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【第一章完結】霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~  作者: 犬型大
第二章

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67魔物とは2

「ぐふっ!」


 俺は片手を剣から放してギュドスの顔面を殴りつける。

 決して綺麗な戦い方ではないけれど、殴るなとは言われていないし悪魔が相手なら殴ったって戦う。


「このっ……!」


「…………アイツ!」


 俺はトドメを刺そうと剣を振り上げる。

 殴られてふらついたギュドスは俺のことを睨みつけ、体から魔力の黒いオーラが漏れ出した。


 訓練教官の顔色が変わる。

 たとえ木剣でも魔力のオーラが込められれば人を容易く殺せる武器になる。


 ただし、当たれば。

 下から突き上げるようにして頭を狙った一撃をかわした俺は、木剣を捨ててギュドスの腕を取る。


「ああああああっ!」


「なっ……」


 そしてグッとねじり上げると、そのまま腕を折った。


「まだ、続けるか?」


 ギュドスが持っていた木剣を奪って首に押し当てる。

 最後の通告。


 これでまだ諦めないのなら手足はあと三本残っている。


「そこまでだ!」


 訓練教官が俺の肩を掴んでギュドスから引き剥がす。


「……腕を折ることまではなかったのではないか?」


「本気でそう思いますか?」


 治療のために待機していた聖騎士がギュドスを訓練場の端に連れていく。

 俺は睨みつけるような目をする訓練教官を、まっすぐに見返す。


「あいつは禁止されていた魔力を使いました。俺が魔を使えるならともかく、聖ですよ? 身を守らねば死んでいたかもしれません」


 表向き俺は神聖力しか扱えないことになっている。

 神聖力は自分に使えない。


 となるとギュドスが魔力を使っても神聖力で対抗するなんてことできないのだ。

 たまたま俺が強かったからなんともなかったが、一歩間違えればかなり危険なことになっていた可能性は否めない。


 それこそ骨を折るどころか、魔力がこもった木剣が頭を貫いていたかもしれない。


「それは……そうだな」


 俺の反論に、顔をしかめた訓練教官は渋々頷く。


「あいつは俺を殺そうと殺気を放ってましたけど、俺はあいつを殺さずに止めました」


 殺してもいいのなら手段を問わずに止めることだってできる。

 だがそうしないで制圧した。


 ギュドスが怒られることがあっても俺が怒られる謂れはないと肩をすくめる。


「はぁ……そうだな。悪いのはあいつだな」


 聖騎士は実力主義にも近いところがある。

 負けを認められず魔力を使って、さらにはそれでも制圧されたギュドスが悪い。


 結果を見ると俺が無事で、ギュドスが骨を折られたから俺がやりすぎだと一瞬なりかけた。

 だがよく考えるとやりすぎに近いものはあるものの、俺の行動は正当性も認めることができる。


 こんなことしてるから奇公子なんて呼ばれるのだ。

 そう思いながらも、ヘコヘコとしてやるつもりないのだから実力差を認めなかったギュドスが悪い。


「まあいい。訓練を続けるぞ」


 死ななきゃ神聖力で治せる。

 やはり最初に魔力を使ったギュドスの罪を重くみて、訓練教官はため息混じりに俺を追及することをやめた。


 再度魔力を使うことを厳重に禁じて、研修生同士の手合わせは続く。


「へぇ、思ったよりやるもんだな」

 

 クレンシアは女生徒と戦っていて、思いの外強かった。

 ただの箱入りお嬢様かと思ったけれども、基礎はしっかりとしているようだ。

 

 思えば走り込みでも順位こそ中盤だが、最後までペースを崩すことなく走り切っていた。

 体力もそこそこあるし、剣の腕前も悪くない。

 

 聖騎士になりたいというのはお遊びではなさそうだと感じた。


「一通り実力は見せてもらった。まだまだな者もいれば、すでに聖騎士として恥ずかしくない実力を兼ね備えた者もいる」


 列に並んだ研修生を、訓練教官は一瞥する。

 訓練教官の後ろでは、聖騎士たちが何か大きな箱のようなものを運んできている。


 布がかけられていてよくわからないが、嫌な気配がすると俺は思った。


「だが実力があっても一つ乗り越えねばならないことがある。それは……これだ」


 訓練教官が手を上げて合図すると聖騎士が箱にかけられた布を外す。


「おおっと……」


 研修生たちがざわつく。


「今日最後の訓練は魔物に慣れてもらうことだ」


 箱は鉄の檻になっていた。

 そして中に入っていたのは魔物だった。


 肉の塊のような丸い形をしていて、丸い体全体のところどころから手が突き出ている。

 そして人の顔のようなものも、手と同じく体全体に散らしたように見えていた。


 嫌な肉団子だと俺はとっさに考えた。

 研修生の中にはその醜悪な見た目に、目を逸らしている人もいる。


 流石聖騎士候補はここで吐く人はいない。

 だが顔を青くしている奴はいた。


 俺としては魔物に対してほんの少し不快感を覚えていた。

 どうせ魔物にするなら人と分からないぐらいに変容させてくれればいいものを、と思ってしまう。


「まずは魔物とは何か。そこから説明しよう」


 魔物はわずかな唸り声のような、悲しみに嗚咽するような声を出している。


「魔物とは悪魔が作り出した化け物だ。だが何もないところから急にこんなものが生まれるわけじゃない。魔物の主な素材、それは人間だ」


 非情な現実。

 悪魔は人を化け物にする。


「悪魔は魂から力を抜き取るが、残された体は捨てられたり、あるいは魔物として再利用される。魔物にされた人はもはや人ではない。悪魔の命令に従い、人を襲うただの化け物になってしまう」


 訓練教官はただ淡々と魔物について説明する。

 悪魔の所業のせいなのか、あるいは先ほどまで体を動かしていた汗が冷えてきたのか、体が冷たくなって気分もなんだか沈んでいくような話だった。

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