妙義の本気
一方、こちらは妙義 対 センテネル。
先程のリベンジマッチである。
センテネルはセロハンテープを巧みに操り、
妙義の体に貼り付こうとするのだが、それも切り刻まれて失敗に終わる。
「ならば、『50円波動光線』」
センテネルは明山から奪った能力を使い、妙義に攻撃を仕掛ける。
「!?」
驚きながらも妙義はそれを避ける事はできていた。
「どうだ? 私は更にたくさんの能力も使える。
お前たちのせいで、先輩は死んでしまう。
お前達が護衛に来たからだ。
だから、償ってもらう。懺悔するんだ。
先輩の前で首だけの状態でな」
いかにもセンテネルの覚悟はとてつもなく大きなモノに変わっていた。
「その忠誠心は素晴らしいと思う。だが、私は王女様を守るのが仕事だ。仕事はこなす、何があっても」
妙義もセンテネルにあわせて覚悟を決めた。
妙義は剣を振り上げた。
そしてそのまま、しばらく動かなかった。
「何をしているのですか?
隙だらけですよ。それこそが敗北 敗退 死亡 への道ィィィィィ。これで終わりですね。さようならです」
そう言うとセンテネルは妙義に確実にトドメを刺そうと、セロハンテープで背後から襲うことにした。
だが、妙義はただ動かないわけではない。
「終わっていない。ハァァァァァ!!」
妙義は叫んだかと思うと、気合いをいれて剣を地面に振り下ろす。
すると、地面はまるでモーゼが神に頼んで切り開いた海のように、地面を割った。
そして、その衝撃波はセンテネルの体を貫く。
「グハァァカ!?」
逃げることが出来なかったセンテネルはそう断末魔をあげると、その場に崩れ落ちるように倒れた。
「私は既に…最初から負けていたのですか。
実に堕落 堕落 堕落 堕落 堕落 堕落 していたのは、もしかしてこの私だった?」
センテネルは空を見上げながら呟く。
センテネルは既に、最初の黒との戦いで体の血を大量に失っていた。
もう戦えないほどまで衰弱しているのだ。
「我々は…あのお方に…。我らの神話の神様に会えることは出来なかったのですね。
我らに愛を…。恐れ多き程の小さな愛を…。
我らの心臓は…真っ赤に流れる肉体は…。白く遅れた骨は…。あなたに会えますか?
神よ。私はいつもあなたを崇拝していた。
あなたの為に尽くしてきた。
親愛なるルイボルト様…。
それなのに…それなのに…。
会いた…………い」
そう言いながらセンテネルは静かに目を閉じていった。
その頃、どこかのお屋敷の一室。
「八逆が4人も……………フッ、面白いな。これで時代が変わる…。新しい時代が始まろうとしているのだ。安心しろセンテネル…。後の仕事は俺が引き継いでやるよ。だから…安心するといい。今は何も考えない方がいい」
薄暗い部屋の中で、王女護衛中に起こった惨劇を一人の男は知っていた。
「失礼します。あの人からの連絡です」
召し使いがドアをノックしてから部屋の中に入る。
「そうか。それはありがとう」
そう言いながら椅子から立ち上がり、電話を取りに向かう男であったが、
「………そうだ。君、あの人とは誰だい?
何故、その人を知っているんだい?」
召し使いの顔色が悪くなっていく。
「お前、今までの電話履歴を聞いていたのではあるまいなぁ?」
そう言いながら召し使いの肩を軽く叩く。
「いいえ」
青ざめた顔を必死に隠しながら召し使いは質問に返答した。
「そうか。悪かったな。もう行ってもいいぞ」
男は何にも疑うことはなく部屋から出て行く。
ドアが閉められた後、召し使いはその場に座り込んだ。
バレなかったという安心感を味わっているのだ。
召し使いが安堵の息をついた。
その時である。
「なんだ? これは?」
召し使いの掌には赤い物体が静かに動いていた。
ドクンッ、ドクンッ
まるで脈拍を打つように赤い物体は動いていた。
「これは心臓だ。でも、誰の心臓なんだぁぁ?」
そう言いながらふと、自分の胸に手を当てると……。
「これは……。俺の心臓だ。 俺の為の心臓だァァ。」
そう言いながら、その召し使いはゆっくりと力尽きていった……………。




