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出発の朝

次の日、いつもと変わらない朝が訪れた。部屋にある時計は七時半過ぎくらいを指している。約束の時間まで約一時間半、私はいつもの様に髪を梳かし、顔を洗い、歯を磨く。いつもと違うのはここからだ。動きやすい服装に着替える。私の学校指定のジャージだ。そして部屋に戻り時計を確認する。



八時四十五分。



ちょうどいい時間だ。私はカバンを持ち部屋を出ようとする前にもう一度自分の部屋を見回した。いつもと違い綺麗に片付いている。



「もうこの部屋に来ることは、無いのかな」



そして机の上にある手紙を確認する。両親に宛てた手紙だ。それだけ確認すると私は部屋を出て階段を下りそのまま玄関に向かう。その時、背後に気配を感じた。



「ルカ姉?」



「!?」



振り向くとそこには、弟の姿があった。一応紹介しておこう。



私の弟、本条 れん。私とは三つ離れている弟だ。背丈は私より小さいが中三ならまぁそこそこ大きい方だろう。友達も多く、その友達が家に遊びに来た時は私を見るなり、一目惚れをする者が結構いた。その度に弟は困っていたので最近は自分から遊びに行くことが多い。



「どうしたんだよ、いつもより早いじゃん。その格好……学校のジャージだろ?それにその荷物は…」



必要最低限とは言ってもいつも持ち歩かないカバンだ。さすがに不思議がるだろう。



「まぁ、別にいいんだけどさ。俺もっかい寝るから、お休み~」



そう言って二階へ上がろうとする弟を、私は後ろからそっと両手を回した。



「ちょっ、何だよルカ姉。いきなり!」



私たちは普段からこういう事はしていない。私の行動に困惑するのは当たり前だろう。



「レン、私は少しの間、家を空ける。その間、お前はお母さん達を守ってやってくれ。大丈夫だ、すぐに帰ってくるから」



私が手を離すと、レンはこちらを向いた。



「何だよそれ、どっか行くのか?」



質問には応えず私は靴を履きドアに手を掛ける。



「それじゃあ、行ってくる」



「………ルカ姉」



ドアを閉める瞬間にレンの声が聞えたが、私はそのまま公園に向かった。




~場面変わり、公園~




公園に到着すると、そこにはすでに二人の姿があった。もちろん、瀬川と悟さんだ。



「ルカ様ー!おはようございます」



「おはよう、ルカ」



「おはよう、瀬川、悟さん」



二人に挨拶を交わすと、早速悟さんが動き始めた。



「それじゃあ三人揃ったところで、出発しようか。と、その前に……」



悟さんが辺りを見回す、何かを数えているようだ。



「どうかしたんですか?悟さん」



悟さんはこちらを見ずに、応える。



「いやぁ、今回は団体で来たようだ。招かれざる客達がね」



そう言っている間に、散歩をしているおじさんや犬を連れた男性など、合わせて十人くらいの人たちがこちらにやってきた。この人たちって…まさか!?



「え、えぇぇと、何なんでしょうか?何で私たち囲まれてるんでしょう」



瀬川は訳の分からないまま、ただ戸惑っていた。



「二人とも、ちょっとの間だけじっとしてて。すぐに終わるから……『旋風(フォルミス)』」



悟さんが何かの呪文を唱えると、突然、私たちを中心に風が巻き起こり私たちを囲んでいた人たちが吹き飛ばされた。



「さてと、行くよ、オーフェル」



そう言うと悟さんはその場から消えた。公園の周りから、何かが斬れる音がする。



一体何が起こってるの?何かが動いているのは分かる。けどそれが何なのかが全く私には分からない。瀬川は相変わらずおどおどしているし。私は周囲を確認した、すると悟さんの姿が確認できた。彼はそのままこっちへ走る…と言うより、一蹴りでこっちへ飛んできた。手に何かを持っている。



「伏せて!」



その言葉を聞き私は瀬川の腕を掴み、その場にしゃがみ込んだ。すると………。



「ギャオォッ!」



また何かが斬れる音と、昨日聞いた化け物の呻き声が同時に聞えた。後ろを振り向くと、やはり昨日の化け物が胴から上が真っ二つにされて、そして煙となって消えた。



「ふ~危なかった、全部終わったよ。ルカ」



もう一度周囲を確認する。不思議とさっきよりも静かになっていた。



「さっきのは…昨日の化け物ですか?」



「あぁそうだ、単体じゃ勝ち目が無いと踏んだのか、数を増やしてきたけど…僕の相手じゃないね」



やっぱりこの人、強い。あの数を相手にあの動きで、息一つ切れていない。



「さぁ、仕切りなおしだ。行こう」



と、手を差し伸べた。私はその手を掴み立ち上がる、瀬川はまだ目と耳を塞いでいた。



「瀬川、もう大丈夫だ。行くぞ」



「……はい」



私はその手を引いて、悟さんと学校へと向かった。この先、瀬川は大丈夫だろうか。きっとファリッサではこれ以上に危険な目に遭うはずだ。それを悟さん一人にばかり任せてはいられない。私だって、ただついていくだけじゃダメだ。悟さんの足手まといにならないようにしないと。



私が自分の決心を固めていると、悟さんが歩きながら喋りだした。



「向こうに行けば、君だって戦えるようになるさ。二人には期待しているよ、特に君にね……瀬川ちゃん」



(え、私じゃなくて……瀬川?)



初めは聞き間違いかと思ったが、悟さんははっきりと瀬川の名前を口にした。私がその理由を知るのはまだ先の話である。

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