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魔法世界デ魔法ナシ  作者: ヴァニ
第1章
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森の中へ

 


 屋敷をでて数時間は歩いただろうか、日はいまだ沈んでいないためそこまでの時間は流れていないと思うがいまだに誰とも会えずにいた。


「なあフィリスこの道どれだけ長いんだろうな」


 目の前に見える道は延々と続いていた。しかし一向に先が見えない。

 見えるのは木々に囲まれた道のみである。


「フィリスも家からでたことないからわかんない」


 ――そうだよな。何年もずっと家にいたんだもんな……。わかるわけないよな。

 と二人は歩き続ける。しかし、人がいる場所なんて以外と簡単に見つけられると思ったが甘かった。

 疲れはそれほどないのでまだまだ歩けるが、代り映えのしない風景にあきたといったところだ。


「疲れてないか?」


 シュウはまだ10歳くらいのフィリスが歩き続けで疲れていないのか気に掛ける。


「まだまだ平気だよ」


 とシュウの顔を見て微笑む。

 その笑顔を見てすこし気が紛れてきたシュウはフィリスの横で歩幅をあわせながら進む。

 しばらくするとフィリスが駆け足で先に行き、


「シュウ道が分かれてるよ?」


 シュウもフィリスに追いつき確認すると左右に分かれT字路になっていた。

 まっすぐに進めなくもないが木々が邪魔をしているため非常に進みづらそうなのでわざわざ真っ直ぐ行く必要はないだろう。


「さてどっちが正解かね」


 シュウはポケットに手をつっこみながらフィリスの方を見て、


「フィリスどっちに行きたい?」


 フィリスに丸投げすることにした。


「う~ん。こっち!」


 と右の道を指さした。


「なんでそっちなんだ?」


「なんか気のせいかもしれないけどこっちに誰かがいそうな気がする」


 ――絶対気のせいだろ。

 いやまさか本当にそんな力があるのか?

 と少し疑いつつも、


「よし!じゃあそっちに決定!」


 ――まあは正解なんてわかんないしいいか。

 とフィリスの決めた方に進む。


 再び歩きだしたシュウたちが進んでいくと目の前に広がるのは……あたり一面の木々。しかし道らしきものはある・・だがいわゆる森だろう。


「さて……戻るか」


 シュウはフィリスのほうを見てそう言うと、


「ええ~! 行こうよ」


 何もわからない森に入るのは危険、そう即座に判断したシュウだったがフィリスは以外にも進もうと意見した。


「フィリスよ。森は危険なんだぞ。回りは木だらけ方向もわからなくなる、そしてなにがいるかわからん」


 シュウはフィリスを説得する。

 自分が元いた世界の森とは同じとは限らないし、はっきり行ってこういう場合は迷いの森だったとかいいだすパターンだ。嫌な予感しかしない。


「じゃあ行ってみよう!」


 とシュウの顔をみて晴れやかに言う。


「あの……フィリスさん? 人の話聞いてます?」


 シュウはなんでそうなる……といった感じでがくっと頭を落とす。


「だって、戻っても選ばなかった方の道の先も森かもしれないよ?」


 まさかの正論が飛び出してきてシュウは驚いた。確かにそうかもしれないだが違うかもしれない。しかし戻って確認する手もあるわけで……だが、


「フィリスが決めた道にいくと決めたわけだし行こう!」


 と考えるのをやめた。


「やったね。入ろう入ろう!」


 うれしそうに森に入りたがるフィリスをみてシュウは思った。


 ――もしかして入ってみたかっただけかもな……と。


 二人は未知の森に進む。入ってみると予想どおりあたり一面が木と足元には草が生い茂っている。いまのところきれいな花が咲いていたりはしない。まさに茶色と緑の世界へようこそって感じだ。


 ――まさか木や植物が襲ってこねえよな。

 ここが魔法の世界であるなら想定外のことも予想しないとな、と警戒をしながら進んでいく。

 しばらく進みつづけてしまってからシュウはふと後ろを振り返って気付く。


「フィリスすまん。これ迷子になるわ」


 やっちまったとそんな顔をしているシュウにフィリスが、


「え? なんで?」


 とシュウの方を見て顔を傾ける。


「たぶん入ってきた場所には戻れん」


 はやくも方向がわかなくなってきていた、入るときにはあった道らしき道はとっくにない。目印をつけながら進むべきだったと後悔しても遅く、いまから入ってきた場所に戻れといわれても自信がない、うかつにももうそれほど進んでしまった。


「ん~でも、最初から迷子みたいなもんだし」


「まあそういわれるとそうなんだが」


「それに――シュウがいるから大丈夫でしょ」


 フィリスはいつものパターンでシュウを見て微笑む。

 ――どんだけ信用されてんだおれそんな大層な人間じゃないぞ。

 とフィリスの顔を見ていると、


「ん?なんだ?」


 フィリスの後ろの奥のほうで何かが動いているのが見えた。


「どうしたのシュウ?」


「いや、奥のほうでなにかが――!」


 いる! 何かが飛んでいる。ここから見えるだけでも大きくはない、むしろ手のひらサイズくらいだろうか人の姿に羽をはやしたものが飛び回っていた。


「よう……せ……い?」


 フィリスも後ろを振り返りシュウの見ている方向を向き出しじーっとみていると、


「あ……フェアリー族だ」


 と発した。フェアリー族? っていうかこれも呼び方まんまかよ。と突っ込みみたいのを抑えて、


「フィリス、フェアリー族って今遠くで飛んでいるあれのことか?」


 と二人はしゃがんで気付かれないように小声で話す、


「うん見るのは初めてだよ。家にあった本にのってたの」


 本に載ってたって……そんな本あったのか……。失敗したと反省する。

 情報が一番欲しいのに本という物を思いつかなかったことに。


「でフィリス、その本には何て書いてあったんだ?」


「んとね、フェアリー族は珍しく、めったに見ることができない、気付かれるとすぐ逃げてしまいどこかへ消えてしまう謎の多い種族であるぞ、って書いてあったの」


 ――あるぞ、ってなんだよ! しかも全然役にたたない情報だなおい。

 ていうかもしかして、


「続きはない?」


「うんこれだけだったの」


 ――その本書いたやつちょっと連れてこい。

 と怒りがこみ上げてきたシュウだったが、そんな本に怒ってる場合じゃないとすぐに冷静になる。


「とりあえず、危険はないみたしせっかくだから近づいてみるか?」


「うんもっと近くで見てみたい」


 と二人は近づいてみることにした。

 しゃがんだままそこら中にたつ木に隠れながらゆっくりと近づいていく。

 しかしお決まりのように、足元から音を発生させてしまう……。

 その音に二人は音の発生源に目をやる。ちょっとした小枝を踏んでしまった。しかし問題は、


「あっ!」


 音が出た瞬間踏んでしまったフィリスが声を発してしまったことだった。

 フィリスが両手でいそいで口を塞ぎ、二人揃ってフェアリー族がいる方へ再び目をやると、


「―――!!」


 こっちを見て驚愕の顔をしているフェアリー族と目が合う。

 するとすぐに後ろを向き逃げるように飛んで行ってしまう。


 二人はすぐに追いかけようするがしゃがんでいたことと進路を木々が邪魔をしている為とあっという間に見えなくなっていた。


「シュウごめんね」


 と申し訳なさそうな顔でシュウにあやまるフィリス。


「別に気にすんな。フェアリー族を近くでみるのを失敗しただけだ、たいしたことじゃない」


 シュウはそう発するとしゅんとしているフィリスの頭を撫でる。


「どっちにしろ迷子なんだ。フェアリー族のいった方向に歩いて行ってみようぜ」


 フィリスはシュウの言葉に慰められたのか沈んでた感じがなくなり、


「うん」


 と元気に返事をした。


「しかしあのフェアリー族、一瞬しか見えなかったけどかわいかったな。すげえ驚いてたけど」


 見た感じやはり性別は女だろう。髪は茶色で長さは肩ほどだった。遠くで見た感じで予想したのとかわらず手の平に乗るくらいの大きさだった。


「ねえねえフィリスは? フィリスはかわいい?」


 とかわいいという言葉に反応したのか、シュウにすごい勢いで聞いてくる。


「おう、フィリスはかなりかわいいぞ」


 お世辞とかじゃなく素直に答えた。金髪のきれいな髪に片目だけだがぱっちりしている目。元の世界にいたらけっこう目を引くだろう。


「えへへ」


 いままで一番うれしそうに笑っているフィリスをみてシュウもなんだかうれしい気分になる。

 そんな会話ををしながら歩いている二人にとてつもなく大きな木が二人の進路を塞いだ。


「でっけえなあ」


「おっきいねえ」


 と二人してその木を見上げる。頂上が見えないくらい高く、横は大の大人20人くらいはあるだろう。と、


「ん?」


 なにかに気付いたシュウはフィリスに木の丁度中心くらいを指さす


「なあフィリスあそこなんか変じゃないか?」


「え? どこ?」


 フィリスはシュウの指さす方向を見ているが全く気付かないようだった。

 ――いやでもおかしいあそこだけなんか歪んでいる。

 シュウは地面にある小さな石を見つけてその場所に投げてみる。


「よっと」


 すると石が吸い込まれるようにその歪んだ空間の場所から消えていった。


「えええ!」


 シュウが行う行動を黙ってみていた。フィリスも声をだして驚く、


「今のなに? なんで石が消えたの?」


「わからん! だが……」


 シュウは黙って腕を組み考えると、

 たぶんそういうことだろうと答えを出した。、

 ――フィリスに見えてないのはなぜだかわからんが、


「フィリスちょっとそこで待ってろ」


 そういうとシュウは木に近づき登り始める。たいした高さの場所ではないためすぐについた。するとその歪んだ空間の場所に触れてみる。すると、


「やっぱりな」


 手が通り抜ける。それをちょっと離れたところで見てたフィリスが、


「えええ!」


 と驚いてこちらを見ていた。そのままシュウは手を抜いて今度は顔を入れて中をのぞいてみると、

 ――やっぱりか。

 と確信を持った。シュウは一度木を降りてフィリスのもとに戻るとフィリスをいきなり抱きかかえ、


「フィリス行ってみるか?」


 とフィリスに問うと、


「え? どこに?」


 と終始驚きっぱなしで理解のできていないフィリスにシュウは、


「フェアリー族がいるところ」


「行けるの?」


「ああ!いってみようぜ」


「うん!」


 シュウはフィリスをお姫様抱っこのように抱きかかえ木に登り歪んだ空間の場所にたどり着く、


「ここを通ったら離れ離れになってました、とか洒落にならないからこのままいくぞ」


 一応中をのぞいて確認したから大丈夫だろうけど、念の為に。


「うん。えへへ」


 フィリスは嬉しそうに返事をし、それを聞いたシュウは、


「せーの」


 と大きな木の歪んだ空間へ入っていった。






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