表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグ

 ワン・スキル・オンラインというゲームがある。


 一般的なゲームと同じようにスキルを使って冒険するゲームだが、ひとつだけオンリーワンな点がある。


 それは、一人一人の能力が『一点もの』という点だ。


 たとえば、火の魔法なんてものは、一般のゲームでは誰でも使えるありふれたスキルだが、この世界では、火の魔法の使い手は『一人しか存在しない』。


 他のスキルも同様、水の魔法の使い手は一人しかいないし、治癒の力の使い手も一人しかいないし、他のどんなスキルでも同じだ。


 プレイヤーが手にできるのは、ゲーム開始時にランダムに与えられるたった1つの能力で固定される。


 一度決まったら、スキルの変更は不可能。


 リセマラをしても無意味。


 何度やり直そうと、一度決まったスキルが与えられ続ける。


 プレイヤーは、最後までそのスキルで道を切り開いていくしかない。


 つまりは、ゲーム開始時点で全てが決まる運ゲーと言っていい。


 チートスキルが当たれば無双できるが、スキルガチャで敗北し、ショボいスキルに当たったら、その時点で詰んでしまうという鬼仕様。


 大手の会社が運営し、クオリティーやゲーム性は高いので神ゲーと呼ばれる一方、外れスキル持ちのプレイヤーからは、クソゲーのそしりを受けている。


 中には、スキル【お皿から小さな豆をお箸でつかみ、別のお皿に上手に移動する】なんてものもあるのだから、笑える。


 こんなスキルでどうやって冒険しろと? 魔王を倒せと?


 俺がもしそのスキルにあたっていたら、すぐさま他のゲームに鞍替えしていただろう。


 しかし、それでも、このゲームを続ける外れスキル持ちのプレイヤーもいる。


 さっきは極端な外れスキルを紹介したが、他には、スキル【乾かす】なんてものがある。


 文字通り、乾かすことしかできない外れ能力だ。


 たとえば、洗濯物を乾かすことには最適なスキルだが、戦闘においてはなんの役にも立たない。


 一応、相手の肉体を極限まで乾かして水分を奪い、倒すことも可能は可能らしいが、そこまでスキルの効果を発揮するには、かなりのレベルが必要だ。


 しかも、このゲームでは、レベルに複数の種類が存在する。


 スキルレベル、戦闘レベル、仕事レベル、遊びレベルなどなど、その種類は多岐にわたる。


 そして、スキルレベルはスキルを使ってモンスターを倒した場合のみ上げることができ、仕事レベルは依頼を受けて生活面での仕事をこなすことで上げることができる。


 つまり、スキルレベルを上げるために、スキル【乾かす】でモンスターを倒したりしないといけないのだが、そもそも、こんな外れスキルでモンスターは倒せないのだ。


 ぶっちゃけ、スライムすら倒せない。


 剣などの武器を使ってモンスターを倒しても、上がるのは剣術レベルや身体レベル……総称して、戦闘レベルが上がるだけなのだ。


 無論、その条件ではスキル【乾かす】でレベル上げなどできないので、そのプレイヤーはあきらめて街でクリーニング屋を開き、仕事レベルを上げるまくることにしたそうだ。


 そして、スキル【洗浄】を持つプレイヤーと組んで経営をはじめたところ、大繁盛。


 どんな洗濯物でも一瞬で綺麗になって乾くと有名になった。


 ゲーム内で稼いだお金は現実世界で換金できるので、「こっちの方がいいじゃん」と冒険そっちのけで商売に精を出していたりする。


 このように、外れスキル持ちのプレイヤーは、ゲーム内で経営をしたり、モンスターのいない高原でキャンプしたり、畑作業をしたりして、楽しんでいる。


 逆に、戦闘向きの当たりスキル持ちのプレイヤーは、未開拓の地を冒険したり、魔王討伐の旅に出たりしている。


 つまり、このゲームは自由度が高いため、たとえ、外れスキルでも楽しめるようになっているのだ。


 それが、このゲームが全世界で人気の理由といって言い。


 そして、俺、神宮ヒロが手にしたスキルは、【無限】。


 文字通り、任意の対象に無限効果を付与する力。


 たとえば、俺が剣を手に、モンスターめがけて、一振りしたとしよう。


 通常、モンスターに与えられるダメージは、1回だ。


 しかし、【無限】スキル持ちの俺は違う。


 ただの一振りの攻撃が、無限となってモンスターを襲う。


 一撃一撃は弱くとも、それが無限に与えられればひとたまりもない。


 無限は、1の集まりなのだから。


 つまり、俺はどんなモンスターでも、1回分の労力で無限の攻撃を与え、倒すことができる。


 また、この力を別のことに使ってみる。


 ここに、1個のパンがあったとする。


 俺がスキル【無限】を使うと、パンを無限に増やすことができる。


 食料には困らないわけだ。


 また、所持金が1ゴールドしかないとする。


 しかし、スキル【無限】を使えば、お金を無尽蔵に増やすことができる。


 無限大富豪だ。


 言うまでもなく、当たりスキルだ。


 それも、この世界で最高峰の。


 しかも、このスキルを使えるプレイヤーは、未来永劫俺しかいない。


 このスキルは、ステータスにも使用可能なので、攻撃力無限とか防御力無限とかの小学生発想を実現することもできる。


 レベルだって、普通は1からスタートだけど、俺だけレベル無限からスタートなのだから、もはや笑える。


 当たり前だけど、俺はこのスキルを使って無双した。


 ゲーム開始時点ですでに最強なのだから、さくさくと冒険を進めてあっという間に魔王を倒した。


 王様や王女様、お姫様、救った民から感謝され、称賛され、他のプレイヤーからはうらやましがられまくった。


 お礼にお姫様と結婚して良い思いもしたし、どこへ行ってもなんでもできるから、やりたい放題やった。


 最初からステータスMAXだとつまらないかと思ったけど、このゲームの自由度のおかけでそんなことはなく、俺にとってこのゲームはまさに天国だった。


 ずっとこの世界にいたいくらいだ。


 ……と、思ってはいたけど、


「よく来た勇者たちよ。そなたたちには、我が王国のために働く権利を与える」


 偉そうな王様が偉そうにそんなことをのたまっている。


 辺りは荘厳な作りの建物で、一目で王宮内にある王の間であることがわかるし、王の間の両端には、ずらっと、強そうな騎士や頭の良さそうな大臣たちが控えている。


 そして、王の間の中央でぽかーんとしているのは、俺と、俺が所属するクラスの生徒30人+担任の先生。


「え?なにこれ?」


「何が起きたの?」


「あの人、誰?王様?なんで?」


 みんな、何が起きたのかわからず、混乱している様子だ。


 まあ、当たり前の反応だ。


 さっきまで、普通に教室にいて、授業を受けていたのだから。


 それが、いきなり教室の床に巨大な魔法陣が現れ、激しい光に包まれたと思ったら、気がついたらファンタジー世界に放りまれ、偉そうな王様から命令されたのだから。


(ここ、リステイン王国じゃないか?ワン・スキル・オンラインの)


 みんなが動揺する中、俺はそのことにいちはやく気づいた。


 王様や、立ち並ぶ騎士たちの容姿、王の間の造りが、まさにそのものだからだ。


(最悪の国じゃねえか)


 ワン・スキル・オンラインでは、いくつかのゲームスタート展開が存在する。


 はじまりの街や森の中で目覚めたり、転生として貴族の家の子供として生まれたりする。


 それも、スキルと同じく、ガチャのように運要素で決まるのだが、中には、強制召喚スタートというものが存在する。


 どっかの王国が、勝手に異世界から勇者を召喚し、魔王を討伐してくれとか言うのだ。


 本当に世界のことを想う国に召喚されればまだいいが、このリステイン王国は最悪中の最悪。


 その目的は世界平和や魔王討伐ではなく、自国の利益拡大。


 つまり、自分達の国を豊かにするために、勇者を召喚して戦争の道具にしちまおうと考えるクソ国家だ。


 その国の王…今、目の前にいるおっさんは、勇者を奴隷としてこきつかうクズ野郎だ。


「では、これより、そなたたちの能力を調べる。各々、自らのスキルを王にご報告せよ」


 一番王のそばにいるこれまた偉そうな大臣が、動揺するクラスメイトたちに命令する。


 この世界に召喚された瞬間から、自分の頭の中にスキルの名前や能力の詳細が浮かんでいるから、言われたとおり、教えることはできるが、教えたところでろくなことにはならない。


 だが、王は、玉座にふんぞりかえり、「どうした?はやくせぬか」という態度だ。


「なにこれなにこれ?」


「どうすればいいの?」


 気の弱い女子は、泣きそうだ。


 なかには、この世界がワン・スキル・オンラインとそっくりなことに気付いている男子もいるみたいだけど、動揺が隠せていない。


 いや、気付いているからこそか。


 この異世界召喚展開が外れであることを知っているから。


「なにをしておる?王の御前であるぞ?はやくせよっ!」


 じれたのか、大臣がキレてくる。


 それで、泣きそうだった女子が、とうとう泣いてしまう。


 しょうがない。


 俺だってまだ動揺してるけど、こうなった以上、やるしかないよな。


 そう決めた俺は、自ら進んで王の前に歩み寄る。


「うむ。では、報告するがよい」


 大臣がそう促し、王はふんぞりかえって威厳を見せつけながら、俺の言葉を待つ。


 そんな王に向かって、俺はこう言いはなった。


「おい、おっさん。えらそうにしてんじゃねーよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ