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その171からその174まで

甑岩の納屋をいきなり開けて

「おかん いるか」

と声をかけました。


突然男が入ってきたので

驚いた子供達は

部屋の片隅に

逃げました。


千代が振り向くと

少し驚いたような顔で

「勇治、生きていたのか

いつ帰ってきたのですか。」

と言いました。


勇治は

「もうだいぶ前に帰ってきていた。

それはともかく

金を貸してくれないか。

直ぐ返すから、、、」と

千代にせっつきました。


千代は

「金なんかないよ。

お前の子供を育てて

金なんかもうないんだよ。」

と言いながら

財布の中の少しのお金を

勇治に渡しました。


勇治はそれをもって

直ぐに出て行きました。

自分の子供には

何の言葉もかけずにです。





子供たちは

父親が来たということを知りませんでした。


勇治の子供たちには

千代は

「お父さんは

満州の遠いところに

行っている」

と言っていました。


子供も

大きくなっていて

何かわかっていたかもしれません。


その日

けいが

工場から帰ってきて

千代から聞きました。

勇治が帰ってきたことについて

けいは

無言でした。

勇治はわずかばかりのお金で

阪急電車に乗って

西宮東口まで帰ってきました。


六甲の

西の空が

夕焼けで真っ赤に焼けていたので

明日は天気に違いないとと考え

千代から借りてきた

今日のお金は

パーと使ってしまいました。


そんな生活をしていたのです。





でも

遊ぶために

『まじめに』仕事をする勇治でした。

仕事が

ひっきりなしに来る関係で

勇治は

あれ以来

千代のところには

行きませんでした。


羽振りのいい

勇治のうわさは

その世界では

有名になっていました。


帰還してから

2年経ったとき

勇治の下に

前の奥さんが

帰ってきたのです。


何もなかったように

勇治の元に帰ってきました。


そして

何もなかったように住み始めました。

元々籍も抜いていなかったので

都合が良かったのかもしれません。


勇治の

女房は

上海で

日本人相手の

飲み屋で働いていて

そこで終戦を迎えました。


戦後まもなく

日本へ帰ってきて

同じように飲み屋を転々と

働いていたのですが

勇治うわさを聞いて

帰ってきました。




夫婦そろって今津に住んでいたのですが、

子供のことなど

全く眼中にありませんでした。


父親である勇治も母親も

甑岩にすんでいる二人の子供の所に

行かなかったのです。


千代や けい は

夫婦で今津に住んでいることを

人伝に聞いていました。


いつ引き取りに来るか引き取りに来るかと

思っていたのですが

それはありませんでした。


けいが結婚して

けいが今津に家を建てて

勇治と千代が一緒に住み始めるまで

子供は

勇治とは

会わなかったのです。


(ここで勇治のお話は

一旦終わります。


けいが結婚するまでを

この長編小説「昭和」では

前編とするつもりです。


勇治は

けいが

結婚後も

何かとけいを苦しめたり

千代に悲惨な運命をもたらします。


しかしこの後編を書くのは

ここでは

もう少し後になります。


これで

第4部は終わります。

第5部は再び園田に帰ってきます。


「小説家になろう」のアクセス記録によれば

伊蔵の話は

あまり人気がないのですが

伊蔵のふたりの子供の話をしないと

明治大正昭和時代の

人々の記録を

現すことにならないので

あえて書いてみます。


読んで下さいます様お願いします。)



この小説は

「ロフト付きはおもしろい」

http://a123.noblog.net/

に平成20年8月12日にその216を掲載中です。

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