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瑠華の実力

「これからどうするの?シュレイナ」



「そうねぇ、一先ず練習も兼ねて『巨大獣の巣』へ行くのが妥当かしら。あそこなら今のあんた達でも倒せる獣がいるはずよ」



私と瀬川はそれぞれに魔法を悟さんから授かり、いきなり牙獣族や角獣族と戦う訳にはいかないので簡単な相手から徐々に慣らしていくらしい。それでも『巨大獣』って、一体どんな化け物だ?。私と瀬川は何度も牙獣族を見ている。口では説明出来ないほどに恐ろしい化け物だった。



「『巨大獣の巣』かぁ。懐かしいな、あそこでずっと修行してたっけ。あの頃はシュレイナ達に迷惑ばかり掛けてたよね、でも……あれはあれで結構楽しかったよ」



悟さんの昔の話かな。私の見る限りでは今は凄く強いけど、昔の悟さんはどんなだったんだろう。いや、それよりも今は『巨大獣の巣』だ。私達にも勝てるのかな。私の思っている事を察したのか、悟さんがフォローをしてくれた。



「大丈夫だよ、ルカや瀬川ちゃんはセンスあるし僕やシュレイナも付いてるからさ。自分のやりたいようにやれば良いよ」



そんな事を言っている間に私達は森の中の大きな洞窟の前に来た。ここが『巨大獣の巣』かぁ。



「さぁ行くわよ、相手は雑魚だけどここからは気を引き締めてね」



そう言ってシュレイナは歩を進め私達もその後について行く。



暫く歩くとシュレイナが早速足を止めた。向こうからは何かの目が光っているのが分かる。その二つの目が飛び跳ねながら徐々に近づいて姿を現した。



「………おぉ」



目の前の獣を見上げてある事に気付いた。



「キュウ?」



「シュレイナ、この生き物って……」



「えぇ、ビットラよ。まだ小さいわ、きっと子供よ。でも油断しないでね、子供のビットラでもその鋭い歯で腕を持ってかれた人も居るそうよ。特に今のこいつらは凄く…」



目の前の私の身の丈程の白い生物は間違いなく私達の世界で言う『ウサギ』だ、けど額に角が生えている。成る程…『ビットラ』か。実に分かりやすいな。これでも子供なのか、さすが『巨大獣の巣』だな。そしてシュレイナのその後の言葉も大体分かってた。さっきまで可愛かったこいつは思いっきりこっちを睨んで今にも飛び掛って来そうだ。



「……気性が荒いから」



「ギュー………ギュア!」



そう言い終える前にビットラが私に向かってその鋭い前歯を剥き出しにして飛び掛って来た。私は動ずることなくさっき教わった呪文を唱える。



突風(フェルシ)



私のゼロ距離からのフェルシを喰らい、ビットラは真っ直ぐに吹っ飛んだ。



「ギャウ!」



それを見ていた悟さんは呆けていた。



「僕もあの頃は中学生で最初は抵抗あったけど……こうもあっさりとやっちゃうとはねぇ」



「い、いえ別にそう言う訳じゃ……」



腕を持っていかれたって聞いたらそりゃあ、みすみす受ける訳にはいかないし、第一私はこういった系の可愛いものは好きじゃないんだ。そんな事をしている間にも一度飛ばされたビットラはまた戻ってきた。私はもう一度呪文を唱える、今度は火属性だ。



「『炎弾(ラグロン)』」



私の手から火の玉が飛び出し、ビットラに直撃し火達磨になったビットラは暫くすると動かなくなり煙となって消えた。



「この世界の生物はみんなこうやって消えてくの?」



私としてはその方がありがたいな、容赦なく倒したはいいけどその後の死体はあまり見たくはない。



「まぁそうね、牙獣族も角獣族も、他の生物達は大体命が尽きた時は煙になって消えるわ、そうならないのは私達天界人とかだけ。まぁ他にも居るんだけどね」



「ふ~ん」



「さぁルカ、もう一匹来たわよ。子供が死んじゃったから親が怒って来ちゃったのね」



シュレイナがやれやれといった感じで話していると向こうの方からドスッドスッと地響きが聞えた。見るとさっきの子ビットラの数倍はある赤い親ビットラが現れた。その目は明らかに敵意をむき出しにしている。



「ここからがお手並み拝見ね」



シュレイナが高みの見物をしている前で私は親ビットラと対峙した。試しに私はラグロンを撃ってみる、しかし普通に避けられてしまった。やっぱりこの大きさでも親はスピードがあるな。けど、これくらいなら余裕だ。私は何度か単発でラグロンを撃つ、全て避けられたけどさっきので核心した。



「じゃあ、これならどうだ?」



右手でフェルシを撃ち、避けた先にラグロンを撃つ。さっきから見ているとこの親ビットラは右にばかり避けている、それなら簡単だ。避けた先にラグロンを撃てばいい。しかしそう簡単にはいかなかった。避けた先にラグロンを撃つとビットラは急ブレーキをしてこちらに向かってくる。



「へー、単純って訳でもなさそうね」



私はビットラの突進を避け、すぐに正面に向き直った。そしてもう一度ラグロンを撃ち今度は逃げた先にフェルシを放つ、ただこのフェルシはビットラではなくビットラが逃げた先の壁へ。



「ギャウ?」



私がさっきからただ無駄にラグロンを撃っていた訳ではない。それに一回目の攻撃で当たらないと思ったその後の攻撃は少し魔力を弱めていた。そのおかげで壁が丁度いい具合に崩れかけでいる。そこにフェルシを撃つと…。



「ギャーウー!!」



逃げた先で岩が崩れると言う訳だ。崩れた岩の下敷きになったビットラはもう身動きが取れない。



「岩が邪魔ね、ちょっと強めの魔法で…『炎爆ラミケイル』」



ラグロンよりも少し強めの魔法で止めを刺した。親ビットラが煙となって消える。



「これでどう?シュレイナ……シュレイナ?」



シュレイナと悟さんはポケーっとしていた。私が近くまで行ってもう一度名前を呼ぶと、我に返ったようだ。



「……っは!えー、うん。いいんじゃない?上出来よ上出来」



口ではそう言ってるけど、多分内心驚いているだろうな。昔の悟さんを話を聞いていると親ビットラには少し苦戦したらしい、そこは持ち前の大魔力でねじ伏せたらしいが。



「そんじゃあ、今度は瀬川ちゃんの番ね。もう少し進んだら、また出てくると思うから。そん時は頑張ってね!」



「は、はい!頑張ります!」



そして私達は再び歩を進めた。私と瀬川が並んで前を歩き、シュレイナと悟さんは少し後ろに居た。



「ちょっと、何なのよあの子。いきなり親のビットラ倒しちゃうなんて、あたし達が助けて力を見せ付けたかったのに」



「まぁまぁシュレイナ、いい事じゃんか。二人ともこの調子なら十分戦えるよ」



そんな声が小さく後ろから聞えたが、二人のために何も言わないでおこう。

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