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ハムスター駅長  作者: 曠野すぐり
第2章
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第2章 (6)


女性はもう一杯、お湯割を作る。器用に、水筒から熱湯をフラスコに注ぐ。

「あぁ、さえない。枯れすすきって言うんでしょ、あの一面。寒々しいわよね」

 と、ガラスの向こうの景色を見ながら、呟くように言った。


「はい。でも一歩引いた味があるんですよ。それともお酒呑むと見方が違うんですかね」

 羽祐はちょっとだけ返答にトゲを含ませる。

「あら、お客さんにあんまりな言い方じゃないの」

「お客って…。知ってますよ、あなたの正体。本社の事務の人なんでしょ」

「えっ、誰から聞いたの?」

「誰だっていいでしょ。こんなローカル駅の待合室で晩酌してればイヤでも広まりますよ、噂が」

「ふぅん。でも勤務時間外なんから、立派な客よ」

「まぁ、たしかに、そうですね」

 すこしたじろぎながら、羽祐が答える。女は酒が入っても物腰は柔らかく、迷惑がかかっているわけではない。むしろこの駅に、華やかな印象を与えているはずだ。


 そして、こうやってポンポンと言葉をやりとりできるのも、羽祐にとっては大きな気分転換になるのだ。ある意味貴重な時間だった。

  

 女性は今度、小さい水筒を出した。同じ銀色の保温が効くタイプだが、中身が違った。

 コップに注がれると、ワインの豊かな香りが広がった。

「いいでしょ、ホットワイン」


 羽祐は小部屋に入って荷物からタッパを取り、差し出した。

 なに? という目を、女性は向ける。

「昨日作ったつまみが余ったから持ってきたんです。直箸で取ってないですから食べてください。いつも呑むだけでしょ。食べながらの方が体にいいですよ」

「え、ありがと。でも羽祐クンも呑むんだ」

「家で、ちょっとですけどね」


 ワインの香りに誘われたのか。巣に戻った駅長が起きて顔を覗かせた。

「駅長さん、正面から見ると丸顔ね」

 女性がつまみを食べながら、笑みを浮かべた。

 


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