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第四回 襲撃

7. 7月13日(金)午後


 青海島で「私どんぶらー。今青海島にいるの」をやってから島を出て、今度こそGさんのお店、その近くに取った宿へ。

 宿のチェックインは午後3時からだが、2時に着いて無理言って荷物だけは置かせてもらった。

 この宿。実はGさんお勧めで、縁があるらしい。「これからGさんのお店に行くんです」というと、「あぁ、あのカレー屋さんね」と応えてくれた。

 そして、この宿のある町「Judas(仮)」(さすがにこの辺りからGさんの個人情報にピンポイントで触れてしまうので、ボカします)からGさんのお店まで、JR線の一駅。だが。

 「宿から駅まで歩き、駅からお店まで歩く」のと、「宿からお店まで歩く」のは、どちらが近いだろう? 宿の人に聞いたら、同じくらいだという。なら電車で行こう。そう思って歩き出し、適当な場所からまずGさんの活動報告に「私どんぶらー。今Judasの街にいるの」と書き込んだのち、Gさんのお店に電話をした。


 ……電話に出たのは、若い女性の声だった。


 誰だ? Gさんのお店は、Gさん一人で切り盛りしているって聞いたのに? はっ、印税か! 印税で若い女の子をバイトに雇ったな?


 そう思い、内心パニックになりながら、「○○(私の本名)です。マスターをお願い出来ますか?」と告げた。


「失礼ですが、どういったご用件でしょうか?」(今これを書いていて気付いた。セールスの電話と思われたのだろう)

「今日の午後お邪魔する約束になっております。〝たかあきら〟と告げていただければわかると思います」

「あぁ! 少々お待ちください」(今日の襲撃について、ご存じだったようで。考えてみれば当然だけど)


 そして電話から響く、Gさんの声。

 当然ながら初めて聞く肉声だけど、やはり初めてという気はしなかった。でもはじめてには違いないから、「はじめまして」と挨拶したら、「あ、そういえばそうですね。初めましてって気がしないけど」と笑われてしまった。

 で、これから襲撃する旨伝えたら。


「駅から店まで、かなり歩くから。それならまっすぐ歩いた方が早いと思うよ?」


 そして炎天下、辺境の盆地を歩いた。……熱中症で倒れるかと思った。というか、暑さで思考回路が麻痺しており、その路線にバスが走っていることに気付きもしなかったのだが(笑)。


 そして意識が朦朧(もうろう)としながらも、そのお店を発見。

 遠慮なく踏み入り、窓際のテーブル席に腰を下ろした。


 このお店。食べログなどの口コミサイトでは、上位に出てくる「知る人ぞ知る」有名店。辺境県で「カレー屋」で検索しても見つけられるほどの、絶品のカレーとこだわりのコーヒー。そして何よりも。


 私が腰を下ろした席。口コミサイトによると、そこはお店に住まうぬこ様の指定席なのだという。ここに座る客は、ぬこ様の下僕になることが確定しており、ぬこ様のお世話をしなければならない義務が発生するのだという。


 そんなネット上の話を聞いて、他の席に座ることなど、出来るだろうか?(いや出来るはずがない)

 けれど残念なことに、その日、ぬこ様は姿を見せなかった。何という事だ! つまり、私はぬこ様に合う為に、もう一度この店を訪れなければならないという事か! え? Gさん? ぬこ様に比べたら、Gさんなどどうでもいい!


 ともかく。

 腰を落ち着け、マスターに「はじめまして、たかあきらです」と挨拶をし。

 「この店に来たからにはオールセット(カレー、サラダ、コーヒー)を注文しない訳にはいきません」とオーダーを済まし。Gさんの活動報告に「私どんぶらー。今お店の中にいるの」と書き込みをし。


 そして、カレーが来て、マスターは対面に座り。


 それから気付くと3時間。長々と話し込んでしまったのでした。

 なおこの会話の内容はオフレコ。さすがに色々ヤバいネタも含まれていたので。

 ただ、「自覚しない天才っているんだなぁ」としみじみ。いやぁ本人は、自分は凡人で、適当に不真面目にやっているだけだって言い張っていますけど、凡人がやることと同じことをやって凡人と違う結果を出している以上、才能の証明以外の何物でもないでしょうに。けれどはっきり言えることは、活動報告や感想返信で見られる卑屈なまでの自己低評価は、(少なくとも創作面に於いては)素であるということ。うん、あのままの人柄だったんだよ?

 ちなみに、カレーはやっぱりお取り寄せより現地で食べた方が美味しい。一旦冷凍されたモノをミルクで解凍する所為なのか、それともワンポイントのうずらの卵が効いているのか、或いは絶品コーヒーがマッチするのか。そしてフルーツサラダ。マスター曰く、「皆(こぼ)すから気兼ねしないで」って言うくらい、地球の重力に喧嘩を売るレベルで盛り付けられていた(笑)。


 午後6時過ぎ。たらふくカレーを食べて、お腹いっぱいになったところで「宿の夕食の時間だから」とお暇することに。私はどんだけ腹ペコキャラなんだ?

 帰りも、頑張って徒歩で。うん、これが良い腹ごなしの運動(わんもあせっと)になると思ったのでした。

 けれど、残念ながら。宿の夕食を完食することは出来ませんでした。っていうか、宿! 美味しいけど量も多かったんだよ? 次に泊まるときは、ちゃんとお腹を空かせて……って、この町に来るときは、Gさんのお店に行くことが確定しているから、お腹を空かせて宿の夕食を食べることは出来るのでしょうか? それは、今後の課題ということに。


 追記。電話に出た「若い女性の声」は、Gさんのお母様だった。……本当に、若い!

(2,232文字:2018/07/17初稿 2018/07/23投稿予約 2018/07/27 09:00掲載予定)

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