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巨大獣の主

「ルカ様、先ほどの戦いは素晴らしいの一言でした!やっぱりルカ様は凄いです!」



私のビットラ戦を見てからというもの、瀬川が尊敬の眼差しを向けてくる。別に嫌と言う訳では無いんだが、少々引っ付かれて歩きにくい。



「瀬川、もう少し離れてくれないか。少し歩きにくいんだが……」



「……っは!私とした事が、申し訳ありませんルカ様!私、そんな事気にも留めずに図々しくルカ様の側近気取りで、驕ってました!離れて歩きます」



と言って瀬川は、私から少し離れて歩き始めた。そして後ろからはシュレイナたちの話し声が聞えてくる。



「ねぇ悟、あの二人ってどういう関係なの?見たところ歳は一緒くらいどけど、明らかにあの瀬川って子のルカの対応が変じゃない?」



私には聞こえてないつもりだろうが、丸聞こえだシュレイナ。そんなの言われても私だって不思議に思っているんだ、また説明するのも面倒だし……聞えないふりをしておいた方が妥当だな。



「ん~何でもルカの学校ではルカに尽くしている一派があるらしくてね、女の子だけで構成してるらしいよ、あの子はその中でもリーダー格でね、本当はルカだけをつれて来るつもりだったんだけど『自分もついて行く』って言うからさ」



「ふ~ん、女の子だけねぇ……まぁ良いわ。あの子もそれなりに戦えるだろうし、それに……いろいろと面白いわね」



二人がそんな会話をしていると、またしても前方から足音が聞えた。これは……かなり大きいな。



「ルカ様、何か来ますね」



「あぁ」



向こうの方から…随分と大きな……トラ?



「あっちゃ~これは巨大獣の巣の『主』が出ちゃったわね、でもまぁそれでも瀬川ちゃんには戦ってもらうけど…大丈夫よ!危なくなったら助けに行くから」



口ではそう言ってはいるけど、その表情は明らかに笑っていた。どうせ、瀬川が倒せないと確信したらすぐに自分で倒して威厳を見せつけるんだろう。性格の悪い人だなぁ。



「ルカ様ぁ、こんなの倒せませんよぉ」



瀬川が半泣き状態で私に助けを求めてきた、こればっかりは……。私は瀬川の肩に手を添えて何とか励ましの言葉を向けた。



「瀬川……頑張れ」



「はうっ!」



私は励ましの言葉を送ったつもりだったが、瀬川は顔面に拳を受けたかのようなアクションをした。



「うぅ、しかたありません。何とか頑張ってみます、私だってルカ様の役に立つんですから!うりゃー!!」



そう言って瀬川はトラっぽい猛獣に立ち向かっていった。あぁ可哀想に。



「私だってー!……おぅ!。どりゃー!……はうっ。まだまだー!……どしてぇ!?ルカ様ぁぁぁ!……がふっ!」



瀬川はトラに何度も立ち向かって行ったが、どうやらトラの方も空気が読めるらしく?片足だけで軽くあしらい、その所為もあって瀬川は多少の傷は負っても、致命傷には全く至らなかった。あぁ瀬川、お前はそんなになってまで頑張らなくてもいいんだぞ。今回は運が悪かっただけだ、また次の機会に勝てればいいんだから。



「ルカぁ、ちょっとは手伝ってあげてもいいんじゃない?あの子さっきから突撃してあしらわれての繰り返しよ。何とも思わないの?」



「それを言うならシュレイナ、あなただって瀬川にあんなのに相手させるなんて本当に酷いのはあなたじゃないの?」



「何を言うのよルカ、私は勝てそうにないなら助けに行くって言ったわよ」



しかしその表情はすでににやけていた。どうせ瀬川が危なくなったときに助けに行って自分の強さをアピールするつもりなんだろうな。そんな事をしている間にも瀬川の方も徐々に勢いが無くなって来た。そして……ついに瀬川が膝を付いてしまった。そこへトラが片足を振り上げる……あれはさすがにやばいかもしれない。そして私の考え通りシュレイナがさも面倒臭さを見せながら動き始めた。



「しょーがないわねぇ。私がちょっと揉んでやるわよっととと……あっ」



「あ!」



私の声は躓いてこけそうになるシュレイナと重なり、シュレイナはその体勢を維持できずにそのまま転んだ。このままだと瀬川が……!シュレイナ自信も起き上がろうとしたが、瀬川を助ける時間には遅すぎた。



「瀬川!」

「瀬川ちゃん!」



ただ一人名前を呼ばずに、呟いている人が居た。



「本当に運の悪かったなぁ………あのトラは。」



え?



次の瞬間、トラの前足は瀬川を押しつぶす前に弾かれた。そしてそのまま横向きに倒れる。シュレイナにも私にも何が起こったのかが分からない。この男性はどうやら分かっているようだが…。



「間一髪だったねー、瀬川ちゃん。それにしてもよく土壇場で使えたね。僕は心配してたよ」



悟さんは普通に瀬川に声を掛けている、そして当の本人はと言うと……。



「あ~もうっ!そんな事言うなら助けて下さいよ!せっかく隠してたのに台無しじゃないですか!?」



瀬川は立ち上がり服に付いた汚れを払いながら悟さんに怒鳴っていた。



「え、ちょっと悟さん!一体何が起こったんですか?説明して下さい」



「まぁ見てなって、ここからが瀬川ちゃんの本気だよ」



「瀬川の本気?」



じゃあ今までは本気じゃなかったって事?けど瀬川が本気になったところであんな大物倒せるわけが無い。それに本気にならずに、わざわざやられていた意図が分からない。



そこから先の光景は、トラが手も足もでずにただ瀬川に殴られているだけだった。私には何がなんだか分からない、瀬川、あなたは一体何なの?そして間もなくしてトラが力尽き煙となった。瀬川がこちらへ戻ってくる。



「ふーっ」



「瀬川!大丈夫なのか?」



「う~……」



瀬川がバツの悪そうな顔をして私に目を合わせない。



「瀬川ちゃん、僕が説明してもいいかな?」



「………はい」



「悟さん?」



「ルカ、落ち着いて聞いてくれ。瀬川ちゃんはね、戦いのセンスなら君よりも上なんだよ」



「………え?」

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