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二人部屋

とりあえず一通り部屋を二人で片付けた。片付けている間も瀬川は私の私物をまじまじと見ていた。そして部屋が綺麗になると瀬川と私は部屋の真ん中で正座をして向き直った。最初に切り出したのは意外にも瀬川の方だった。



「ルカ様……人にはそれぞれ個人の趣味があります、私はとやかく言うつもりはありません。ただ、少し意外でした。ルカ様はこう言う類の週刊誌も読むんですね」



と言って手に取ったのは、某人気少年漫画雑誌だ。私は毎週買っている、だが月曜日ではなく火曜日だ。発売日になると私のクラスの男子生徒も近くのコンビニで立ち読みなんかをしている。そこへ私が買いに来たら、当然不思議がるだろう。だから私は毎週火曜日の学校が終わって夜に買いに行く。



「あ、あぁ。好きだからな」



もう隠す必要は無い、もうこうなったら包み隠さず打ち明けるしかないだろう。私は決心した。



「瀬川の見ての通り、私は学校と家では明らかに別人だ。いつも学校で見せている姿は本当の私じゃない。私だって紅茶よりも清涼飲料水の方が好きだし、ケーキのような洋菓子よりもスナック菓子の方が好きだ。漫画だって読むし、家では常にスウェット姿だ。休日は昼寝だってする。君たちよりもよっぽどだらしない女なんだ」



私は淡々と言い放ちそれを瀬川は真剣に聞いてくれている。そして私が全てを打ち明けると…。



「私のルカ様はいつも上品で可憐で素敵な女性だと思っていました。けど今回の事で私たちとあまり変わらない、普通の女の子って事が分かりました。ちょっとビックリしましたけど……少し、うれしいです。けど学校の親衛隊にはどう説明しましょうか。中にはショックを受けてしまう人も居るのではないかと……。」



それはそうだろうな。親衛隊のほとんどの女の子達はおそらく私をどこかの城の姫様のように扱っているようにもとれる。それが本当はこんなだらしない女だと言うことを知れば…。あぁ想像したくも無い。



「親衛隊の方には黙っていてはくれないか。私のためではなく親衛隊の子達のためだ。彼女達はいつもの私を見ている、少々刺激が強すぎるだろうな。私と瀬川の秘密ということにしておいてくれ」



私が片目を瞑り人差し指を立てると瀬川は大きくうなづいて返事をした。そして二人だけの秘密というのが気に入ったのか、うっとりとしている。しかしここからが本題だ。



「瀬川、ここからが本当に聞いて欲しい事だ。鏡の向こうの話」



そういうと瀬川は再び真剣な顔になる。そして私はファリッサでの全てを話した。シュレイナの事、魔法を使い戦っている事、ファリッサが危険な状態である事、そしてサトルという人の事。



「………と、言うことだ。瀬川にはこのサトルっていう人を一緒に探して欲しいんだ……聞いているのか?瀬川」



瀬川はあいた口が塞がらないという言葉がお似合いの表情だった。まさしく口が開いたまま塞がっていない。私が顔の目の前で手を叩くと変な奇声を上げて瀬川は戻ってきた。



「うきゃっ!……あ、ごめんなさいルカ様。ただいま戻ってきました」



「ちゃんと聞いていたのか?」



「はい、どれも信じられないような話ばかりで」



「それはもっともな意見だな、だが信じて欲しい」



「信じますよ、目の前でルカ様が鏡の向こうに連れて行かれたんですから、信じざるをえません」



瀬川はまた大きくうなづいた。



「明日にでもそのサトルという人を探しに行きましょう、その人の特徴は何かないんですか?」



「歳は二十歳くらいで左手に黒い指輪をはめているらしい」



「他には?」



「…………」



「無いんですか?」



考えてもいなかった。5キロ圏内に居るからすぐに見つかると思っていたけど、これと言って特徴がない。今更になって不安がよぎった。けどまだ明日ある。シュレイナは一週間以内と言っていた。平日は学校があるし、何とかこの土日で彼を見つけるしかない。気が付けば時計の針は十二時を過ぎていた。



「今日はもう遅い、風呂の用意はしてあるから先に入っていてくれ。私は後で入る」



「え!ひょっとしてルカ様と私が一緒に……」



「そんなわけないだろう」



「ですよね……」



そう言って瀬川は部屋を出た。その間に私は瀬川の分の布団を引きいつものスウェットに着替える。三十分程して瀬川が出てきた。ツインテールだった髪は解けて意外にも長かった。



「先にお風呂いただきました~」



「それじゃあ、私も入ってくる。今日は疲れたろう、私に気にせずもう寝てていいぞ」



「はい、分かりましたぁ」



そして私も風呂に入る、私の入浴時間は大体一時間ほどだ。芯まで温まってから出ないと落ち着かないんだ。そして時計の針は二時を差していた。しかし部屋にはまだ明かりが漏れている、まだ起きていたのか瀬川。



「明日は忙しくなるから寝てていいと言ったのに起きてたの……か?」



瀬川は寝ていた…私のベッドで。

漫画を読みながら…私のベッドで。

気持ちよさそうに……私のベッドで。



「こいつ……本当の私を知ってから言動が変わってないか?まぁいい、私も寝るとするか」



そう言って私は明かりを消し、敷布団の中に入った。明日から大変だ。どうやってサトルという人を探そうか……また明日、いや、もう今日か。考えるしかない………やはりベッドの方がいい。

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