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その84からその90

小説の舞台は西宮の今津に戻ります。


清兵衛が亡くなって

清三が二代目川野清兵衛を名乗ります。

後を追うように

ゆかが亡くなると

清三は頼るものがなくなってしまいました。


千代は良くできた妻ですが

清三をいさめるような力もありません。

ただひとり

清兵衛が残した

番頭だけです。


その番頭は

清三より若いですが

清兵衛より働き者で

利発でした。

清兵衛の教えをよく行い

清三の見張り番的存在でした。


清三も

番頭には頭が上がらず

番頭の助言に従っていました。


大正8年になった冬

スペイン風邪と呼ばれる

病気がはやります。

国民の半分が罹患し

数十万の人が亡くなるような

病気です。


今津の村々の人々の間にも

流行し

もちろん

河野家の人も全員ひく始末です。



スペイン風邪が蔓延して

松野家の人々も風になってしまいました。

清三も真っ先に風邪になって

すぐさま寝込みました。

千代や武蔵や勇治も順番に風邪を引いていきました。


その中で番頭だけはがんばっていたのです。

少し無理をしていたのかもしれません。

いやだいぶ無理をしていたのでしょう。


清三がいつまでも

寝込んでいるので

番頭に責任がかかってきたからだと思います。


清三がやっと寝床から起き上がったとき

番頭は寝込んでしまいました。


千代が介抱していましたが

ますます悪くなって

5日後亡くなってしまいました。


若いのに本当に惜しいことです。


清三は

番頭に何もかも頼っていたので

困り果てました。

もちろん千代も困ってしまいました。

農業のことなど

2人には全くわからなかったのです。


河野家の最大の転機です。



番頭のお葬式が済んだ直後から

清三は困り果てました。


どのように田んぼや畑の世話を

したら良いか全くわからないのです。

清三は

仕方がないので

すべての田畑を

小作に出すことになりました。


だいぶ見入りが悪くなりますが、

それなりの収入があり

清三とその子供が

普通に食べていくには全然困らない額です。


田畑を小作に出して

仕事がなくなった清三は

昔のように

何するでもなしに

日中一日

縁側でボーとしていました。


時々子供と遊んだりしていましたが

それも飽きて

またボーとしていました。


それを見ていた千代が

「たまには外に出かけてみたら」

と言ったのです。

そんな言葉が

千代にとっても

その子供にとっても

大きな不幸の始まりだったのです。




清三は子供のときから

体が弱かった関係で

人付き合いが下手です。

そのため友達もいません。


子供のときは

母親のゆかが

唯一のの話し相手

でした。

結婚した後は

千代が話し相手ですが

千代も

清兵衛や ゆかが

亡くなった後は

村の用事で

何かと忙しかったのです。


子供がたくさんいましたが

次々と亡くなって逝くので

本当にさびしくなっていたのです。

末っ子のけいが

生まれたときには

清三は大変喜んで

よく相手になっていたのです。


しかし けいの相手ばかりしていられないのが

清三の飽き性のためでしょうか。


千代の

「出かけたら如何ですか」

という言葉を聞いた後

清三は

実際に出かけるまで

相当考えてしまいました。


清三にとって

学校以外の場所は

未知の場所でした。

どこに行けばいいのだろう。

などと考えていたのです。


そこで

次男の勇治に

聞いてみることにしました。



出かける仕方を

子供に聞くなんて

少し間が抜けているように思います。


でもその頃

勇治は

15歳になっており

村ではチョイ悪の「ごんた」でした。


勇治は

父親の尋ねに対して

「やっぱり

男の遊びは

のみ・うつ・かう

しかないだろう。」

と言うのです。


清三は

「なんということを言うのか

子供の癖に」と言ったのです。


清三はでもそのことを聞いて

「のむ・かう」は全く興味がありませんでした。

河野家には飲酒の習慣がなかったのです。

しかしく

「うつ」は少し興味がありました。

学校で

確率の勉強をしたので

その実践をしたかったのです。


今も昔も

賭博はご法度です。

賭博を開帳しているのは

やっぱり今で言う暴力団しかいません。

当時はやくざと呼び方でしたが

その本質は変わりません。



清三は

安直に賭け事をしてみようと

考えるのはどういうことでしょうか。


清兵衛やゆか、番頭が生きていたら

必ず禁止するのですが

いまや清三を止めるものなどありません。


清三は

今から始めようとする

賭け事のことを

母親から聞いたことがありません。

河野家では

働き方や

ご飯の食べ方などは教えてたのですが

そのようなことなどは

教えなかったのです。


ゆかは

賭け事など

頭にも浮かびませんでしたので

それをしてはいけないと

言わなかったのです。


清三は

ひまつぶし程度にしか思いませでしたが

賭け事がどのようなことか

わからなかったのです。

世間知らずだったんですね。



いよいよ清三は

多少のお金を持って

出かけました。


勇治から聞いていた

場所に行ってみました。

駅の近くですが

少し暗い

それなりの場所です。


こんなところがあったのかと

じろじろ見ながら

歩いていると

地元の地回り

即ち今で言えば

暴 力 団の構成員が

声を掛けて来たのです。


彼は見張り役で

警察の手入れに

目配りをする役だったんです。

一見して

弱々しそうで

風体もいい清三を

警察の手先とは思わなかったのですが

場違いなので

聞いてみたのです。


清三は

「賭け事をするために来ました」

と返事をしました。


その返事の仕方や

内容を聞いて

見張り役の男は

またまたびっくりしました。




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