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再び異世界へ

学校へ到着した。けど私たちは正門からは入らない。



「今の時間帯は、運動部が活発な時間ですから。ルカ様と私がいるだけならまだしも、部外者がいるとさすがに怪しまれますからね」



と、言う瀬川の言い分を聞き私たちは人気の少ない裏門から入る。それでも学校の周りをランニングしている運動部に見つからないように慎重にだ。



「着きました。ここが、旧校舎です」



「ここかぁ……確かに、少しだけど魔力が感じられるな」



やっぱりそういうのが分かるんだ。今の私でもここはただの校舎にしか見えないのに。



「それじゃあ、行こうか」



一昨日に私が壊した鍵はまだ修復されていない。周囲を見回し誰もいないことを確認すると私たちは扉を開いて旧校舎へ入って行った。



そしてあの部屋へ辿り着き鏡の前へ立つ。



「これがその鏡か……二人とも、準備はいいかな」



「私は大丈夫です、けど……ルカ様?」



瀬川が心配そうな目で私を見る。やはりあのことが気になるか。



「悟さん、今更なんですけど……私が一回目にファリッサへ行った時は、この世界の時間は進み続けていました。悟さんの力で私達が行っている間に時間を止めることは出来るんですか?」



悟さんがこちらへ向き直り真剣な表情になる。



「そうか、僕の時とは違うみたいだね。………ごめん、それは僕にも無理だ。僕が『空間凍結』出来る場所と時間は限りがある。だから、世界中の時を止めることは出来ない」



やっぱりダメだったか。それにどこか一箇所だけの時間を止めても他の場所の時間は進み続けるんだから混乱が起きてしまう。



「僕はそれでも構わない、けど君達は……。今ならまだ間に合う、帰るなら今のうちだよ」



「「…………」」



今ここで帰れば、私はいつもの生活が再び繰り返される。別に今の生活に不満があるわけではない。危険と隣り合わせの生活か平穏な生活かと聞かれれば、大概の人は後者を取るだろう。



けど私は……。



「私は……行きます。自分でも理由は分からないけど、私が行かなくちゃって感じるんです。私の言ってる事、おかしいですか?」



「いや、そんな事はないよ。君の決心は堅そうだね。君はどうする?」



今度は瀬川に訊ねる。



「何度も言わせないで下さい、私はルカ様が行くと行けばどこへでもついていきますよ」



瀬川は胸に手を当てながら当然のように応えた。



「そっか、それじゃあ僕には止める権利は無いね」



そして私は鏡の前に立ち、そっと鏡面に触れた。鏡面は水の波紋のように波打ち徐々に景色が変わっていく。そして鏡の向こうには荒野が映し出された。



「後は鏡に入るだけです、悟さん」



「分かった、先に行くね」



そして悟さんが鏡に吸い込まれるように入って行った。私は瀬川の背中を押す。



「えぇ、次私ですか!?」



「どうせ後でも前でも入ることには変わりないんだから、さっさと行く!」



と言って私は両手で背中を押した。



「わわわわっ!いやぁぁぁ!」



瀬川の悲鳴は鏡に入った途端に消え失せ、後は私だけになった。



「シュレイナ、今行くね」



私も躊躇無く、鏡へと入っていく。今回は何の抵抗感も無く、ただ白い空間をゆっくり落ちていく感覚だった。そして目を開けるとそこには……。



「また、来ちゃったんだぁ」



一面荒野の風景だった。



「ここが、ファリッサ。随分と変わっちゃったな。あれから……八年が経つのか」



「八年前は、どんな所だったんですか?」



悟さんはどこか寂しそうな顔をしてゆっくりと応えた。



「ずっと草原に囲まれてて、綺麗な場所だったよ。それが今じゃあこんな所になってるなんてね」



「何もかもが変わってしまったんでしょうか」



一面草原だった所が荒野になるなんて、どんな力を使えばこんな事に。



「さて、こんな所にいても始まらない。ルカ、シュレイナの場所へ案内してくれ」



「分かりました、とりあえずこっちです。………あれ?」



何かが足りないような、いや、誰か?ここにいるのは私と悟さんと………。



「瀬川!?」



そうだ、瀬川がいない。一体どこへ行ったんだ?確かに悟さんと私の間に入ったはずなのに。



「悟さん!瀬川がいません!」



「えぇ!?そんなはずは……でもあの子が出てくるのを、僕は見てない。一体どこに」



そんな時に向こうの方から声が聞えた。



「………ぃ~やあぁぁぁ!誰かあぁぁ!」



見るとそこには二匹くらいの化け物に追われている瀬川の姿があった。



「何であんなところに!?とにかく助けないと」



そう言うなり悟さんはその場から消え、すぐに瀬川の所へと辿り着き、左腕からいきなり剣が現れ二匹の化け物を両断した。



「大丈夫?もういないよ」



「あ、あぁありがとうございます」



瀬川は涙目になって声も震えていた。そこへ私も駆けつける。



「大丈夫か?瀬川」



「はい、大丈夫ですルカ様」



「それじゃあ仕切りなおして、行こうか」



瀬川も落ち着いたところで、私を先頭に三人で歩き始めた。





ルカ達のいない世界、旧校舎付近では二人の中年の男が話し合っていた。



「最近、旧校舎の老朽化が進んできましたな」



「そうだなぁ、そろそろ業者などに頼んで取り壊してもらうしかないようだ」



「しかしその話もいつの間にかなくなりましたよね、改めて業者に連絡を入れてみますか?」



「その方がいい、万が一校舎が崩れて生徒が被害に遭ったら大変だ」



「それでは、明日にでも連絡を入れてみましょう」



「あぁ、そうしてくれ」

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