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魔法世界デ魔法ナシ  作者: ヴァニ
第1章
8/16

フィリス=フィールの過去

 


「おぬしはどれだけあの少女のことを知っておるのじゃ?」


 と対面に座るイリーネはシュウに問いかける。


「正直な話……全くと言っていいほど……」


 シュウは手のひらを上にあげ首を横にふる。 

 そうシュウはほとんど彼女、フィリス=フィールのことを知らない。


 ―封印されたという左目

 ―アウラに助けろと言われた理由

 ―大きな屋敷に長年一人でいたこと


「フィリス自信にも聞いたが、はっきり言って謎が増えるばかりだった」


「そうじゃろうな、あの娘も自分自身のことをよくわかっておらぬのかもしれぬ」


「イリーネさんは知ってるってことだよな?」


「あの娘のことは結構有名じゃからな、少なくともおぬしよりは知っておるのはたしかじゃな」


「少しでもフィリスの情報が知りたい頼む、教えてくれ」


 とイリーネはコップを手に取り口に運び一息つくと話はじめた。


「まずあの娘の故郷からじゃがここからそう遠くない場所にあるアナリア王国の城じゃ。フィリスはその国の王女じゃ。ちなみにじゃがここもアリアナ王国の領域じゃ」


「――!フィリスが王女?」


「そうじゃ」


「なんで王女があんな場所に一人で!」


「先ほど魔法の話をしたのう」


「ああ属性の話だな」


「おぬしはあの娘、いくつ属性を使えると思う」


「おれの知ってる限りでは火と水だから二つか?」


 イリーネはシュウの前ですべての指を広げる。


「――まさか? 五つか!」


「最低五つじゃ」


「最低ってどういうことだ?」


「フィリスは幼い頃から五つの属性を扱えたと聞く、じゃが幼いフィリスは属性がなんなのか理解もせずに魔法を使っておったそうじゃ。幼くして五つの属性を使うフィリスに魔法のエキスパートを呼び集め魔法のテストみたいなものを行った、じゃがフィリスがだした魔法の中にどの属性にも当てはまらない魔法があったそうじゃ。見た者の証言じゃと黒き魔法だったと言われておる」


「黒き魔法……」


 シュウはそれを聞いて頭の中でなにかがひっかかるようなような気がした。


「詳しくはわしもわからんのじゃその場にいたわけではないからの、わしも見れるのならみてみたいわい」


 とイリーネは残念そうに語る。


「それでじゃ、それを知ったフィリスの父親がフィリスに黒き魔法を使わせその魔法を解明しようと実験を行ったそうじゃ、じゃが実験は失敗、城の大半が吹き飛ぶほどの大爆発が起きたのじゃ、しかし重傷者はでたものの死人はでなかったのじゃ」


「フィリスは無事だったのか!?」


 シュウは爆発の中心にいたであろうフィリスの身を心配する。


「フィリスはケガ一つ負っておらんかったらしい、その場にいた父親それに二人の魔法研究者たちも軽傷じゃったと聞く」


「なぜなんだ?」


「フィリスの母親。名をフィアナ=フィールという。彼女は最後まで実験には反対したそうじゃ、彼女は娘に心の傷を負わしたくなかったんじゃろう。すべての魔力を振り絞り大爆発から人々を守ったのじゃ。しかしその代償は少なくはなかった。命をけずり魔力を使い果たしたフィアナはこのようなことが起こらぬようフィリスの体に細工をしその後息を引き取ったと言われておる。そして、この事件に父親は自分の娘を怒り恐怖し、国の隅の屋敷に閉じ込めたというわけじゃ」


 シュウは無意識に右手を握りしめていた、フィリスのことを思うと無性にいらだってくる。


「ぶん殴ってやりてえやつが二人に増えたな」


「一人はだれのことじゃ?」


「アウラだよ」


 とシュウがいうとなるほどといった顔で笑うイリーネ。


「で、フィアナがした細工ってのが左目に関係してるのか?」


「うむ、彼女がなにをしたのかはわかっておらんがその時からフィリスは左目を閉じたままじゃったそうじゃ。さらにその後フィリスが黒き魔法を使うことはなく、謎のままじゃ、フィリスはそのとき起こったことすら覚えてないと聞いておる。ただフィリスがわかっていたのは母親が死んだ……ということだけじゃろう」


「フィリス……つらかっただろうな」


「今は明るく見せているが心の底ではずっと泣いておるのかもしれんの」


 この世界は彼女にどれだけの試練を与えるのだろうか、幼くして母を失い、父親に恨まれ、一人屋敷に隔離され、さらには命まで狙われる。自分がその立場なら生きてる意味すら問いたくなるだろう。


 シュウの中でフィリスを守るという気持ちがより一層強くなったのを感じる。


 ――いままではアウラに言われたからという義務のような気持ちも確かにあった、だが今はフィリスにこの先幸せになって欲しい、いやなるべきだ、もうこれ以上不幸を重ねてはいけない。自分がそばにいる限りは……。


 とそこへ、


「ばあ、大変なのです!」


 と勢いよく扉あけ息を切らしたリンが入ってくる。

 リンの表情を見てただ事ではないと察したイリーネ。


「どうした!?」


 息を整えながらリンが話し始める、


「最初はちょっと大きめの犬型の獣が迷い込んだかと思ったのです。だけどフェアリー達を襲いはじめたのです。僕フェアリー達を助ける為魔法放ったのです、すると頭が三つになってさらに大きくなったのです」


「三つの頭をもつ犬型の獣じゃと!」


 イリーネの顔色が変わり勢いよく立ち上がる。


「間違いないんじゃなリン」


「リン姿消して戻ってきたですけど、匂い覚えられたです。もうすぐこっちにくるのです」


「まずい! シュウおぬしはフィリスを連れてここから逃げるんじゃ」


 四人のもとに三つの頭を持つという獣が迫る。




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