眼鏡屋は、バレンタインに夢をみる 3
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男は指輪を財布に入れ、会社をでていつものバーに向かう。
待ち合わせた女性と食事をすませ、いつものようにホテルに向かった。
「じゃぁ、指切りね」
「あぁ」
小指を絡め約束を交わし、口づけをしてそのまま女性とベットへなだれ込む。
「愛してる」「キミが一番だから」
男にとって、その口約束に何の重みもなかった。
ただ、その場の快楽に身を落とすための合図の様なモノだったから。
何度も重ねた体と同じ数ほど交わした約束。
--いつか、嫁と別れるから一緒になろう--
男が口にする”いつか”を信じ
女はそのたびに、子供のように指切りを強請り「約束ね」と微笑んだ。
家庭を持ち、子供も二人いる。特に嫁に不満がある訳でもないのに
酒の勢いで慕ってくれていた部下に手を出した。
かと言って、社会的な目が気になるから嫁と別れる気もない。
女だって既婚者の自分と付き合うのだから、それぐらい割り切っているだろうと男は
どこかで思っていた。
一時の快楽の為に、その場だけ互いが気持ちよく体を重ねれる為の約束という方便。
「ねぇ・・・いつ?」
「ん・・・?」
情事のあとの微睡で、女は再度男に問いかける。
「タイミングを計るよ」と男はまた小指を絡めた。
「ねぇ、私と一緒になってくれるんだよね?
奥さんに話してくれるんだよね?」
その問いかけは、可愛いおねだりだったのが次第に男の気持ちを追い詰めていった。
「いいから・・・今は嫁の話はやめよう。せっかく二人っきりなんだ」
唇を塞ぐと女は吐息と一緒に「嘘つき・・・」呟いたが、
その言葉は男の耳には届かなかった。
その日以来、男は女から距離を取り始め、
それと同時に数えきれない約束を交わした指に違和感を覚えた。
チクリと棘が刺さったような痛みと小指の第一関節に見覚えのない痣。
薄らとした赤色だった痣は、日ごと赤黒く変色し痛みを増していった。
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学校帰りバイトの為、岡田眼鏡店へ足をむけた。
普段から、客はほぼ皆無だが雨が降るこんな日はゼロに近い。
それは、眼鏡屋の客のこと。
雨に日には、決まって保さんの力が呼び寄せるのか相談の客が来ている。
「こんにちは」
店のドアを開け、店内に入ると保さんの他に見覚えのある客がいた。
「理くん、お客さんだからお茶お願いできるかな?」
ニッコリと微笑む保さんの前には、数日前に指が痛いと言っていた
男性が座っていた。




