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荷物は最小限に

私と『荒川 悟』は気絶した瀬川を肩に担ぎ一先ず私の家に向かっていた。その間に『荒川 悟』は何も聞いてこなかったけどそれは私も同じだった。今聞いたところで家に着くまでに全て話し終える事は出来まい。それならいっそ私の家でゆっくり聞いてもらった方がいいだろう、それに万が一誰かに聞かれてもまずい。



「ここが私の家です、今は誰も居ませんから、どうぞ」



父は土曜日でも仕事に行っていて母は近所のお母さんがたと買い物で暫くは帰ってこない、祖父はこの時間は散歩に出ている、そして弟はおそらく友達とどこかに遊びに行っているだろう。だからこの家には今はペットのミュウしかいないことになる。



「じゃあ、おじゃまします」



部屋に入って瀬川をベッドに寝かせる、そして……。



「さて互いに聞きたい事は山ほどあると思うけれど……まずは僕の方から聞いていいかい?」



『荒川 悟』が私に訪ねる、私も聞きたい事はあるけどどちらが先というのは別にどうでもいい。



「えぇ、どうぞお先に」



「ありがとう、じゃあまず、君たち、主に君のほうが知ってるのかな。シュレイナとの関りを教えてほしい。どうやって知り合ったのか、そして僕を探している理由もね」



「はい、私は………」



私はありのままを包み隠さず話した。旧校舎の事、現在のファリッサの事、そして……。



「だからシュレイナはあなたをファリッサにつれてきてほしいと言って私にあなたを探させたんです。『荒川 悟』さん」



一通り話し終えた後、私は『荒川 悟』の様子を窺った。彼は信じられないと言うような顔をしながら、ただ黙っていて、やがてゆっくりと話し始めた。



「……そうか、じゃあすぐにでもファリッサへ行かないといけないな」



意外にも冷静だった、もっと慌てると思ってたけど案外普通なんだな。



「君たちはどうする?案内さえしてくれれば僕は一人でもいい、ついて来るのかい?」



「私もついていきます、私も何か力になりたい。けど…」



もちろん私はついていくつもりだ。けど、瀬川は……。



すると瀬川が目を覚ました。



「ん~、はっ。ルカ様、ごめんなさい!私、気絶してしまって、あの化け物は……」



「そこにいる悟さんが倒した、ここは私の家だ。安心していいぞ」



「はぁ」



そんなとき、何故か視線を感じた。言うまでもなく悟さんだ、私の方をじ~っと見ている。



「え~っと、私に何か付いてますか?」



「いやぁ、少し気になってね。さっきもそうだけど、その子が君の事を『ルカ様』って呼んでるから。ちょっと疑問に思っただけだよ」



「あ、それは~………」



少し顔を逸らしたくなった。ずっとこの呼び方に慣れていたせいか、確かによくよく考えれば恥ずかしいな。~さんならまだしも様付けって一体どこのお嬢様だって言いたくなるだろう。そこへすかさず瀬川が説明する。



「それは当たり前のことです、ルカ様は私たちの学校では高貴な存在。そうお呼びするのは当然のこと、まぁ多少は私たちと変わらないところもありますが……とにかくルカ様はルカ様なんです!」



瀬川の熱弁に圧倒される悟さん、ドヤ顔の瀬川。そしてもう死んでしまいたい私。



「そっか、じゃあ君の事は『ルカ様』って呼べばいいのかな?」



笑顔で悟さんが私に訪ねる、それは、それだけはダメだ。何としてでも訂正しなければ。



「いえ!様なんてつけないで下さい、私はそんな人間じゃありませんしましてや年上の人から……」



自分で顔が赤くなっているのが分かった。



「じゃあ、『ルカ』」



呼び捨て!?でもまぁ、様をつけられるよりは、いいか。



「はい……もうそれでいいです」



「よろしくな、ルカ」



そう言って悟さんは何の迷いもなく手を差し伸べた、しかしそこへ、瀬川が割って入った。



「たとえ年上でも、許可なしにルカ様と握手とするなんて……ぐぇっ」



言い終える前に私は黙って瀬川を押しのけた、そんな恥ずかしい事を堂々と言わないでくれ。そういえば…同年代の男と握手をするなんていつぶりだろう。ずっと親衛隊に守られてきたからな。



それだけ出会いも無かったという私は内心少し嬉しかったりする。互いに握手を交わした後話しに戻る。



「それでさっきの話の続きだけど、ルカはファリッサについてくると言ってるけど、君はどうする?」



悟さんが瀬川に話を振る、瀬川は鼻で笑った後立ち上がり何故か軍人のような敬礼をした。



「ふっ、愚問ですね。私もついていきます!ルカ様を守れるのは私だけですから!」



むしろ私はあの世界で瀬川をどこまで守りきれるかが心配だ、人のことを言えたわけじゃないが少なくとも私の方が瀬川よりも戦える気がする。



「ルカの話を聞く限りでは今のファリッサは僕がいた頃よりもずっと危ない場所だ、それに僕だって二人をどこまで守りきれるか分からない。それでもいいなら」



そうは言ってるけど、シュレイナの話では悟さんはいつも自分より仲間や他人までもを優先して戦っていた人だ。その気になれば自分が犠牲になろうとする。けどそれじゃあダメだ、私も…自分がどのくらいファリッサで通用するかはわからないけど、足手まといにはなりたくない。



そして私たちは次の日にファリッサに行くことにして悟さんを一先ず家に帰した。



「瀬川も親が心配するだろう、今日はもう帰って明日の準備をしてくれ。向こうで必要なものが結構あるはずだ」



「分かりました、明日もいろいろと準備してきます」



そして瀬川も自宅へ帰っていく。私は自分の部屋に戻り早速準備を始めた。考え始めれば必要なものはどんどん出てくる。今のうちから始めておいたほうが無難だろう。しかし持ち込みすぎが原因で向こうで化け物に襲われたら身動きが取れなくなるかも知れない、やはり荷物は最小限の方がいいな。



「よし、まずフ○ンタとじゃ○りこは必須だな」



荷物は最小限にな。カバンはどうしようか、ロッカーを開けて手ごろなカバンを探す。



「え~っとカバンカバン……あ、」



今更になって大事なことを忘れていた。私が一度ファリッサに行って帰ったときに時間はそのまま進んでいた。おそらく一日で全てが終わることは無いだろう。となると……。



「学校が……」

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