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襲撃開始

 ここは山の奥。

そこには何人もの人だかりが出来ていた。

彼らは双眼鏡を使い、停められた馬車を見ている。

その中にいた独りの少女が哀れむような目で惨劇を見ていた。


「まったく、異常な程の好奇心は身を滅ぼすと言うのに」


「どうしたんですか? まさか同情していないですよね先輩…? いいですか。今さら止めることなど出来ないんですよ。既に私の可愛い信者達が控えていますし……。王女を殺すのは我々への神からの試練なんですよ。

試験 努力 結果 挑戦 目標 命令 神罰 慈悲 なんです」


そう言いながら二人の男達は双眼鏡を覗きこんでいる。


「神に仕えた覚えはねぇよ?

それより、こいつらはな。王女の体が欲しいらしいんだ。貰っても構わないよな?」


「もちろんです。では、作戦 計画 指令 開始です」




 場面は再び、俺たちの馬車に戻る。


「なぁ、明山。何だか外が騒がしくないか?」


妙義は何かに気づき窓の外を覗く。


「そうか?」


その時、俺は黒が図書館で借りて来た本を読んでいた。

確か、題名はルイトボルト神話伝とか言う本である。

その事に気づいた二人。


「へぇー。明山も興味があるの?」


「明山さんも興味がおありだったんですね」


黒と死神さんから輝かしいほどの期待の目を向けられてしまった。

二人はルイトボルト教信者なのだろうか。


「いや……ちょっとだけ面白そうだったから。

そんなことより妙義、何か変化でもあったか?」


俺は二人の視線から逃げて、妙義に話を振る。


「ああ、先頭の方で何かあったようだ」


そう言うと妙義は剣を手に取る。


「なら私も着いて行きます」


そう言って、死神さんも大鎌を手に取る。

いったい、いつ持ってきたのかは分からないが、それはガチの大鎌である。


「じゃあ、二人は中にいてくれ」


そう言うと妙義達は馬車から出ていった。




 二人がいなくなった後の馬車の中。

俺たち二人は取り残された気分に浸っていた。


「…………なぁ、黒。俺たちって何で来たんだっけー?」


俺はとある事に気づき、わざとらしく黒に質問する。


「それはね。王女様の護衛に推薦されたのよ」


そんな俺の態度にイラつくこともなく黒は真面目に答える。

俺は外の状況を知りたくて窓の外を覗いてみると……。

確かに、先頭の方向で人々が慌ただしくしていた。


「なぁ、黒。何で先頭の方で騒ぎが起きているんだろうか?」


「そりゃ簡単よ。ダミーよ、ダミー。騒ぎを集中させて王女様警備の手を緩めるつもりなんじゃないの?」


呑気な口調で答えた黒であったが、


「────ハッ!! もしそうなら。王女様が危険だわ。行くわよ。明山。」


そう言うと黒は俺の手を掴み、外へ飛び出す。

相変わらずどこからこんな力が出てくるのか分からない。

しかし、黒も状況のヤバさに気づいてくれて良かった。




 「蟲だぁぁぁ」

「真ルイトボルト教だぁぁぁ」


今、既に先頭の方で乱闘が起こっている。

羽音。剣の交える音。叫び声。

凶暴な蟲が人を襲いながら空中を飛んでいるのだ。

そいつらは大きさも様々で普通の蟲のサイズもいるが、犬ほどの大きさの蟲もいる。

種類も様々でとても異形であった。

そして、真ルイトボルト教の信者たち。

彼らは、強制的洗脳された者と自分から信者になった者もいるが、どちらにも共通するのは付喪人だということだ。

そんな二つの勢力に襲われる護衛隊達。


「くそっ……何でだよ。付喪神の能力が使えない」


困り果てた数人の付喪人達は仕方がなく素手で戦おうとするが、そもそも力ある付喪人相手に敵うわけでもなく。


「誰か! 援護してくれ」

「代わってくれ」


そう言いながら隙を見て逃げ出そうとする者もいた。

しかし、彼らが見逃すはずもないのだ。


「慈悲 惨殺 処刑 殺戮ゥゥゥゥ」


襲いかかる信者の攻撃を避けることは能力の無い付喪人には出来るわけがない。


「やめて~」


「終演、終了、諦め、絶望、死亡」


1人の能力無しの付喪人に真ルイトボルト教の信者の魔の手が迫る。

剣を掲げ、目を見開いたその姿はまるで戦場にいる処刑人。

そいつは慈悲もなく、感情も出さず掲げていた剣を振り下ろす………。

能力無しの付喪人は恐怖のあまりにその目を閉じた。

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今回の話もどうかあなたの暇潰しとして役にたちますように…。 気に入っていただけたら是非評価でもポチッと押していただけませんでしょうか。モチベーションに繋がりますので…。星1でも構いません!! ★これ以外の作品☆付喪神の力で闘う付喪人シリーズ
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