バス来ない
10分が経った。
本当であれば、もうバスに乗っているはずの時間であるのだが、その乗る予定のバスが来ない。
「まいったなぁ」
特に何かあるというわけではないが、家に帰る時間が遅れれば、ゲームをする時間が減る。
それは困る。
ネトゲで、リアルタイムタイプだから、実時間と同様にゲーム時間も過ぎていくからだ。
だが、携帯からそれをすることはできないため、どうしても家のパソコンからする必要がある。
さらに5分。
道の向こうから、誰かがやってきた。
「バス待ちですか」
「はい、どうしましたか」
俺は、携帯から顔をあげ、スーツの男性と目を合わす。
「大変申し訳ありません。実は、バスが事故に遭いまして……」
「代替はあるんですか?」
「ええ、しかしながら、もうしばらくかかりそうなのです。大変申し訳ありませんが……」
「待ってますよ。どれくらいすれば来ますか」
「おおよそ10分ほどになると思います」
「じゃあ、待ってますよ」
「ありがとうございます。このたびは本当に、大変申し訳ありません」
深々と頭を下げ、そのまますぐに次のバス停へと向かった。
俺は、理由が分かると安心することができた。
ならば、と思い、ゲームの攻略サイトを見つつ、代替のバスが来るのを待った。