その91からその100まで
清三は
見張り役の男と
続いて話します。
「賭け事は
いつ頃から始まるのか。
それから
如何ほど賭けられるのか。
賭け方は
さいころ賭博か
それとも花札なのか。」
などと
詳細に聞いたので
見張り役の男は
すごく不審に思って
清三を
追い出し始めました。
追い立てられた
清三は
仕方がないので
駅の周りを
一周して
それから
田んぼを
見回って
家に帰り着きました。
家に帰ると
何もなかったように
その日は
終わりました。
翌日
清三は
また同じ服装で
出かけました。
清三はまた出かけます。
千代は何も言いませんでした。
でも千代はそこまでして出かけなくても
いいのにと思ってのですが
夫唱婦随の
模範な妻である千代には言えませんでした。
でも勇治は
行かないのは
だらしがないというような
目で見ていました。
今日は少し遅い時間に
出かけました。
駅裏に行くと
同じように
男が立っていて
見張っていました。
時間が違うので
違う男でした。
でも勇三が同じようなことを
言うので
その男も
不審がって
追い出し始めたのです。
そこにやってきたのが
清三を知っている
酒蔵に極道息子です。
清三を見つけると
ほんの少し
頭を下げて
挨拶をしたのです。
極道息子は
その賭場の常連で
それを見ていた
見張りの男は
やっと清三を
信じたのです。
それから
見張り役の男は
なにやら
その極道息子に
話しかけていました。
それから
見張り役の男は
手を返したように
清三に
にこやかに応対したのです。
見張り役は
賭場の責任者らしき人物に
目配せしました。
そうすると
何人かの
配下の男たちが
やって来て
清三を取り囲み
歓待するのです。
清三は
今までみんなに
こんなにむかい入れられたことがなかったので
少しうれしくなってしまいました。
実はこの時
清三が
大金持ちであることを
知ったので
みんながちやほやしたのです。
清三は
まず札を変える所に
連れて行かれ
ました。
男たちは
清三のわかり切った
質問にも
丁寧に答えていました。
札を持って
賭場の一番いいところに案内されます。
さいころ賭博で
さいころの出目で
丁半を予測するものです。
全くわからない
清三は
座布団上に座って
男たちの言うとおりにしました。
そうしたら
なんとまあ
勝ち続けたのです。
丁と半しかありませんから
確率的には
2分の1です。
負けたり勝ったりするのが当たり前で
勝ち続けたりするのは
何がしかの
仕掛けがあるのです。
勝ち続けた
清三は上機嫌です。
何時間がたって
終わる頃には
持ち金が
倍になっていました。
時間になったので
帰り始めました。
男たちは
帰り始めた清三を
ひき止め始めました。
「ちょっと旦那、
あんなに勝つなんて
すごい腕ですね。
あっしらよりも
強いよ。」
と言いました。
清三は
子供のときから
一人ぼっちで
みんなにちやほやされることが初めてなので
本当うにうれしくなりました。
それで
その男たちを連れて
美味しいものでも
食べに出かけました。
男たちはもっと喜んで
清三を
祭り上げたので
清三はもう有頂天です。
清三が
男たちに送られて
帰ったのは
夜もとっぷりと更けていました。
翌日意外にも
清三は朝いつものように
目覚めました。
清三は昨日の出来事を
考えました。
どのように考えても
清三が
賭け事が強いわけがないと思ったにです。
やっぱり勝たしてくれたに
違いないという結論に達しました。
でも
何となくうれしい朝で
千代や
家族のものも
清三が
にこやかなのが
何となくわかりました。
一方賭場の男たちは
清三が
本当にいい客になると見たのです。
賭け事というものは
勝ったり負けたり
仲間内だけで
賭け事をしても
なにも富を作り出しません。
お金持ちの客がいないと
商売上がったりです。
上客を見つけると
最初のうちは
勝たして
上機嫌にし
賭け事好きになると
すべてとってしまうという
作戦だったのです。
堵場の男たちの目論みが
わからないわけではありませでした。
しかしその日の午後に
男たちの一人が
やってきました。
その筋の商売を
やっている人たちのことですので
こわもての
人たちばかりだと
思っているでしょうが
そうではなく
なかなかの
上手もんなんです。
猫なで声まではいきませんが
うまく取り入るような
男がやって来て
清三を誘うのです。
行かないつもりだった
清三も
そんなに誘われたら
いやとは言えなくなって
昨日と同じ服装で
出かけました。
同じように駅近くの
いかがわしい通りに着くと
中から
男たちが
出迎えるのです。
清三は
うれしくなって
飛び跳ねるように
中に入りました。
その日の
清三は
前日より
積極的でした。
自分の思ったように
丁半を賭けました。
そのため
勝ち負けは
同じくらいになってしまいました。
勝ったときは
うれしく
負けても
それなりに
楽しそうに
清三はやっていました。
男たちは
清三に勝たしてやろうと
小声で
言うにですが
清三は
そんなことを
気にせず
賭け続けました。
終わりの頃
やっと少しだけ勝って
お開きになりました。
終わった後
また
男たちを連れて
美味しいものを食べに行きました。
清三は
どちらかというと
お酒が好きでないので
飲み屋より
食べ物屋に行ったのです。
夜更け過ぎに
また 男たちに
おくられて
帰りました。
翌日
清三はまた同じように朝起きました。
昨日のことを
思い出し
少し罪悪感がを感じました。
やっぱり
そんなことで
続けるのはよろしくないと
反省しました。
しかし
夕方
例の男がやって来て
誘ったのです。
それまでの反省は
さておいて
服を着替えて
また出かけました。
同じように駅裏に
行きました。
最初は
何となく胡散臭い感じがしていましたが
懐かしい感じがしたのです。
清三は
その違いに
少し驚きました。
3日目なのに
清三は
決まった場所に
さっと座りました。
慣れてきたのが
何となく怖く思いました。
同じように
さいころ賭博に興じて
その日は終わりました。
いつものように
食事に行くと
男の一人が
大峰山に行かないかと言いました。
旅行なんかに誘われたことがないし
第一 旅行なんかに行ったことがありません。
当時の日本では
旅行と言えば
伊勢参りか
大峰山参り
八十八箇所参りと言うようなものでした。
清三は
その
大峰山参りに
とても興味がありました。
家に帰ってまた翌日になっても
そのことが頭から消えませんでした。
西宮から
あまり出たことがなかった清三は
大峰山が
とても興味があったのです。
それで賭場に行ったとき
その男にまた聞いたのです。