表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

第一話「戦の前に、人は妖となる」




 戦は、始まる前が一番醜い。


 裏切りが決まり、

 密書が飛び、

 味方だった者の首に値段がつく。


 刀はまだ抜かれていない。

 だが、人の心はすでに何度も斬られていた。


 若き武将・**朝倉あさくら 景真かげま**は、

 地図の前で一人、立ち尽くしていた。


 敵よりも怖いのは、味方だ。

 その事実を、彼は理解し始めていた。


「……殿」


 声をかけたのは、従者の少年だった。

 名を弥助という。


 弥助には、ひとつだけ妙な力があった。

 人が“嘘をつく直前”、

 胸の奥がひどく軋む。


 理由は分からない。

 生まれつきだ。


 弥助は、今まさに、

 この陣の中で何人もの人間が

 嘘をつこうとしていることを感じていた。


「……何かあるか」


 景真の問いに、弥助は答えられなかった。

 力はあっても、確証はない。

 疑いを口にすれば、人は死ぬ。


 その夜、裏切りが起きた。


 弥助は知っていた。

 だが、止められなかった。


 血の匂いの中、

 景真は命じる。


「斬れ」


 それは正しい判断だった。

 少なくとも、この戦に勝つためには。


 遠くで、

 誰かが、静かに笑った気がした。


 振り返っても、そこには誰もいない。


 ただ、陣の奥の上座に、

 一瞬だけ――

 **“席がある”**ように見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ