテネルは高笑いをしながらこの教会内にいる者たちを探して捜し回る。

これが抑えていた彼の本性なのだろうか。

その仮面は修道士達の血に染まり、奇妙な仮面はよりおどろおどろしい。


「火炙りは紅蓮の炎の中で煉獄への片道切符ぅぅ。あぶれ浴びれぇぇぇ」


彼はポケットからライターを取り出すと、火の付いたまま廊下に落とす。

廊下のカーペットに広がっていく炎は、周囲を一瞬のうちに包み込む。


「ハァ~~最高!!!」


センテネルは見つけしだい、修道士達を殺していく。

セロハンテープを使って無理矢理に、痛々しく。

彼の人生を壊してきた者達を少しずつ少しずつ。

本当に踊り出したい気分だ。

こんな幸福感は久しぶりだ。


「アヒャヒャヒャヒャ~。ホッホッホゥゥゥゥ」





 静まり返った教会。

炎で物が燃える音が耳に響いてくる。


「…………」


センテネルはふと何もない壁を見つけた。

窓も絵もないただの壁なのだが、何かが寂しい。


「そうだ。いいことを思い付きました」








翌朝、火事の連絡を聞き付けて教会へとやって来た消防隊。

生存者がいるとは思えないが、彼らは念のため教会内を探索することにした。

彼らが中に入ると死臭の臭いや物が焦げた臭いで充満している。

正直、今すぐにでも帰ってベッドにくるまりたい程おっかないのだが。

彼らは仕事上仕方がなく、生存者を捜索する。


「こいつはヒデェ…………モンスターでも入ってきたか?」


「いや、これを見てみろ」


消防隊の1人が驚愕の表情を浮かべながら、とある方向を指差した。

その方向には壁があり、血で文字が書かれている。


『上層部への下剋上。by真ルイトボルト教』と大きな文字で書かれているのだ。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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