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酒好き義姉さん、未来人の仲人になる  作者: 依馬 亜連
おまけ

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21/22

おまけ4 未来人の処世術

 拍手お礼小話の加筆修正版です。

 本編8話と9話の間辺りであろう、義姉弟の一幕です。

 希代とのセカンドインパクト成功祝いとして、カズサが菓子折り片手に現われた。

 幸い、彼と敵対関係にある宇宙人ことシン・ク・ロウは、処方薬を飲んで眠りこけている。図体や境遇の割に、寝付きは非常にいいのだ。

 今なら安全だろう、と市夜もカズサを招き入れる。


 手土産は、大金持ちの愛人の息子、という妙な肩書きにぴったりの品だった。

 人気の高級洋菓子店の、これまた一番人気のフルーツタルトだ。

 ぎゅうぎゅうと敷き詰められた、瑞々しい果物たちに、市夜はごくりと唾を飲み込む。ほのかに漂うカスタードクリームの香りも、また食欲を奮い立たせる。

「さすがはお高級品、目に訴えて来るね。でもここのケーキって、かなり並ばないと手に入らないでしょ? 私、並ぶ前から諦めてた」

 女である市夜だが、行列に並ぶことが何よりも嫌いなのだ。

「僕のボディガードさんが、せっかくだからって手配してくれました。お義姉さんが甘いもの好きで良かったです」

 義姉手ずからのインスタントコーヒーを受け取り、カズサは誇るわけでもなく、にこにこと自然体で語る。

「あんたにボディガードなんて、要らないと思うんだけど」

 ミルクタップリのコーヒーを飲み、市夜も苦笑する。

「僕もそう思います。平和なのに、過去(ここ)

 しかし、金もあって、少しずれているが性格も健やか。おまけに、裸一貫(本当はタイツ一丁であるが)で、この時代での地位を築き上げた生存能力もある。

 妹の夫候補としては、文句なしだ。


 ただ一つだけ、気になる点もあるのだが。

「カズサ君。つかぬことを訊きますが」

「はい?」

「戸籍とかは、どうしたの?」

 そうなのだ。何をするにも、戸籍や住民票は必須である。

 洗脳装置でどうにかなるかもしれないが、それだけで乗り切れるほど、この国はシンプルではない気がする。

 尋ねられたカズサは黙ったまま、静かに微笑んだ。

 底抜けに穏やかな、思わず見とれてしまう笑みである。だからこそ、かえって薄気味悪い。

 市夜が眉をひそめると、カズサは笑顔のまま呑気に答える。

「捨てる神あれば、拾う神ありなんですよ」

「つまり」

「戸籍って、買えるんですよね」

「ふうん」

 誰から買ったのかは、聞かない方が賢明であろう。

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