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センテネルとの戦い

 一方、その頃。

森の中では俺と黒の前に、センテネルが立ちはだかっていた。


「おや、あなたはルイボルト教なのですね?

ならば、私の敵。これは神からの試練か?

時代に追い付けず堕落した古き教え。

それを新たなる時代に栄えさせようと言う。私の信仰心がどうして…どうして分からないのですか!?」


「うるさいわね。あんたに神が味方すると思ってるの?

勝手に教えを変えて何が信仰心よ。

ただ一人の思考のために宗教があるわけがないのよ」


3分ほど、黒とセンテネルの言い争いを俺は離れて見ていた。

どうやら二人は対反する宗教同士らしい。

古き教えと新しき教えの戦いである。

とても重要な戦いなのであろうが、ただの口喧嘩にしか見えないのは俺だけなのだろうか。






 遂に2人の宗教論の言い合いが始まる。


「信者が減れば宗教も減る。全ては人の信じる心なのです。

信じる者が減少 少数 離脱 している教えに誰がついていく?

必要なのは新しきモノ。新品 新章 新人 なのです。

なぁのに……なぁのに何故、あなたは止めるのですか?」


「正直、あなたが信仰しているだけなら止めない。でも、あなたは新教を理由に人々を苦しめた。宗教とは人を救うものよ。つまり、あなたは道を外れたの。そんなあなたに私が神に変わって天罰を下してやるわ。覚悟しなさい。神を語った罪と私の私怨のために……。」


黒はそう言って戦闘準備を整える。

その表情からは、慈悲の余地など一切ない。

変えられない殺意。怒り。

黒はまるで、弔い合戦でもするかのような勢いである。

そんな黒に対してセンテネルは、


「同じ神に従える者として戦うのは不満でしたが。いいでしょう。返討 恐怖 絶望 後悔 懺悔 悲境 を授けてあげましょう。神のため…全ては神のためにィィィィィィィィ」


発狂しながら答えたセンテネル。

彼の顔は仮面で隠されているため余計に不気味に見える。

今、因縁の戦い?が始まろうとしているのだ。




 すると、黒は俺の方を見ながら、


「明山さんは戦えないんだからそこで見てて」


いきなり、衝撃的な発言を放った。

俺が戦えないなんてあり得るわけがない。

体調不良でもないし、睡眠も取った。

小銭だって持ってきたのだ。

そんな俺に黒は戦えないと言ってきたのだ。


「おい、何言ってるんだよ」


こんな時にでも冗談を言う黒にはさすがの俺も驚いてしまう。

しかし、黒の表情は変わらない。


「今の明山さんの体からは付喪神の力が感じられない。既にやられた後なのよ」


そう言いながら黒はセンテネルを指差した。

肝心のセンテネルは自身の指からセロハンテープを垂らしている。

ニタァッと笑顔を見せるセンテネル。

センテネルはこちらを向いて見下すような笑みを浮かべた後、そのセロハンテープを自身の腕に貼り付け始める。




 そういえば、以前、真ルイボルト教の刺客に襲われた時。

付喪神の能力を与えられたという男がいた。

そして、王レベルの会議ではギバーズという付喪神との契約を助ける職があると聞いた。

信じたくはないが、もしかして敵は今……。


「あいつ、俺の付喪神の能力を使えるのか?」


センテネルはその答えを言うかのように、再びニヤリと不気味な笑みを浮かべた。


「これで分かったでしょ。早く離れててよ。シッシッ!!」


黒が俺を追い払うようにアピールしてくる。

完全に邪魔者扱いである。

しかし、今の俺では無駄死にしてしまうのも明らかなのだ。

黒なりに俺を助けようとしているのだろうが、俺にはもうそんな選択肢はない。


「そんなのごめんだ。自分の能力くらい自分で取り返すさ」


俺は一歩前に出た。

例え、ピンチでも諦めたくはない。

例え、目の前で戦うのが黒であったとしても、1人で戦わせるなんて危険だと思うのだ。

しかし、そんな想いとは裏腹に、今度はキツく発言しようとする黒だったが、俺はその口を止めさせる。


「!?」


黒は驚いた表情を浮かべた。


「俺は戦えないが、サポートくらいは出来る。

もう少し俺を信じろ。なんたって俺は明山 平死朗だからな」




 「『50円波動光線』」


その時、いきなり言い覚えのある名前が俺の耳に入ってきた。

そして、森の中を激しい光線が進む。


「なっ!?」


一瞬、判断が早かったおかげで、俺達はその技を避けることができたが。

光線は木々を焼き払い、焼け野原を広げてしまった。


「あの野郎。もう使い慣れてやがる」


改めて自分の技を見ると恐ろしいものだ。

今までに倒してきた奴らはこんな思いをしていたのだろうか。

少し申し訳なく感じてしまう。

しかし、今の俺たちにはそんな事を考えている余裕はない。


「いいか? 値段が高くなる度に強くなるからな。今のみたいに、その小銭だけの技もあるから注意しておけよ」


「知ってるわよ。そんなの…。あんたの技なんだから」


俺は起き上がろうとするが、足を怪我してしまったようで動きにくい。

避けた時に捻ったのだろうか。足に痛みが走る。

こんなに人間の体は弱かったのだろうか。


「だから、言ったじゃない」


そう言いながら黒はセンテネルの元に向かっていった。

俺はただそれを見ていることしか出来ない。

結局、俺はただの足手まといにしかならなかったのだ。


「センテネル。あなたのせいで沢山の罪な人が犠牲になった」


そう言いながら黒は引き出しから槍を取り出すと、それをセンテネルに向かって投げつける。

槍は真っ直ぐとセンテネルを目指して飛んでいく。

しかし、その槍をセンテネルは避けようともせずに、ただじっとしているのだ。

槍は既にセンテネルの目の前に迫っていた。




 すると、意外なことが起こった。

黒の投げた槍が空中に止まっているのだ。


「そんな、なんで?」


障害物は何もないのに槍が空中に浮いている。

だが、それは正確には障害物はあったようだ。


「私の能力は、貼り取って貼り付けるだけではない。貼る事も可能なのですよ。

クモの巣にかかった蟲のようにあなたの槍は宙に引っ掛かっているのです。

あっ、例えが先輩に失礼だったかな?」


そう言いながらセンテネルは槍を外そうと手を出したのだが…。




 少し、槍を止めていたセロハンテープを外しただけ。

ただ、それだけである。

しかし、槍は勢いよく真っ直ぐと先程までセンテネルがいた方向に飛んでいったのだ。

速度は完全に消えていたはずの槍は真っ直ぐと森の外へと飛んでいったのだ。


「そんな、それほどの威力だったと言うのですか?

ならば、危なかったと言うことですね。

回避 避難 無事 逃避 忌避 素晴らしい事です」


センテネルの額を冷や汗が流れ落ちる。

あの仮面の下にはどれくらいの焦り顔を見せているのだろうか。

だが、ホッとしたのもつかの間。


「よそ見してるわよ」


黒からの攻撃は終わっていなかったようだ。


「『機関銃 鉄霙血花 六十七砲』」


黒は地面に沢山の機関銃を設置している。

標的はもちろんセンテネル。

しかし、センテネルは驚く様子も見せず余裕そうに……。


「無駄です。セロハンテープの能力で銃弾は全て私に当たることはない。無謀 無駄 無力 なぁのですよ」


だが、そんなのやってみなければ分からない。

黒はセンテネルを指差すと、大きな声をあげて叫んだ。


「撃て!!」


そして、機関銃から大量の銃弾が放たれ始める。




 まるで激しい地震でも起こっているかのように轟音が森に響き渡る。

大量の銃弾がセンテネルの方向に向かって撃たれているのだ。


「にゅっニャにィィィィィィ」


センテネルの貼ったテープは、銃弾の雨によって今にも限界に達しそうである。


「これも、あれも、全て、全て、全て、全て、全て、全て、全て、全て、全て、全て、全て、全て、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、全部、みんなの怒りだァァァァ」


流れ弾は何度も木に反射して、木を倒していく。

そして、3分後。

全ての弾を打ち尽くし、機関銃は使えなくなってしまった。

再び森に静寂が訪れたのだ。

かつてセンテネルがいた場所には道ができ、森の外まで続いている。


「はぁ…はぁ…」


黒は機関銃達を引き出しにしまうと、ほっと吐息をもらした。







 しかし、土煙の中から現れた1人の男。


「残念でしたね。あと、数発で……。私の生命活動を止められたのですよ。でも、もう無理なようですね」


血だらけのセンテネルが立ち上がった。

どうやら、テープは限界に達してしまい、剥がれてしまったようだが、まだセンテネルは生きている。

黒はそれに気づき、その場から離れようとしたのだが。

体にセロハンテープが貼り付いて身動きが取れないのだ。


「私とした事が、やられたわ」


「あなたと戦えて良かったです。この出会いを…運命を創っていただいた。神に感謝です。

感謝…感謝…感謝…感謝…感謝…感謝…感謝…感謝…感謝…感謝…感謝…感謝…感謝…感謝…感謝…感謝…感謝…感謝…感謝…感謝…感謝…感謝…感謝………。

それではぁ…終わりですよ」


センテネルは身動きが取れない黒に近づいていく。




 黒の目の前に来たセンテネルは、ポケットから百円を取り出すと、黒の頭に狙いを定めた。

絶対に逃げられない距離。

確実にトドメをさせる位置。

俺の能力を持ってしまったセンテネルは百円玉でも、人を殺すには容易い。


「それでは最後はあなたの仲間の能力で終わらしてあげますよ。これが神からの愛です」


「うるさいわね。この狂者」


黒はそう言うとセンテネルを睨み付けた。


「狂者ですか? そうです狂者ですよ。

それでは決別 訣別 離別 拝辞 退去ですよ。

では、これで終わらせます!!」


そう言うと予告通り。

センテネルは百円を黒の頭に投げつける。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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