出立
自己紹介を済ませた後二人は……。
火の消化作業をしていた。
ライドが唱えた魔法によりキッチンに炎が燃え広がっていた。
「フィリスそっちは消えそうか?」
「うんまかせて」
フィリスは火に両手を向け魔法を唱える。
「ウォルナ!」
フィリスが唱えると水がいきよいよく噴き出し火を消していく。
フィリスがいなかったら間違いなくあきらめてた。
――魔法っていいな。
とシュウは心の底から思うのであった。
すべての火を消し終わるとシュウは、
うむよくやった。とフィリスをみてうなずいた。
フィリスはそれにどうだ!といった顔で答えた。
「ふむえらいえらい」
シュウはフィリスの頭に手を置きなでる。
「えへへ」
フィリスはうれしそうに笑う。
――しかしよく生きてたな。
と火を消し終えたキッチンをみて改めて思う。
シュウが戦っていた場所付近の地面が真っ黒でえぐれていた。天井まで黒くなっている。
それほどすさまじい魔法だったことをものがたっていた。
「もう一度くらっても生きてる自信ないわ……」
――もう二度とあいつとは会いたくねえな。
だがいやでも会うことなる気がする。必ず殺しにくるとかいってたし……。
しかしリザード族って……まんまかよ。
ふう……と腰を下すシュウ、だがゆっくりはしていられない。
いつまた誰かがくる可能性は捨てきれないのだから。
「フィリス」
シュウの近くで一緒に座っているフィリスに問いを投げる。
「なあにシュウ?」
――なんか呼び捨てで固定されてるなまあいいか……。
「いろいろ聞きたいんだが、あいつがなぜフィリスを襲ってきたかわかるか?」
「ん~んわからない。あのリザード族いきなり家に入ってきたの。隠れてたんだけど見つかっちゃって、魔法で攻撃してみたんだけど効かなくて逃げていたらシュウが来てくれたの」
――狙われた理由はわからないか。
「しかしよく俺が抱きかかえたとき嫌がらなかったな。おれも敵かもしれなかったんだぞ?」
「う~んそれはね。いきなりでてきて驚いたけど……でもなんかシュウは全然嫌な感じがしなかったんだよ?それに暖かかった」
とシュウの目を見て微笑みかける。
「ふむ」
――まあ直観みたいなものなのかね。
「ここにはフィリス以外誰が住んでるんだ?いまフィリスしかいないみたいだけど?」
誰かがいれば間違いなく姿を現していたはずだろうが、その気配はまったくなかった。
「フィリスだけだよ?朝料理してくれる人がきてごはん作って帰って行っちゃうの。」
「なに!」
シュウはまさかの答えに驚愕し、いるべきであろう両親のことを聞いてみる。
「お父さんとおかあさんはどうした?」
「お母さんは結構前に死んじゃった……。お父さんは何年か前に会ったっきり会ってないよ」
――うん。もっと掘り下げて聞きたいところだったがいまは……やめておこう。
「すまん」
「なんであやまるの?」
「いやあやまらしてくれ……」
とシュウは座ったままフィリスに軽く頭を下げた。
「でフィリス次はその……目のことなんだが。言いたくなかったら別にいわなくてもいいぞ」
「別に平気だよ。目は昔お母さんが、まだ開けちゃダメだって……。魔法で開けなくされてるの。理由は……フィリスにもわからない」
――目が魔法で開けられない?まだ?間違いなくなにかあるのは確かだな。
アウラがこの子を助けさせた理由も関係あるのか?
「ねえシュウ?」
フィリスは考え込むシュウを見ながら話しかける。
「なんだ?」
「フィリスも聞いていい?」
「いいぞ?」
「どうやってあの場所に来たの? なんで助けてくれたの?フィリスの名前も知ってたし……」
顔を傾けながらなんで? なんで? という感じの顔をしながら聞いてくる。
「それはだな。神様に頼まれたのよ。フィリスが危ないから助けてくれって」
隠す必要はないと思ったので真面目な顔で真実を話すシュウ。しかし、
「本当は?」
フィリスはシュウの顔をのぞきこみ片目の赤い瞳で見つめてくる。
――やべえ……信じてねえ。本当なんだが……。
シュウは少し上を見て考えた後、
「俺が一瞬でフィリスの前に現れたのも神様がやったことだし、フィリスの名前もその神様が教えてくれたんだぞ?」
とフィリスに説明する。
「う~ん。――わかった信じる」
――疑いの表情をしていたが信じてくれたみたいだ。
無理やり信じ込ませるような形になったが嘘はついてないのでまあいいとしよう。
―この世界の異変とはなにか?
―ライドがなぜフィリスを襲っていたのか?
しかしわかっていたことだが疑問だらけでなにもわからいままだ……少しでもわかるとこの先楽なんだが。まあ今度アウラの奴にあったら聞いてみるか……。あれ? どうやって会う? もしかしてもう会えないのか? くっそ神だかなんだか知らねえが会えたらとりあえずこの件の分もふくめて一発ぶん殴ってやる。
「シュウ?」
フィリスは黙り込んで考えているシュウに心配そうに話しかける。
「ああ……悪い悪い」
まだまだ聞きたい事があるが……。
「とりあえずこのあとのことなんだが……すぐにでもここからでるぞ。あいつがフィリスを襲いにここにやってきていることからこの場所は危ない」
とシュウは立ち上がろうとするが、
「それはできないの……」
というフィリスの言葉に動きをとめた、
「なぜ?」
「この家の周りは結界が張ってあるの?たぶん私がでれないように……。昔ここからでようとしたことがあるけどダメだったの」
――なるほど……大体わかってきたぞ。フィリスはここになんらかの理由があって閉じ込められている形か……。もしくは守られている?しかし、
「フィリスその問題はたぶん大丈夫だ。」
「え?」
フィリスはシュウを見て首をかしげている。
「よーく考えてみろフィリス、おれはまあ別としてあいつは、あのリザード族はどうやってこの家に侵入してきたんだ?」
フィリスはしばらく考えこむような表情をしていたがしばらくするときずいたように声を発する。
「あっ!」
そう間違いなく奴は結界を破壊して入ってきたはずだ。だとすると結界はもうない。薄い可能性だが俺と同じようにきたという可能性は空を飛んでいったことからないと思える。
「というわけだフィリス結界はもうない。必要なものをもったらいくぞ」
「うんわかった」
とフィリスとシュウは二人同時に立ち上がり準備にとりかかった。
数十分後準備を済ませた二人は外へでる扉、いわゆる玄関の前にたっていた。
シュウはフィリスが準備している間に武器を探し回ってみたがみあたらず地図やコンパスなども探したのだが見つからなかった。ライドが置いていった剣はフライパンが抜けなく使い物にならなかった為、見つけたのは前よりさらに短いナイフのみ。返り血の付いたシャツも変えたかったが男もののサイズのシャツも見当たらなかったので軽く洗い落としてそのまま着ることにした。フィリスも荷物はそこまでなく小さなリュックを背負っているだけだった。
「さていくか!」
「うん!」
――しっかしでけえ家だな……。
外にでて振り返るとかなりでかいこれはむしろ家というより屋敷といった方がいいだろう。
予想通りフィリスの言う結界はなかった。
――やはりライドとかいうやつが壊したと考えるのが無難だな。
とりあえず人がいる場所にむかうことにしたわけだが……。
「フィリス」
「なあに?」
「道わかる?」
「ううん?全然わかんない」
――だよな。
二人は木々に囲まれた道を歩いて屋敷を離れていった。
この後二人は見事に迷子になる。