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魔法世界デ魔法ナシ  作者: ヴァニ
第1章
11/16

絶雷魔法ライトニングソード

 


 今までとは違う怒りのこもったような咆哮をあげるケルベロス、さすがにイライラしているのかいつになっても抗う獲物に怒りをあらわにしているようにも見える。

 フィリスのアローファイナによりケルベロスの3つの頭の視線すべてがシュウとフィリスにむけている。


 シュウは一度上空のイリーネに視線をむけ魔法の準備にとりかかっているのを確認する。

 抱きかかえられたフィリスはシュウに、


「ねえねえシュウ? フィリスは次どうすればいい?」


 と問いかける。


 シュウは考えていた。フィリスを下ろして逃がし自分一人でケルベロスと対峙したほうがフィリスは安全なのではないかと……だがフィリスを狙われたら元も子もない……。

 ならフィリスを抱きかかえたまま避けるほうがフィリスは守り抜くことができるのではないか。それに一分程度なら避けれる自信がシュウにはあった。


「フィリスはおれにしがみついているだけでいい、あとはおれが全部避けてやるさ」


 と自信満々に言い放つ。

 と攻撃開始とばかりに咆哮を終えたケルベロスによるシュウへの猛攻撃が始まった。


 左の頭から炎が右の頭からは氷の氷塊がとんでくる。

 しかし3つの頭は真ん中の頭を挟んでいるので正面にいなければ両方が同時に来ることはないとシュウはわかっていたのでなるべくケルベロスを中心に左回転に回避しつづける。


「一分くらい楽勝だなこりゃ」


 とシュウは避け続けた。フィリスを抱きかかえるのは前の戦いのときに経験済み、これくらいなら足枷になることもないと踏んでいた。


「シュウ!! ダメ尻尾が!」


 とフィリスが叫ぶといままでぶらりと大人しくしているだけの尻尾が攻撃し始めたのだった。


「嘘だろ!!」


 シュウはフィリスの声に反応して尾を避けるがすかさず前足からの攻撃がくる。

 その巨体の前足は例えるなら電柱3本くらいの太さ、その大きな足がシュウとフィリスをめがけて勢いよく振りかぶりシュウを顔をかすめる。


「あっぶねえええええええ!」


 と安堵する暇もなく左の顔から今度は隕石かと思えるほどの火の玉が放たれる。


「シュウ今度は上えええ!」


 フィリスが目をつぶり叫ぶ、


「――!!」


 と火の玉が二人を直撃する……が火の玉は二人に吸い込まれるように消える。


 フィリスがいつまでもこない火の玉の衝撃がこないのを不思議に思い片方しかあかない目を開けると火の玉は目の前から消えていた。


「シュウすごいね! シュウが消したんでしょ? どうやってるの?」


「秘密!」


 とフィリスに向け軽くウィンクをする。

 しかし正直シュウは焦っていた、

 ――まずいまずいまずい、想定外だ! 全然楽勝じゃねえ……。

 ただでさえ運動神経が良いシュウがこの世界にきてからさらに俊敏差に磨きをかけて回避には自信があったためもっと余裕で避けられると思っていた。だが尻尾による攻撃はまさに予定外、さらにこれ以上攻撃のバリエーションが増えたらたまったものではない。


「さっきの楽勝発言取り消すからもうちょい加減してくれないかな……」


 とその言葉に攻撃が弱まるわけもなくケルベロスの猛攻撃は続く、

 シュウはケルベロスの周りをまわるようによけ続ける。30秒以上は経過しただろうかあと少しというときだった。


「シュウ真ん中の首が……」


 フィリスがケルベロスのほうを見て驚くように発した、シュウもフィリスの視線の先を見つめる。


「おいおいなんだよそりゃ」


 なんといままで攻撃に参加していなかった唸り声だけを発するだけだった真ん中の頭の首がまるでろくろ首のように伸びシュウを目掛けて鋭い牙で噛みついてくる。


「うわわわっ!!」


 勢いよく突っ込んでくる頭をかろうじて避けるシュウだったがその牙で噛みつかれえぐれた地面が凄まじい攻撃力を物語っていた。


「クソったれ、いままでこれといった攻撃をしてなかったのが不思議に感じていたがそんな能力をお持ちの首でしたか……」


 とシュウは頬をたれる汗を左手でぬぐいながら徐々に焦りだす。

 足、炎、氷、尻尾、伸びる首からの噛みつきと5つの攻撃をすべて回避し続けるシュウに余裕などなかった。一撃でも食らおうものなら戦闘不能は確実、物理攻撃は左手では消せず、避けるしかない。その後も左手で魔法を吸い俊敏な動きで前足からの攻撃を華麗にジャンプしてよけるが、


「まずい!」


 と身動きの取れない空中で伸びた首からパクリとを食われそうになると、


「アローファイナァ」


 とフィリスの見事な援護が入り回避するヒヤリとする場面がありながらも長い回避劇が続く、ケルベロスとシュウの周りは木々は燃え、なぎ倒され、地面には氷塊がささり森の中とは思えぬ異様な光景になっていた。


 ――まだか……まだなのかイリーネさん……。

 と余裕など全くなくなったシュウの耳に、


「大気に渦巻く魔力よ、我が内なる力と交わり迸る雷撃となれ!」


 上空のイリーネから詠唱が聞こえてくる。ふとイリーネに視線を向けると両手を上にあげ手の平からイリーネ全体に電撃がほと走っている。


「シュウ離れろ」


 イリーネの叫び声を聞き、待ってましたとばかりにシュウはフィリスを抱きかかえたままケルベロスに背を向け全力でその場から走り去る。しかしケルベロスはシュウを逃がそうとせずシュウとフィリスを追いかける。


「くそっ! 引き離せない!」


「まずいのぅこのままではシュウ達にも当たってしまう……」


 イリーネが両手を上にあげ魔法を撃ち放てずにいるとその時――


「フリーナアロー!!」


 フィリスがシュウの右肩から顔をだし、詠唱とともに突き出した右手から長く鋭い氷柱発生させケルベロスの右前足を貫通突し地面に固定させる。


「おお!フィリス超えらい!」


 フィリスの起点の効いた魔法がケルベロスの動きを止める。


「えへへへ」


 ケルベロスはすぐさま突き刺さった氷柱を抜き割るがその瞬間をイリーネは逃さない。


「よくやったぞ小娘、いくぞ!! 貫け!! 絶雷魔法ライトニングソード!!!!」


 と上空のイリーネさんが両手を振り下ろすと凄まじい轟音とともに稲妻の柱がケルベロス全体を押しつぶすように直撃した。


「うおおおっ」


 シュウは後ろからの猛烈な衝撃に耐えきれずフィリスを覆うように倒れこむ。シュウの周りを衝撃で舞い上がった砂ぼこりが立ち込める。


「フィリス大丈夫か?」


「うんなんともないよ」


 衝撃がやみフィリスの無事を確認するとシュウは立ち上がり後ろを振り返る。

 すると視界の晴れた目の前にはケルベロスがいたはずの場所に大きなクレーターができ、ケルベロスの姿は跡形もなく消えそこにはイリーネの魔法から逃れたのであろう半分の尻尾だけが残っていた。


「貫けっていってたけど……貫くどころじゃねえなこれ……でもさすがにこれなら再生できないんじゃないか?」


 イリーネの放った凄まじい魔法の跡に圧倒されながらシュウは残った尻尾に近づこうとする、


「シュウ動くな」


 とイリーネさんの声とともに、先ほどより小さな稲妻の柱が残った尻尾を跡形もなく消し去る。


「あっぶね!」


 尻尾を消し去ったのを確認したイリーネさんが上空から降り、先ほどまでケルベロスがいた場所に降りてくる。


「尻尾ひとつで再生される可能性がある。念には念をじゃ」


「確かに……」


「しかしシュウよ、見事だったのう、攻撃力は皆無じゃが回避力は天才級じゃのぅ」


 イリーネさんは腰に手をやりシュウをみながらよくやったとばかりに微笑んでいる。 


「いやいや、フィリスの援護とイリーネさんの魔法がなけりゃ倒せなかっ……」


 イリーネの顔を見ながら発言しているときだった。シュウは気付く、そして凝視する、イリーネさんの背後……先ほどまでケルベロスの真ん中の頭があったであろう場所にこの森に入るときに見た空間の歪みがあるのを……。


「シュウ? どうしたのじゃ?」


 途中で発言をやめ、自分の背後を凝視し徐々に血の気の引いていくシュウの顔を見てイリーネは嫌な悪寒を感じた。


「まじかよ……」


 イリーネの背後から少しずつ氷炎獣ケルベロスが再生される。


 息つく暇もなく第2ラウンドが始まる。




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