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魔法世界デ魔法ナシ  作者: ヴァニ
第1章
2/16

いきなり

 



「おいいきなりこれかよ! なんて場所に送りやがったあのやろう!」


 そう発言した少年の目の前には片手に長さ一メートルほどの剣を持ち、いかにも人を食べそうな二メートルくらいはある竜? トカゲが人間になったような生物がたって少年を睨んでいる。少年は、


 ――間違いなくこいつは敵だな。

 と判断した。


「なんだ小僧、突然あらわれおって!」


 少年は後ずさりをしながら、


 ――げっやっぱりしゃべりやがった

 いきなり現れた俺に警戒してやがるのか? とりあえずまだ攻撃はしてこなそうだ。

 とその隙に周りを見渡す。


 ――ここは建物の中の廊下か?


 そして真後ろに10歳くらいの小さな女の子がいること気づいた。


 ――“背中までのきれいな金髪の髪に左目が閉じている“聞いた通りだ。

 少女はいきなりあらわれた少年を見て驚き立ち止まって少年を見ていた。


「この子か! 間に合った!」


 そう言い少年はすぐさま行動にうつった。

 とまどう少女を抱きかかえその場から走りだす。

 少年は推測するこのリザードが少女を襲いそれから逃げていたのだと。


「え!?」


 抱きかかえられた少女はなにが起きているかわからない表情で少年をみている。

 だが不思議といやがる素振りはなかった為スムーズに事を運べた。


「ちくしょう! これからどうする……」


 半袖の白シャツに黒いズボンの制服姿でいきなりこの世界にあらわれた少年の名前は 狭間シュウ(はざましゅう) 。 

 少女を抱えて走りながら少し前の出来事を思い出していた。





 ××××××××××××××××××××





 いつもの学校の帰り道。真夏の暑い日だったが太陽はでておらずなぜか空が異様に暗いが夕立でもくるのかなとそこまで気にはしていなかった。はやく帰ろうと急ぎ足で家にかえる途中ふと空がさらに暗くなる。


 ――この空は暗すぎじゃないか?


 そう思った瞬間だった。すさまじいスピードであたりが闇につつまれていくがそのとき闇の進行が止まる。突然の有り得ない出来事にシュウは動くこともできずにいた。


 ――なにが起こっている?!いったいなんなんだ。


 そう思っている瞬間、体が足先から消えていった。


「は? え?」


 次々におこる出来事に完全に混乱していた。

 しかしどうなっていると思う間もなく意識が遠のいていった。



「ここは……どこだ?」


 次に意識を取り戻したのはなにもない真っ白な世界だった。

 あたりを見回し状況を整理する。


 ――たしか家に帰る途中……空が真っ黒になって……包まれて……体が消え始めて……あれ? そのあとどうなったんだ? 俺は死んだのか? 夢……なのか?


 状況を理解できぬままでいるシュウの目の前に突然少年が現れた。

 見た目は白髪でシュウの身長は170センチ、それより20センチくらいは低いので150センチくらいか歳は12.3歳くらいの少年に見える。


 少年は手をのばしいきなりシュウの胸に手の平を当てる。


 シュウは目の前に次々と起こる驚愕の出来事に動くことができずにいた。

 そしてその少年が口を開いた。


「目を覚ましたようだね。 さてすこし時間がないんだ早急に事を進めなきゃいけない。

 僕の名前はアウル。君の世界でいう神という存在といえばわかりやすいかな?」


 いきなり自己紹介をはじめた少年は驚きを隠せないままでいるシュウに話し続ける。


「さて、悪いんだけど君には今の状況を短時間でわかってもらわなければならない。

 君の世界は今にも崩壊を始めようとしている。僕はそれを止め君をここへ呼んだんだ。

 わかったかな?」


 シュウは腕を組み頭にクエッションマークを浮かべながら、


「は?世界が崩壊?」


 一生懸命頭を働かし状況を把握しようとするシュウだが、アウラと名乗る少年は焦るように話を進める。


「いきなりいわれても信じられない気持ちもわかるけど信じてもらうしかない。そこですぐにでも僕が言っていることを信じてもらえるように少し君の話をしてあげよう。君の名前は狭間シュウ。年齢は17歳。両親はすでに他界。冷静沈着であり頭脳明晰であるが実力をだしたことはない。運動神経もいいがこれまた全力をだしたことはない。そして左手がたまに異常にうづくときがある」


 シュウは左手に目をやりながら、


「おまえ……左手のことまで……」


 シュウは自分のことを事細やかにに説明するアウラに再び驚愕する。さらに左手のこと、これはシュウは誰にも話したことがなかった。。


「僕が初めて会った君のことをここまで知っている、これは僕が神という存在だからだよ。信じてもらえたかな?」


 アウラはシュウの顔をほほ笑みながらのぞき込む。


「アウラ?だっけか?一つ聞きたいんだが」


 シュウは微笑んでくるアウラに視線をそらさず問いかける。 


「なんだい?」


「おれは死ぬのか?」


 まだ完全にアウラという少年信じたわけではない、だがこれだけは聞いておきたかった。


「このままだとね。君だけでなく君の世界の全員が死ぬことになるだろうね」


「……おまえの話を信じるとなると世界は崩壊するらしいがなぜ崩壊しようとしている?」


 いきなり崩壊するといわれてもはっきりいって信じられない。


「簡単に説明しよう。僕は君の世界の神ではない。君の世界にも神はいてその神になにかがおきた。そのとき君の世界は崩壊をはじめた。君が最後にみたことは覚えているかい?」


 シュウはここにくる寸前の記憶を思い出し、


「ああ覚えている。空が暗くなっていきなり闇が襲ってきたんだ」


「そう。そして僕は応急処置として先ほどいったように君の世界の時間をとめ君をここに呼んだんだ」

 

 なるほど、闇がとまって自分の体が消えていったのはアウラというこの少年の仕業ということか。シュウは聞いた話を整理し浮かび上がる次なる疑問を聞いてみる。


「その話がすべて事実だとしてだ。なぜ俺なんだ?」


 当然の疑問だ。何億といる人間の中で自分がここに呼ばれている優秀な奴なら自分以外にもいくらでもいるはずなのだから。


「うんそうだねそこは疑問に思うだろう。しかしその質問には答えられない」


 思わぬ答えが返ってきた。


「なんでだ?」


「その説明はとても長くなる。しかしいまは時間がないからね」


「時間がないからってそこは省略しちゃいけないところだろ……」


 とアウラの予想もしない返答にシュウは呆気にとられる。


「その答えは僕が話さなくてもそのうちわかっていくから大丈夫さ」


「意味がわからねえよ……」


 シュウは座り込み険しい表情をしてアウラを見るがアウラはおかまいなしに話を続ける。


「さて悪いんだけど話をすすめさせてもらうよ、君をこの世界に呼んだその理由なんだけど……僕の世界にも異変が起きているんだ。このままだと君の世界と同じく崩壊する。」


 シュウは睨むようにアウラを見る、


「そんなのおまえがなんとかしろよ。神なんだろ?」


「神にはできないことだらけなんだよ。それにいまは君の世界の時をとめ君をこの世界に呼んだためにほとんど力をつかってしまってるんだ」


 ――神なのにできないことだらけって……こいつ本当に神なのかよ……ていうかなんでこいつは俺の世界を救ってくれてるんだ?

 シュウの疑問はつきなかった。


「そこで君にお願いだ。実は僕はここから動くわけにはいかないんだ。しかしすでに僕の世界にも異変が起きていてたくさんの人々が死んでいる。このままでは僕の世界も崩壊を待つしかない。君にはこれを止めてもらいたい。これは君の世界を救うことにもつながるんだ」


「それはおれにできることなのか?」


「君だからできると思っているから君を呼んだんだよ」


 ――無理に決まってんだろといいたいところだが……。


「ここでおれが断ると当然おれは自分の世界に戻り、世界は崩壊し、死ぬってことだろ?」


「理解が早くて助かるよ」


 そうにっこりと言い返す。


 ――やっぱりな……。

 ……とシュウは重いため息をはいた。


「つまり俺には二つの世界がかかっていると?」


「そうなるかもしれないね。少なくとも君の世界は君にかかっている」


 ――なんでこんなことになってんだよ。俺なんかにかかっているとか……かけるやつ間違ってるだろ……。


「すまないけど考えてる時間はもうないんだ」


「わかった。いくよ。そうするしかないんだろ」


 選択の余地はないだろう。

 要はなにもせずに死ぬか、多少でも抗って死ぬかだろうな……。なら抗うにきまってる。


「よかった君ならすぐそういってくれると思ってたよ」


 再びアウラは微笑む。いままでで一番いい顔に見えた気がした。


「でおれは右も左もわからない世界でどうすればいいんだ?」


「まずは一人の少女を救ってほしいんだ。名前はフィリス・フィール。特徴は“金髪で左目があいていない”実は時間がないというのは彼女の命はいまにも消えかけている。とりあえず今すぐにでも助けに行ってほしいんだ。その子を死なせるわけにはいかない。そのあとのことはとりあえず君にまかせる。というわけでさっそく……」


 アウルは座りこみ胡坐をかいているシュウに両手をむける。


「え?もういくのか?ちょっとまてまだ全然話が……」


 立ち上がりあわてるシュウを無視してアウラは自分の世界におくる準備をする。


「悪いけど一刻を争う、それぐらい彼女はいまピンチってことなんだ」


 シュウの体に光が覆っていく。


「最後に僕の世界を紹介しておこう名前はセリート。僕の世界は君たちの世界とは違う。大きな違いは君たちの世界でいう魔法がある」


「なんだと!」


 ――魔法の世界かよ……。


「それときみは魔法はつかえない。僕の世界の住人とはすこしばかりつくりが違うからね」


「ふざけんな! それはもっと前にいうべきだろ!」


「ごめんごめん。でも言語だけは伝わるようにしてあるから許してね」


 そういうとアウラはシュウにむけてにっこりと笑うのだった。


 ――てめえ確信犯だろ……。

 そう口にしようとした瞬間シュウは転移されていった。





 ××××××××××××××××××××





「アウラのやろういきなりこんな状況の場所によこすなら戦う力くらいよこせっていうんだよ」


 少女を抱え赤い絨毯が敷き詰めてある廊下を走るシュウは当然後ろから追ってくるだろうリザードとの戦闘方法を考えていた。


 ――逃げ切ることはたぶん無理だ。なにせ右も左もわからない確率が低すぎる。

 なら戦うしかない・・・だが武器もないし相手の攻撃手段も動きもわからない。

 とりあえずわかっていることは相手はサーベルみたいな剣をもっていたくらいか・・。

 と考えていると・・。


「お兄ちゃんはだれ?」


 いきなりお姫様抱っこをされ驚いていたフィリスが口を開く。


「君を助けに来た。っていいたいがすまん助けられるかわからねえ。で追ってくる奴は何者かわかるか?」


 と走りながら一瞬だけフィリスのほうへ目をむける。


「ううんわからない。あいつねフィリスの魔法効かないの……」


「小僧!!なんのつもりだああ!」


 ショウとフィリスが会話をしていると後ろから怒号が聞こえてくる。

 ――やっべえ怒ってるすぐ追いつかれるか。

 とシュウはできる限りの速度で走る。


「いろいろ聞きたいけど細かい話はここを無事きりぬけられたらだな……。フィリス、武器がおいてあるところってあるか?」


「武器?」


「そう、剣とか銃とか最悪ナイフでもいいから」


「う~んあるのかもしれないけど私には場所がわからないの」


 そうか! ここがなんの建物かもわからないが10歳くらいの少女にその場所を教えるわけないか。なら、


「キッチンは?」


 シュウは思い立ったかのようにフィリスに聞いたみる。


「キッチン?」


「料理する部屋だ」


「それならあるけど……」


 つまりそうな答えが返ってきたのでシュウはフィリスのほうへ目をむけるとフィリスはとてもいいずらそうな顔をしている。


「あるけど?」


「逆方向……」


「――!」


 ――なんだと!

 チクショウどうする……。

 ――トカゲ野郎を回避してキッチンへむかうか。

 ――このまま走り回って外へ逃げるか。

 ――武器もなしに戦ってみるか。

 う~んどれも死が待っている気がする……。

 見た目だけで敵と判断したが実は敵ではないというパターンも?

 いやいやそれは期待がもてなすぎる。

 それに敵が一体とも限らない……。

 しかし……。

 とシュウは賭けにでる。


「フィリスさっき言っていたが魔法が使えるのか?」


 アウラから聞いていた魔法の世界、フィリスが使えても不思議はない。


「うん使えるよ? けど効かなかったよそれでもいいの?」


「かまわない! 合図とともにあの追ってくるやつに撃ってくれないか?」


「うんわかった」


 覚悟をきめる。

 チャンスは一度きり反射神経には自信がある。

 ――失敗したら死ぬかもな……。


「よし!」


 ショウは立ち止まって振り返る。


「小僧が!!きり刻んでくれる!」


 とリザードが叫ぶ、もうすでに見える位置どころかほんの数秒までのところまでせまっていた。しかしシュウは冷静にその瞬間を見逃さないように瞬きもせずリザードの動きを見る。リザードが剣を振り上げた瞬間。


「いまだフィリス!」


「ファイナァ!!」


 フィリスが手を前にだしリザードにむけて呪文を唱える。

 すると手の平からテニスボールほどの火の玉がリザードの体にむかっていく。


「あたらぬわ!」


 リザードは剣を振り上げたまま体をひねりよける。

 シュウはリザードがどちらの方向によけるかを瞬時に見極めた。


 よし左だ!シュウは一瞬のスキを見逃さず相手がよけたほうの逆を

 走り抜けていく。


「おし、うまくいった!なかなかの狙いだったぞフィリス」


「えへへ」


 おせじではなく見事な狙いだった。

 あてることが目的ではなく一瞬でもスキをつくること。

 それだけできれば上出来だ。


「ふざけおって!なにが狙いだ!」


 すぐさまリザードは抜き去ったシュウたちを追いかけてくる。

 しかし少女ひとりを抱えて走るシュウがすぐに追いつかれていないことから足はたいして速くはないということがわかっていた。しかし少しずつ確実に追いついてきているのも確かだ。


「フィリス、キッチンはどこの扉だ?」


 この建物はなかなかに広い。

 廊下が長く扉もいくつあるのかわからない。


「えっと次を左に曲がってすぐの部屋だよ」


 その言葉のとおり左にまがり部屋に入る。


「ここか!って広いなおい」


 多少は広いと予想していたが学校の教室くらい広かった。


 ――つーか驚いてる場合じゃねえ。


 シュウはキッチンに入るとフィリスをおろし休むまもなく急いで探しものを始める。


 ――急げ急げ!かならずあるはずだ。


「お兄ちゃんなにを探しているの?」


「武器!ていうか手軽に刃物が手に入る場所がここしか思いうかばんのよ」


 目的のものは簡単に見つかった。

 

「あった! まあできればもうちょい長いのがよかったが贅沢はいってられないか!さてこんなのでいけるかね……」


 見つけたのは短い調理用のナイフだった。

 それを手に取りキッチンの入口の方を向きまち構えるシュウ。


「フィリスあとは俺にかまわず逃げろ。お兄ちゃんが時間を稼ぐ!」


「でもそれだとお兄ちゃんが……」


「大丈夫お兄ちゃん超つよいんだぜ!」


 そう言い聞かせフィリスを逃がそうとするがそのとき。


「ほう!逃げるのをやめたか」


 リザードがシュウたちに追いつきキッチンに入ってきた。

 シュウがナイフを持ち構えてるのをみて、


「そんな刃物で俺様に立ち向かうつもりか」


 とあざけ笑うのだった。


 武器は右手に刃渡り30センチほどのナイフ。

 セリートという魔法世界に転移した少年 狭間 シュウ の初戦が始まる。





 ××××××××××××××××××××





 少し時間が戻りここはアウラの空間。

 シュウを送りとどけた直後アウラから背後から小さな光が迫る。


「アアアアアウウウウウウラアアアア!」


 小さな光がアウラに突進してきた。

 しかしアウラは華麗によける。


「おっと。ごめんごめん君におしえる時間はなかったんだよ」


「そんなのはいいから私も早く転移しなさい! わかっているでしょ?!」


「そうだね。君はこの時のためにここに居座っていたのだからね。いいよいっておいで」


 アウラは両手を小さな光にむけ転移の準備をする。


「待っていてすぐ私が……」


 そう言って小さな光はセリートに転移されていった。


「今のが最後これでしばらく魔法は使えないね……。あとは頼んだよ狭間シュウ……」




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