事故
朝だ・・・。
ベッドから起きる。
さなかと茜は起きているようだ。
だが、まだ起こしには来ていないようだな。
着替えを済ませ、リビングへと向かう。
・・・?
下から話し声が聞こえない。
いつもなら2人でなにか話しているはずなんだが・・・。
何かあったのだろうか?
リビングに入ると、絶望したかのように固まっている2人がいた。
明らかに何かがあったようだ。
嫌な予感しかしない・・・。
俺の予感はよく的中する。
なんか・・・怖いんだが・・・。
ホントに・・・何があったんだ?
リビングに入る。
「なぁ・・・2人とも、何があったんだ?」
さなかは黙ったままうつむいていた。
・・・よくないことであることはわかった。
テレビではニュースをやっていた。
今の報道は動物園にぱんだが来たと、いかにも喜べる話題だ。
俺が来る前に何かあったのだろう。
さなかの代わりに、茜がこちらをに振り向き、この状況の訳を説明してくれた。
「達也の両親が・・・旅行先で・・・通り魔にあったらしい・・・。」
は・・・?
親父と
母ちゃんが
通り魔にあった?
まさか・・・!!
「そして・・・病院に搬送されて・・・死亡が確認されたらしい・・・。」
嘘だ・・・!
これは夢だ!!
そんなことがあるはずない!!
そんな・・・ことが・・・。
「嘘だ・・!嘘だ!嘘だ嘘だ!!!」
もう近所迷惑など考えられないほどに叫ぶ。
どれだけ嘘と叫んでも、さなかの状態と茜の態度でわかる。
どんなに現実から目をそむけようと、現実は突き付けられる。
「達也・・・。」
茜が心配そうな目で俺を見てくる。
もう犯人への怒りしか思えない。
犯人は・・・!
「犯人は・・・捕まったのか!?」
茜はうん、とうなずき、東京の留置所にいると言った。
その瞬間、勝手に足が動いた。
玄関のドアを開け、外に出る。
雨が降っていた。
だが、そんなものは関係ない。
犯人をとにかく殴りたい。
捕まってもいい、とにかく復讐をしたい!
東京まではかなりの距離があるが、何も考えず、ただ突っ走ろうとした。
だが、肩を掴まれ、止められた。
茜かと思ったが、以外にもさなかであった。
止めんなよ・・・!!
止めんなよ!ちくしょう!!
乱暴にさなかの手を振りほどき、また走ろうとする。
だが、さなかにまたも止められた。
「達也のしようとしてることはわかってる!だけど、それをしても絶対に達也の両親は喜ばない!悲しむだけだよ!!」
さなかの言ってることもわかる・・・!
だけど!!
犯人に怒りを感じるのが悪いのかよ!!!
こぶしを握り締め、歯を食いしばった。
「さなかは、両親を失った奴の気持ちがわかんねえだろ!!だからそんなことが言えるんだろ!!」
さなかの言ってることはわかる・・・。
わかるんだけど・・・!!
親を失ったんだ!これくらいの怒りくらい持って当然じゃないのか・・・!?
「もっとちゃんと考えてよ・・・!!そんなことしたら・・・犯人と一緒じゃない!!」
・・・!
く・・・それを言われると、反論のしようがないな・・・。
暴力で解決するのは悪いことだしな・・・。
「私の好きになった男なんだから、しっかりして!!」
っ!!
・・・そう言えば、まだ答えを決めてなかったな・・・。
俺は、さなかのことが・・・
「さなか、俺、お前のことが好きだ。」
今なら言える。
なにか・・・落ち着いている。
さなかが俺を必死で止めてくれたからか・・・。
「え・・・?」
こんなときに言うもんだから、そりゃ、え?、と聞き返すよな・・・。
何回でも言ってやるさ!
「さなか、俺はお前のことが好きだ!」
さなかの手を、今度はできるかぎりやさしくどけ、さなかを抱きしめる。
雨でで濡れてるからよくわからないが、泣いていた。
さなかも、俺に抱きついてくれた。
雨の冷たさなんか吹き飛ばすくらいに、温かかった・・・。
しばらくその状態でいて、風邪をひくからと、家の中に入った。
茜が頭を抱えて椅子に座っていた。
たしかに、親父たちは死んでしまったけど、それを認めざるを得ない。
だが、犯人にはきちんと裁判所から審判が下されるはず。
いつまでもぐずぐずしてないで、前を見て歩かなきゃならない。
「茜、もういいんだ。」
頭を抱えてる茜の頭を、ぽんと叩く。
茜は頭から手をどけ、俺たちの方を見てきた。
「・・・なにがあったんだ?」
茜が不思議そうに俺たちの方を見てきた。
当たり前だろう、さっきまで怒り狂ってた男が、急に冷静になって帰ってくるもんだからな。
「もう、現実を認めて前へ歩くしかないんだ。犯人にはきちんとした審判が下されるはずだし、なによりいつまでもこんな感じだと親父たちがあの世で悲しむだろ?」
あえて笑顔で答える。
茜は、そうか、とうなずき立ち上がる。
「達也は取られちゃったか・・・。」
は・・・?
今の話とそれは、なんの関係があるんだよ・・!!
ていうかなんで知ってるんだ・・!!
「あんな大きな声で告白したら、こっちまで聞こえてくるさ!」
ははは・・・と笑いながら俺たちの顔を見てくる。
だが、俺とさなかもつい、笑ってしまった。
そうだ、さなかと俺は今から恋人同士として生活していく。
なんだか実感がわかないが・・・。
「よし、2人とも、キスして見たらどうだ?」
はぁ??
と、息ぴったりに反論した。
人前でキスなんかするわけ・・・!!
しかし、思わずさなかの方を見てしまう・・・。
さなかも、俺を見ていた。
「「・・・。」」
黙りこくってしまう・・・。
いや、正直に言うと、してみたいかな・・・という・・。
すると、さなかが目を閉じ、受けの態勢に入った。
口元が歪み、恥ずかしそうだ。
「・・・ったく・・・。」
さなかの顔に近付く。
もうちょっと近づけば・・・キス・・・。
なんだか、ここまで来るともう緊張感がなくなってしまった。
「ん・・・。」
俺の唇とさなかの唇がかさなった。
さなかが目をつむったまま俺の両肩に手を乗せ、十数秒間のキスが完了した。
さなかの顔が真っ赤だ。
俺の顔を多分、真っ赤だろう・・・。
茜の方を見ると、二シシと笑っていた。
計画どおりってか・・・。
その日は、大変悲しい日でもあり、大変充実した日でもあった・・・。




